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ある日、空から剣が降ってきた。  作者: まいなす
第一章 “白き山裾城”決戦
95/198

94話 ここに壁があります、あとはわかるね?



 白い壁の手前には深い堀が掘られていた。

 その堀に架けられた唯一の石橋を渡って、白い壁の中央部にあるアーチ状の城門に入る。


 これで白い壁の内側へ入ったらしい。

 一気に空気が重々しいものに変わる。 


 城門を抜けると、すぐに通路は折れ曲がり、次は急な石畳の坂道が続いていた。

 そこは忙しなく動く人間たちの往来で溢れている。


 その間を縫うようにかき分け、右へ左へ迷路のような白い通路を馬で駆け上っていく。

 途中、何度も壁の中をすり抜け、どんどんと内側へ、そしてどんどん高層へと侵入していく。


 やがて、家のような白い建造物が片側だけだったのが、両側になり、武器やら防具やら食べ物やらがごった返す商店街らしき場所も通り過ぎ、厳かな空気の漂う教会らしき場所や、汗の匂いがこびりついた兵舎らしき場所を通過して、ようやく最上層の壁に埋まった城の前にたどり着いたのは小一時間を過ぎたあたりだった。


 そこは小さな広場みたくなっているようで、簡単な緑地が整備されていた。

 さらに城の反対側は白い壁の内側からの全景が見渡せて、それはもう、そこに蠢く人間たちを除けば、綺麗だという形容詞以外、僕の口から姿を見せないくらいである。 


 本日、二度目のため息を吐いて馬を下りる。


 すると、アルデバランは勝手に緑地の方へ歩いていく。

 んで、土足で踏み荒らした挙句、もしゃもしゃと花壇の花を食べ始めたではないか。


 ギャーナニヤッテンネン。


「さあ、こちらです」


 アルデバランの方を指さして固まっていた僕。

 しかし、そんなことはどうでもいいと言うかのようにここまで案内してくれたオッサン兵が扉の中へ誘う。


 口をへの字にして扉をくぐる。


 高い天井。

 そして奥行きの長いだだっ広い空間。

 しかし隅々まで彫刻類の精緻な、ずっと見てても飽きない意匠が凝らされていた。


 その中ではお値段が結構お高そうな鎧をつけた仏頂面の男たちが怒鳴り合っている。


 これが騎士というやつなのだろうか。

 他の兵たちとは少し違った空気を醸して、確かに力量を測ってみると戦力6くらいはありそうだ。

 ちなみにこの国の普通の正規兵は戦力2であるから、騎士たちがよく訓練している兵士であることはわかる。

 そんな彼らは、あーだこーだ言い合って、どうやって城を防衛するのか熱い論戦を交わしているようだ。


 そのどれもが籠城するところは一致していた。

 救援が見込めないのにそうするということは、本当に時間稼ぎだけに重きを置くつもりなのだろうか。


「あちらの奥の扉へ」


 オッサン兵が指差したのは入り口とは反対側。

 城の奥の方。

 これまた大きな背の高い両開き扉が口を開けていた。

 扉の向こう側は少しばかり薄暗くなって、そこからそよ風が流れてこちらへ抜けてくるのがわかった。


 ユーリとヒルデの気配はその奥からしてくる。


 案内役のオッサン兵に礼を言って城の中を進む。


 すると怒鳴り合っていた鎧騎士たちは急に静まりかえるので困る。

 彼らの目は、僕の挙動の一つ一つを注視しているようだった。


 ただ歩いているだけなんだけどな。


 試しに剣の柄に手を当ててみる。


 すると鎧騎士たちは一斉に鎧をがちゃがちゃと音を立てて臨戦態勢をとる。

 あからさまに剣を半分抜いている者もいた。


 なるほど。

 確かに信用はされてないようだ。


「この馬鹿ものっ! 冗談でもそういう類のものはよせっ!」


 それは久しぶりのヒルデの声。

 彼女は奥の黒い扉の前でいつの間にか腕を組んで仁王立ちしてこっちを半眼にて睨んでいる。


 僕は剣の柄から手を離して両手を上げて敵意のないことを示しながら鎧騎士たちの間を抜けて彼女のところへ歩いていく。 


「やあ、ひさしぶり」


「この馬鹿。何をしていた。けがは……なさそうだな」


 ほっと溜息をついているヒルデである。

 …………ん?


「あれ? 心配してくれたの?」


 僕の問いに一瞬だけ固まったヒルデはわなわなと肩を震わせた。

 自分の身体の前で両手を必死に交差させている。


「ち、違うわ馬鹿ものっ! わ、私はただ、きさまが逃げたのではないかと心配していただけだっ!」


「ほら、やっぱり心配してくれてたんだ」


「……っ! こ、これは言葉のあやでっ!」


 頬が赤くなる美少女戦士ヒルデシアちゃんを口元を緩めながら眺めていると、彼女はしばらくしてぷいと顔を逸らすものだから余計に面白くなる。


「……く、ころせ」


「だから、殺さないって。僕にとって有用なうちは、ね」


「ふん、どうだか」


「それにまだえっちなお願いきいてもらってないし」


「ば、ばかなのかっ!? きさまはばかかっ!? ばかだったなっ! く、……この、このばかっ!」


 ヒルデはそう吐き捨てると踵を返して黒扉の内側、薄暗い方へ入っていく。

 ついてこいということだろう。


 僕は肩をすくめて黒くて大きな扉をくぐった。


騎騎騎騎騎騎騎騎騎。oO(なんなんだえっちなお願いって)

騎騎騎騎騎騎騎騎騎。oO(ヒルデシア様もやはり女)

騎騎騎騎騎騎騎騎騎。oO(かわいい。結婚したい)


軍議の結果:イズレール死ね


その頃一方、我らの魔剣ラダマンテュスは――

†。oO(『………………すやぁ~』)

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