2話 きのこうめえ
*
結論からいうと熊どころではなかった。
熊よりももっとデカい生物。
いや、生物と言っていいのかはちょっと怪しい。
なんせ、樹齢千年は越えてるだろう巨木が突然身震いして動き出したかと思うと襲ってきたのだから。
こっちの武器は杖代わりに見つけた木の棒。
あと、食えそうな匂いがしたキノコ類や木の実がいくつか。
一方、巨木のほうはハンマーみたいな大きな瘤を両手らしき形状をした枝に付けている。
あれで殴られたら痛そうどころかぺしゃんこになってしまう。
戦力差は明白だ。
もうスタコラするしかないね。
*
『ほぉら言わんこっちゃない。マスターってば私の言うこと聞かないからぁ~』
小一時間、巨木と楽しい追いかけっこして撒いた後に元いた場所まで戻ってくると、剣がそんな台詞とともに出迎える。
ちょっとムカついたので無視して背を向けて座る。
調達してきた食料を地面の上に広げた。
『ちなみにそれ、毒あるの、混じってますけどぉ~?』
「知ってるよ。これだろ」
見るからに毒々しい紫色をしたキノコを手に持ってみせる。
『それ、めっちゃ美味しいやつですよぉ~?』
「じゃあ、こっちは」
普通に食えそうなシイタケみたいなキノコを手にもつ。
『あ、それ』
「食えるやつだろ?」
『いいえ? 食べたらスライムみたいに溶けちゃうやつです』
「…………」
シイタケをポイ捨てしてから、茂みの影に落ちていた剣を拾い上げて持ってくる。
「これは?」
『食べられますね』
「じゃあ、これ」
『死にます』
「これな」
『痺れます』
「ほい、次」
『とっても不味いことに目をつむれば食べられないこともないですねぇ~』
そんな感じで食い物の選別をちゃっちゃと済ませる。
「いや、助かった助かった。ありがとう」
『いやいや、それほどでもぉ~』
「じゃあ、な」
剣をあっちへ放り投げたら『ヒドイ!』と叫んだのだった。
だってもう用済みなんだもの。