67話 猛る馬は魔剣を踏み、踏まれた魔剣はMPが回復した
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「本当に一人で残るのか?」
女子供と正規兵の集団が移動を開始し始めている最中。
大剣を背負って戦闘準備抜群なヒルデが僕に言った。
「いや、だって。一人の方が身軽だしね」
『足手まといはいりませんからねぇ~っ!』
かくいう僕も剣を泉から引き揚げて腰に差していた。
「だが……」
「ヒルデ。私たちがいてもイズィの足を引っ張るだけよ。だから先を急ぎましょう」
ヒルデが引く馬の上からユーリが応える。
彼女の前にはアンミがちょこんと座ってこっちをじっと見ていた。
「そうそう。いま来てる追手は全部ぶち殺しておくから。あとこれから来るかもしれない追手も撃ち漏らさずちゃんと全部ぶち殺しながら、きみたちの後をのんびりと追いかけるし。心配しないで」
「私はそういう心配をしているのではない」
「……あれ? もしかして僕の心配をしてくれてる?」
「違うばかッ! 断じて違うぞばかものめッ!」
『……なんていうかこの人ぉ~。わかりやすぅ~いですねぇ~』
そんなに叫ばなくてもいいのに。
耳を塞いでいた僕を見て、かあっと赤くなったヒルデは黙りこくって足元に視線を落とした。
こんな僕のような人間にまで心配してくれるなんて、美少女戦士ヒルデシアちゃんはなんて優しい人間なんだろう。
感謝しよ。
「ありがとう」
「ち、違う。だから、違うのだ。これは、……く、見るな。見るなぁ」
僕の視線から逃れるようにヒルデは馬上のユーリの腰のあたりに抱き着く。
そんなヒルデの頭にゆっくりと伸ばした小さな手がポンと置かれた。
無表情のアンミだった。
「でも本当にいいのね?」
少し笑っていたユーリが、こちらを見つめて念を押すように言う。
「ああ、いいよ。こっちでやりたいこともあるし。それに馬も借りたしね」
僕の隣で呑気に草を食べていた馬の首筋を撫でる。
毛並みの良い、赤茶の馬だ。
この馬はユーリが乗っていたという馬だった。
名をアルデバランというらしい。
「持久力のある程度ある馬だったらなんでもいいのに、本当にユーリの馬を貸してもらってもいいの?」
「その子はマルクト王家に代々使える戦闘馬なの。どんなに重い装備を付けても疲れを知らず。その足で千里を駆け、その足は万里を超える。間違いなくここで一番持久力のある馬よ?」
「いや、わかるよ。雰囲気がこの馬だけ他のとは違うしね」
ぶひひん。
僕の台詞に誇らしげに鼻を鳴らすアルデバラン。
『“当たり前だろJK。雑種フゼイとオレ様を一緒にするなボケ”だってぇ~。この馬、畜生の分際でくっそ生意気ですねぇ~』
馬の台詞をわかってるだけで、お前も十分畜生なんだけどな。
というか、畜生以下の分際なんだけどな。
するとアルデバランは僕の腰から勝手に剣を口で噛んで引き抜くと、ポイと地面に落として蹄で踏みつけたのである。
『あひぃ~んっ!』
いいぞ。
もっとやれ、ア号。
僕が許す。
『そ、そんなぁ~っ!』
足蹴にされる剣を無視してユーリに視線を戻す。
ア。oO(『オラオラァッ、ここがええんかおおんッ!?』)
†。oO(『あふんっ! あっ、もうちょっと右で。あ、あ~っ、そっ、そこぉ~っ!』)




