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ある日、空から剣が降ってきた。  作者: まいなす
第一章 “白き山裾城”決戦
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65話 そして騎士はいめちぇんしますた



「おはよう」


 見張りの正規兵のおっさんから剣を借りて久しぶりに素振り千回やって一番目の朝日を拝んでいたら背後から声をかけられる。

 振り返ると、昨晩僕が洗って乾かしておいた服に身を包んだユーリが立っていた。

 その横には彼女の服を握ってこっちをじっと見ているアンミ。

 そして彼女たちの後ろにはむすっとしているヒルデが控えている。

 もちろん、ヒルデは昨日とは違って比較的肌色の見えるところが多い、いつもの鎧を着ていた。


「おはよう」


「よく眠れた?」


「まあね」


「うそ。寝てないくせに」


「……まあね」


 あれから魔族の追撃がないからといって、これからないとは限らない。

 少なくとも気配察知の感覚が平常運転できるようになるまでは眠らないことにしたのだ。

 そしたらいつの間にか朝になってしまったというわけである。

 おかげでナマクラしていた身体も十分に温められた。


 けれども僕が寝ていないということを知っているユーリもまた、眠れていないということになる。

 彼女の目の下には微かにクマができており、疲労の度合いが知れていた。


「あんまり身体を動かすと傷が開いてしまうわよ?」


「うん。その点を含めてどのくらい稼働すれば傷口に影響がでちゃうのか試してみてたんだ」


「そう? でもあなたにはまだやってもらう事がたくさんあるわ。ほどほどに、ね?」


「……ほどほどにしたつもりなんだけどな」


「あははっ、そんなに汗だくで言う台詞じゃないわよ? しかも蒸発した汗でなんか空気が揺らいで陽炎みたいなものができてるし。はい、これ」


 タオルみたいな布きれを渡される。


「こりゃあ、わざわざありがとう」


 遠慮なくいただいて裸だった上半身の汗をぬぐい取る。

 その時、ユーリの後ろでぷいと顔を横に向けていたヒルデとふと目があった。

 瞬間、ばっと後ろを向かれて背中を見せられる。


「ところでヒルデ、その髪はどうしたのさ」


 ついでだから、さっきから気になっていたことを聞いてみる。

 昨日見た時までは彼女の金髪は長かったのであるが、今は肩口のあたりでバッサリと切られていたのだ。

 長かった髪の毛の面影が残っているのはもう、もみあげくらいしかない。


「……きさまには、関係ない」


「まあ、そうだけどさ」


 後ろを向いたまま答える美少女戦士ヒルデシアちゃん。

 しばらく沈黙していると、彼女は踵を返してバシリと僕の方へ人差し指を指摘した。


「こ、これはっ、前々から髪が長くて戦の邪魔だと思っていただけだからなっ。勘違いはするなっ」


「勘違いって言われても。そういう類の理由以外は何も思い浮かばないけれど」


 確かに彼女の髪は戦いには不向きだと思っていた。

 自分の死角と当たり判定を増やしているだけだしね。


 でも思い切ったことやるなあ。



[ぴんこの底]

†。oO(『あ、マスターの素振る音が聞こえる……っていうことは私以外の剣を使ってるってことですよねぇ~。まあ、別に何とも思いませんけどねぇ~…………ぐすん』)

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