3話 戻れる条件
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「ふうん。ってことはなんだ。僕はこの世界の魔王を倒さないと元の世界に戻れないわけ?」
『簡単に言うとそういうことになりますねえ』
木と木をこすり合わせてたき火をおこす。
そんな原始人みたいなことをして達成感に浸っていた僕は、暇になったので剣との会話を試みていた。
剣の話に耳を傾けてみるとどうやら僕が今いるところはアークウィンドという異世界らしくって百年前に封印されたはずの魔王が近頃復活して近隣諸国に侵攻を始めるというとんだご迷惑をかけているらしくってその魔王軍の強さに次々と国が征服されちゃってるんだけどこの調子でいったらこの世界が魔王に乗っ取られちゃうのでそれを見かねたこの世界の女神さまがチート使って世界を護るために七振りの魔剣造ってその魔剣たちが異世界から連れてきた救世主のうちの一人っていうのが僕らしい。
自分でも何言ってるのかさっぱりだ。
でもまあとりあえず、世界危ない魔王倒せっていうのだけはわかったけど。
「魔王ってどんな感じなの?」
『めっちゃ強いです』
「そのめっちゃ強いのを倒さなきゃ元の世界に戻れないのか」
『はい、そうなんですよぉ~』
「もう戻らなくてもいいや」
『ええ~っ! なんでですかぁ~!』
「だって魔王さん、めっちゃ強いんだろ?」
『まあ、めっちゃ強いですね』
「やっぱもうこの世界に骨埋めるわ」
『マスターやる気だしてくださいよぉ~。やればできる子でしょぉ~』
「そんな母親みたいなことお前に言われたくないよ」
『そんなぁ~。マスターの意気地なしっ! ばかっ! おたんこなすっ!』
「なあ知ってるか。お前みたいな細身の剣は横からの斥力には滅法弱いんだぜ?」
『きゃー、マスター超いけいけぇ~! まじリスペクトっすぅ~! ……って、マスターさっきから何を作ってるんですかぁ~?』
木の枝を火であぶりながらしならせていた僕は、その枝に食料調達中に拾ってきた動物の毛みたいなものを編んで作った弦を張る。
それから同じように火であぶってまっすぐにした細い枝。
その先に石を砕いて作った矢じりを取り付け、反対側には落ちていた鳥類の羽をシダ類の細いツルで巻きつける。
これは何を隠そう簡易の弓矢である。
「こんなもんかな」
試しに弓を構えて弦を引いて矢を射った。
遠くの木に矢の突き刺さる音が響く。
『おお~っ! ぱちぱちぱち~!』
「どうも。どうも」
『弓術もいけるんですねぇ~、マスター』
「一応、うちの師匠は雑食だったからなあ……ってそんなことはどうでもいいんだ。よろこべ。これで鶏肉が食えるぞ」
『わーい』
「お前に言ったんじゃないよ」
僕の胃袋にいったの。