40話 資本主義社会においてのお金というものの価値
重大なこと、それは。
うがあああああああああっ。
周囲の傭兵たちが野獣のように咆哮しながら一斉に飛びかかってくる。
「しまったなあ」
ばしゅ。
『どうしたんですかぁ~? マスターぁ? 汚血でも口に入りましたぁ~?』
ぐさ。
「いや、ほらあっち。さっきの血飛沫でユーリの服が汚れちゃってるんだよ。クリーニング代とか請求されるかもしれない。お前、金持ってる?」
ぷつん。
『いやいやぁ、マスターぁ、私がお財布に見えますぅ~? マスターの目は節穴ですかぁ~? 私は泣く子も黙る魔剣ですよマ・ケ・ン~。そんな私がお金なんてものを持ち歩いてるわけないじゃないですかぁ~! やっだなぁ~!』
あ、こいつ持ってるな。
あとでこっそり取り上げとくか。
ぞぶり。
「だよなあ。デクノボウに聞いた僕が悪かったよ」
ごす。
『そうそう、デクノボウである私に聞いたマスターがわる……って、デクノボウっ!? ヒノキノボウですらなくっ!? いくらマスターでも許しませんよぉ~っ! ぷんすこ!』
びちゃ。
「おいおい、他人の話はよく聞けよ。デクノボウだぞ。デクノボウ。ほれ、どうした。喜べよ」
ぐしゃ。
『はあ? マスターってば私が貶されて喜ぶような被虐主義者だと思ってるんで…………ハっ! やったぁ~! ゴミからデクノボウになってるぅ~っ! わぁ~いっ!』
ぐちゅり。
「ほれ、感謝はどうした」
がつん。
『ありがとうございまぁ~すっ!』
どかり。
「はい。どういたしまして」
ばしゅ。
本日の犠牲者十七人目となる厳つい傭兵の首を飛ばして、いったんここで小休止。
逆手に持ちかえていたギレアムさんの剣を回して握りなおす。
周囲には急所を斬られたり潰されたりして事切れている傭兵たちが散らばっていた。
身体中が返り血でベトベトしているが、仕方ない。
血袋を斬ったら胎内から出てきた汚物で汚れてしまう。
それは殺すことが汚らわしい行為であるという裏付けでもある。
世の中は上手くできてるなあ。
うーん。
それにしても傭兵たちは、未だに結構ばらけてるのだ。
こう一列に並んでくれたらスパパーンと楽にいけるのに。
現実はそう甘くない。
ユーリたちの方を見てみると、正規兵たちが彼女のまわりを囲んで防御の陣を組んでいた。
良い判断だ。
下手に動かれると、傭兵と間違えて僕がうっかりぶち殺しちゃうしね。
†。oO(『……実は持ってるなんてバレたらマスターに取られますからねぇ~。ふひぃ~、あぶなかったぁ~』)




