82話 続・魔剣の根源、そして女神の考察
「そこまでは儂の魔剣も、残りの四人が持っとった魔剣らも、示し合わせとるように口を割らなんだ。いや、ともすれば女神のやることに“なぜ”という疑問が浮かばないように造られとるのかもしれんが。まあ、とにもかくにも、それで女神がなぜこの世界に不穏分子をのさばらせようと考えたのかという答えは迷宮入りとなったわけじゃ。しかし、の。儂はそれを聞いたとき、妙にしっくりきおったわ。なぜなら、異世界から連れてこられた儂らはどちらかというと、英雄気質ではなく、その残虐性、凶暴性を取り柄とする者ばかりであったからな。どうせお前もその口であろう? その目を見ればわかる。儂ら六人は眼球だけ見ればまるで鏡じゃわいッ! がははッ!」
「はあ、まあ。確かに。誰かを助けてキャーステキーと言われるよりは、誰かをぶち殺してギャーオタスケーと言われる方が納得いきますよねえ。でも、ますますワケがわからない。なぜ僕たちはここに来たのか。まさか女神は自分の世界が壊されていくのを見て快楽を感じる変態だったとか」
「がははははッ! それは面白いッ! その思考は愉快じゃ小童ッ! 真実がわからぬゆえに、その解もまたしかりじゃろう。しかし儂の持論は違う。小童。儂の持論。聞くか? ほれ、ほれ聞くか?」
「ええ、ぜひとも」
そんなに聞かせたそうにされたら聞くしか選択肢コマンドがないしね。
で、傾聴姿勢に入る僕を愉しそうに見ていたハンニバル将軍は舌を大きく出すからイラッ。
「小童よ、他者にすぐ解を求めるのはいかんなあッ! ゆえに儂の超理にかなっとる持論は聞かせんぞッ! がははッ!」
ははっ、おっちゃめえ。
額に這い上がってきた青筋を奥歯で噛みころした。
一方、ハンニバル将軍はというと髭をゆっくり撫でている。
僕がその髭をむしり取ってやりたいなんて考えてること。
露にも思ってなさそうだ。
「しかし、儂の気分に免じてヒントはやろう」
え? くれるの?
ハンニバル将軍ってわりと良い人だったんだなあ。
「そうじゃな。儂の故郷、糞カルタゴは強大な糞ローマをぶち滅ぼすために、恐ろしく仲が悪い者同士であったものたちが見事に団結した……む、しもうた。この例えは答えになっとったか?」
「ええ、十分に。ありがとうございます」
なるほどね。
将軍の言っていることは一理ある。
というか、彼の言を借りるなら、チョー理にかなっていた。
つまり、女神は強大な外敵を造ることで、みんなに仲良くなってほしかったのかもしれないっていう。
なんて、なんて適当な考え方なんだ。
殴っちゃいたい。
いや、真相はわからないので僕の“女神変態説”も捨てきれないけど。




