27話 貰ってくれる人がいたらリツイートしてくださいねぇ~
「わたしは、えと、ベタニアにある小さな農場へ奉公しておりました」
「農場? 何を作っているところかしら?」
「そりゃもう、いろいろと」
「具体的に聞きたいわ」
「米とか麦とか、豆とか、芋とかです」
「ふうん」
『……あ、ちなみにベタニアでは米は育ちませんよぉ~?』
それ早く言いなさいよ。
「さっきの訂正します。ベタニアでは米は育ちませんよね? あはは、なんで言っちゃたんだろうなあ」
「ふうん」
「………………」
すごくニコニコされながらこちらを見つめる中略ちゃん。
なんかゲームでも楽しんでいる子供みたいだ。
「イズィはそこで何をしていたの? やっぱり農作業?」
「あ、まあ、力仕事全般というか。新しい畑を開拓したり、あとは用心棒みたいなことも少しだけ」
「用心棒? ああ、だから剣を持っているのねえ。それにしても変わった剣だと思うんだけど、ねえヒルデ? あなたはあんな形の剣、見たことある?」
中略ちゃんの近くで大剣を抱えて座りながら僕にガンつけてた美少女戦士ヒルデちゃんが首を横に振る。
「見たこともない剣です」
『……いや~ん、そんなにジロジロ見られると私照れちゃいますよぉ~。でゅふ、でゅふふふ。まっ、見たことないのは当たり前ですからねぇ~。なんせぇ、私はぁ、MAッ・KENッなんですからぁ! 誰にも負・けん、なんつってぇ~! どやぁ』
気持ち悪いことを言うMAッ・KENッをめっちゃ折りたくなる。
けれども衆目の前ではそんなことはできない。
ストレス貯まるなあ。
忘れてはいけないので心のノートにMA・KEN・DEATH+1198と書き加えた。
「ねえ、その剣をよければだけれど、ちょっと私に見せてくれるかしら? あ、だめだったらいいのよ? これは私の興味の問題だから」
モテモテだな、お前。
「ええ、いいですよ。こんなゴ……剣でよければどうぞ」
『あっ、マスター今、私のことをゴミって言おうとしたでしょぉ~っ! バレバレですからねぇ~! ぷんすこ!』
僕がゴクツブシに手をかけたとき、美少女戦士ヒルデちゃんが殺気立つ。
なのでゆっくりした動作で剣を持ち、座ってる自分の前の床に置いた。
どうぞ、というジェスチャーを美少女戦士ヒルデちゃんに行う。
それをじっと見ていた警戒心丸出しの美少女戦士ヒルデちゃんがやってきて剣を持ち上げると、彼女が中略ちゃんのもとへ運んで行った。
剣を受け取った中略ちゃんは、柄や鍔に施された地味な装飾や、黒い鞘の光沢を指でなぞる。
『あひゃぁ~んっ! ままま、マスターぁっ! この子の手つき、ちょ~えろい助けてマスタあひ~ぃんんっ!』
なんかおぞましかったので指で耳をふさいだ。
耳が聞こえなくても読唇術で何とかできる。
そう鷹をくくっていたんだけれど、現実は甘くはない。
『あひ~んっ、えひゃひゃひゃっ、あ、ちょっ、そ、そこはぁっ、ちがうのぉっ! いや、いやいやいや、そこはらめぇぇぇぇぇええええっ!』
耳をふさいでも、このドグザレの声から逃れられなかったのだ。
僕は静かにため息をついて、耳をふさいでいた指を離して神を恨んだ。
「ねえ、イズィ。聞いてるの?」
「エエーキーテマスヨー」
「……えっと、刃をみたいのだけれど、抜いてみてもいいかしら?」
「エエーイイデスヨー」
「……そ、そう? ありがとう」
一気にやる気の失せた僕の壊滅的な演技に首をかしげながら、中略ちゃんは剣の柄と鞘を握って抜こうとする。
でも、抜けない。
中略ちゃんは剣を見て首を傾げた後、もう一度、柄の部分を引っ張った。
「……抜けないわ。私では力足らずなのかしら。ヒルデ? ちょっと抜いてみてくれない?」
「わかりました」
今度は美少女戦士ヒルデちゃんが引っ張った。
引っ張る。
そして、引っ張る。
でも抜けない。
意固地になって力を込めるせいで上気してきた美少女戦士ヒルデちゃんの顔。
同じく、彼女のぜえぜえとした荒い息。
そして、額から流れ落ちる滝のような汗。
でも抜けない。
そんな彼女を見て小さく笑っていたのは中略ちゃんだけではなかった。
「なっ、ななっ、何を笑っているんだきさまぁッ!」
おそらく美少女戦士ヒルデちゃんのあの顔の赤さは羞恥の赤さだ。
†。oO(『……しくしくしく、もう私、お嫁さんに行けないよぅ、ふぇぇん……誰か貰ってくれる人募集中なう、っと』)




