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ある日、空から剣が降ってきた。  作者: まいなす
第一章 “白き山裾城”決戦
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66話 BKHSR


 首を傾げていると、口に手を当てて笑うのを我慢しているふうなユーリが『あらやだ奥さん』といったふうに手を振る。


「あらあら。思い当たるふしがないのイズィ? そんなことはないはずよ? だってイズィってば昨日、ヒルデの裸を見てるのに他の女のことを言ってたでしょう? だからヒルデったら捻くれちゃってもがもが」


「ひ、姫さまぁッ!」


 ユーリの口を彼女の背後から塞いだヒルデと目があう。

 彼女の眼尻には朝露が溜まっている。


「ああ、なるほど」


「なるほどじゃないぞきさまぁッ!」


「ごめんね」


「謝るなぁっ! 私はべつにッ! ……べつにっ」


 次第にトーンの落ちていく、彼女のべつに。

 最終的には膝を抱えて僕とユーリから少し離れた場に座り、顔を隠すヒルデがそこにいた。


 その頭にぽんと手を置くアンミが彼女にトドメを刺す。


「ところでこれはどうかしら。あなたの背丈に合う服をとっておいたのよ。いつまでも上半身が包帯だけというのは不便でしょう?」


 何事もなかったかのように、手に提げていた包みを開けて正規兵が着てるような軽装鎧を見せてくるユーリ。

 話を合わせた僕もだけれど、彼女も見かけによらず対外な嗜虐主義者のようだ。


「いいね、それ。ありがとう」


 さっそくその場でちゃっちゃと着替えてみる。


「貸して」


 途中、後ろで留める金具に手間取ってると、ユーリが手伝ってくれた。

 その後も、そのままのノリでユーリが着つけてくれる。

 ふと気づく。

 ユーリも水浴びをしたのか少し髪の毛が湿っていた。

 その黒髪が揺れるたびに疲労の匂いに混じって女の子特有の甘い香りがした。


「はい、これでいいわ」


 ぽんと胸を叩かれて微笑みかけられる。

 自分が疲労困憊でぶっ倒れる寸前だということを気づかせないくらいに清々しい。


「ありがとう」


 軽鎧のサイズはぴったりだ。

 その場で軽く跳んで確かめる。

 動くのにも邪魔にならない。


「似合ってるわよ?」


「どうも。きみもその服がよく似合ってるよ」


「でしょう? だからヒルデをからかうついでにイズィに洗ってもらったの。こんな状況でも、少しはおしゃれしたくなるものなのよ」


「女の子だねえ」


「あら? なんだと思ってたの?」


 少し頬を膨らませて不満げなユーリに笑う。


「フツーの女の子が、よくもまあ、それだけ頑張れるねえ」


 僕の皮肉に気づいたのか、ユーリは目をふせる。

 そして悲しみと諦めを五分五分に含んだ視線を投げてよこした。


「仕方ないじゃない。だってこうなっちゃったんだから」


 そう言って、一筋だけ流れた涙を指で拭った彼女は背を向ける。

 しばらくそうやって無言で肩を揺らす。

 それから、ふいに誰かを安心させるために造る精一杯の笑みを顔面に張り付けて振り返る。


「これでいい?」


「ああ、いつもの笑顔だ」


 肩をすくめると、ユーリは人差し指を立てて口元にあてる。


「みんなには内緒」


「僕は何も見てないけどね」


「……あはは、それでこそ、私の剣よ」


 わざわざ背伸びして頭を撫でられる。

 こんなことをされたのはいつぶりだろうか。

 恥ずかしくなってきたので両手で頭をガードしてユーリの精神攻撃を防御する。

 

「あはは。残念だけれど、そろそろ朝ごはんを作ってみんなに配らなくちゃ、ね」


 しばらく僕の手の上から容赦なく頭を撫でまわしていたユーリは満足そうに頷いて離れた。

 そんな彼女にため息をついて僕は手を挙げて提案してみる。


「いや、その前に、すぐ全員を起こして出発の準備をしたほうがいい」


「……どうかしたの? …………まさか」


「そのまさかだ」


 遠いところで複数の魔族の追手の気配がついさっき僕の触覚を震わせたのだった。



[ぴんこの底]

†。oO(『むっ、私の触覚を震わせる感覚は…………さてはどこかでフラグが、立ちましたねぇ~? あ~、やだやだっ! これだからリア充めBKHばくはしろっ、なう……っと』)

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