アルカディウス学園(中編)
「さーて、乗り込んでみたはいいものの……」
何処から回ればいいだろうか?
何せ相当広い学校だからな、情報収集の為にはなるべく人の集まってる所に行きたいものだが……
「……適当にぶらついてみるしかねぇか」
結局そういう結論に達する。
まあいくら広いとは言っても、学校なんてどこの世界も同じようなものだろうしな。
例え授業中だろうが何だろうが知ったことか。
俺はこの学校の生徒じゃねぇんだ。この学校のルールに従う理由がどこにある?
そう思って、再び歩き出そうとした時だった。
何処からか男女が言い争うような声が聞こえてきた。
「何だぁ?」
何だか面倒くさそうな匂いがプンプンしやがる。だが、とりあえず人がいることに変わりはねぇ。
俺は声のした方角へと行ってみることにした。
声を頼りに足を進めていくと中庭の様な所に出た。
そこから物陰に隠れてしばし様子を伺う。
どうやら騒ぎの中心にいるのは男が一人と女が一人。二人とも歳は俺と同じくらいで白いブレザーを着用している。たぶんここの生徒なのだろう。
胸元にはそれぞれ、剣を象ったようなマークが描かれていた。この学校の校章だろうか?
なかなかシャレた制服だな……なんて思っていると、騒ぎを聞きつけた他の生徒達が続々と集まり、二人の周りに人だかりが出来始めていた。
「何度も言ってるでしょ?私はあなたと付き合うつもりなんかないから」
「ど、どうしてだ!言っただろ!?僕と付き合えば君の望むものを何だって買ってやるし、一生楽な暮らしだって……」
「興味ないから」
なるほど、どうやらトラブルの原因は痴情の縺れの様だ。
聞こえてくる会話から察するに、どうやら男の方はかなりのボンボンらしい。
しかし中身は典型的な金持ちのバカ息子。金さえあれば何でも手に入ると思ってやがる。
サラサラの金髪で顔立ちも整っているが、肝心の中身がこれじゃあどんな女も靡かないだろう。
で、一方の女の方はと言うと、こいつもこいつで目立つ容姿をしていた。
女にしては割と高めの身長に、ポニーテールに結われた燃えるような赤毛。
気の強さを物語るつり上がった眉に、意志の強そうな瞳。
そして何よりこいつ、胸が相当デカい。
ギャラリーの男どもの多くは、この事態よりもこいつの胸の方に注目しているみたいだった。
「そうか……だったら力ずくでも僕のものにしてやる!」
と、何やらここで男の方が不穏な台詞を吐きやがった。
それにより、この場に一気に緊迫したムードが漂う。
「ど、どうしよう……こんな時、生徒会の人たちがいてくれたら……」
「無理だよ、生徒会のメンバーはみんなあの任務で出払ってるだろ?」
ギャラリーの方からそんな声が聞こえてくる。そして、それと同時に金髪の男は女に今まさに襲いかかろうとしていた。
だから俺は
「お邪魔しま~す」
二人の間に割り込んでいた。