43話 ぼくたちわたしたちの、はなぶちゅぁ
『あふんあふんぅ~! マ、マスターぁ、そこはいやんっ!』
「あったあった。これだこれだ」
ずぶりと取り出したるは一振りの手斧。
柄の部分に白い縄が付いている。
んで、その縄の端を持って、っと。
「そいや」
手斧を力一杯にサブマリンスローで投擲した。
「構えぇーっ! 引けぇーっ! はなブチュァッ」
ぱぁんっ。
そんな華麗なる音を立てて、手斧は号令をかけていた傭兵の下顎から上の部分を吹き飛ばしたのだった。
合図を失って振り向いた弓傭兵たちが見たのは、びくんびくんしながら後ろに吹っ飛ばされてる号令係傭兵なわけで。
「う、うわああああはぶッ! ……へ? あ? あひゃあぁああッ……!」
弓傭兵たちの悲鳴。
腰を抜かしてる者もいる。
心底を察するがなにぶんこちらも効率というものを重視しなければならない。
多人数に対して戦う場合の第一の敵は疲労だ。
できるだけ疲労を溜めないように、手を抜けるところは抜いてぶち殺す。
そしてぶち殺せるときには確実にぶち殺しておく。
僕の師匠の教えである。
だから手に巻いて持っていた白い縄を力一杯に引っ張った。
すると自分を鼓舞するような声を上げてこっちに矢を放とうとする傭兵たちのうちの一人。
その首を、僕の手に持ってる縄によって引っ張られて戻ってきた手斧が掻っ攫う。
「あははぼくおそらとんでりゅうぅううぅッ」
大空へはばたいた生首が何かを叫んでいた。
よかったね。にこり。
手に戻ってきた手斧をキャッチした僕は、間髪入れずに次の狙いに向かって再び放り投げる。
『やっぱりアリアドネの糸を編んで作った縄は伸縮がいいですねぇ~』
「二十メートルくらいまでの中近距離のレンジ攻撃にこれ、わりと使えるなあ。ところでお前、ますますいらない子になったことに気づいてる?」
『そ、そんなぁ~ん』
「けどまあ、僕ってあんまり野球とか得意じゃなかったからなあ。どちらかというと他人のタマタマを蹴れるサッカー派だったんだよなあ。弓とは勝手も違うし。だから静態に当てられこそすれ、動いてるものとなると命中率がちょっと下がっちゃうのがタマにキズだなあ。もっと精進しないと」
『あのマスター、どうして急に心情を吐露し始めてるんですかぁ~?』
「お前に向上心とは何たるかを教えようと思って。ほれ、感謝はどうした。泣いて土下座して教えを乞えよ」
『魔剣に向上心を説くなんてマスターも物好きですねぇ~。私たちって鍛え上げられたときに性格とかほぼ固定されちゃってますからぁ、何を言ってもむだむだですよぉ~?』
「それはつまり、調教のし甲斐があるというわけだ」
『……マ、マスターぁ? 顔が犬歯むき出しでマジ怖いですよぉ~? あの、えっと、ぉーぃ……』
でも森の中で素材調達して武器を造っといてよかった。
武器が多いほど攻撃の幅も広げられるし。
一つの武器で連続して命を奪える回数には限りがあるしね。
そんなこんなで同様にして距離をとって弓を引く傭兵たちを刈っていく。
手投げ斧をブンブンと投げ縄みたく回してから投げてみたり、試行錯誤しながら何度も連投することしばらく。
なんとなく手斧の扱いによどみが無くなってきたあたり。
とうとう弓矢での攻撃が止む。
弓を引くには立ち止まらなければならない。
けれど、それはこっちにとっては良い的だ。
絶えず移動していなければ斧が飛んできてチーンということがようやくわかった傭兵たちである。
ならば接近戦だぁうらぁーっ、と一斉に初心に還って殺到してきたのだ。
戦略も戦術もあったもんじゃない。
けれど、指揮するような頭のまわる奴らは優先して潰しておいたので、残ったオツムはお察しであるからそれも致し方ないのかもしれない。
じゃあ、とっとと第二ラウンド始めましょうか。
有用性が証明された縄付き手投げ斧はあとでメンテするとして。
それを剣の四次元ポケットへと大事に片づけてから、ギレアムさんの剣を地面から引き抜いて下段に構えて彼らを迎え撃つ。
†。oO(『調教だなんてぇ! いったいどんなご褒美……げふんげふん。どんな仕打ちが待っているのでしょうかねぇ~っ! るんるんっ』)




