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ある日、空から剣が降ってきた。  作者: まいなす
第一章 “白き山裾城”決戦
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22話 姫の祈りと魔剣果汁5%


「アークウィンドの始祖サイオンの娘、大地の母にして聖なる神霊アシェラの名において、どうか我らに貴女の元でひとときの休息をとることをお許しください。そして願わくばその御手で以て我らの子らをお守りください。安らかな眠りきたるその刻まで」


 礼拝所の女神像の前で膝をついて手を組み、祈りを捧げていた中略ちゃん。

 続けて僕の知らない言葉でブツブツと小さくつぶやく。


「なんだ、あれ」


『ああ~、あれはエルフ語ですねぇ~。同じ祈りを繰り返してますよぉ~。でも人間族のくせしてあの子ってばエルフ語できちゃうなんてぇ~、なんて生意気な子ッ! お剣さんは許しませんよぉ~っ! ぷんすこっ!』


「ふうん。この世界の言葉は一つじゃないのか」


『まあ、種族ごとに使ってる言葉が違いますからねぇ~。あとは地域とかで方言入ったりしますしぃ~。でも一番数が多い種族は魔族を除外すると人間族なので人間の使う言葉ができてたら良いと思いますよぉ?』


「それじゃ駄目だ。いつ僕がお前をうっかり折るとも限らないんだし、言葉は全部覚えておいた方がいいだろ。他にどんな言語があるわけ?」


『うっかりで私を折らないでくださいマスターぁっ! 折るならしっかりとっ! 意思を持てぇっ! それができないなら避妊どうひゃらぁっ!? あ、いえ、何でもありませんよぉ~? だからそうやって私を持つ手に力こめないで下さいよぉ~。そうですねぇ~。人間語、エルフ語の他にはドワーフ語、フェアリー語、エント語、あと今はめっきり数の減った魔法使い族が使っていたといわれるルーン語なんかがありますねぇ』


「あとでお前から人間語以外を搾り出すか」


『……あのぅ~、マスター絞り出すってそれ比喩ですよねぇ? あははっ、よもや私を物理的に捻って魔剣汁を絞り出す、な~んて考えてませんよねぇ~? あはっ、いやまっさか~……でもあ、あれ~ぇ? マスターその、凶悪な顔は……い、いったいなんなんですかぁ~?』


「………………」


『……マ、マスター? 返事は? ぉーぃ』


 剣をガン無視して、祈りを捧げる中略ちゃんを礼拝所の入り口で、美少女戦士ヒルデちゃんに監視されながら眺める。


 こうやって見ていると、彼女の後ろ姿は絶対不可侵。

 普段のやけにフレンドリーな気配とは違って、パンピー風情が決して侵してはならない聖域のような雰囲気を醸している。


「さあ、みなの者。ここはもう明日の朝までは“安全”よ。今晩はゆっくり休んで、ね? エライムまでの英気を養いましょう」


 中略ちゃんは祈りを終えたのか立ち上がり、くるりとこちらの方へ踵を返して礼拝所の入り口まで来ると、外で待機していた女子供たちにそう言って優しく笑う。

 彼女の、何の保証もないその言葉は、しかし妙な安息感を与える。

 疲労と恐怖に押しつぶされそうな表情だった女子供たちの瞳に小さな光を灯した。


 赤ん坊の性別は一見してわからないし、アンミよりも小さな子供たちでは男の子も女の子もいたけれど、それ以外はすべて女で構成された集団が礼拝所にぞろぞろ入っていく。

 彼女らは皆、中略ちゃんの前を通り過ぎる時に深くお辞儀した。


 おそらく心底、敬愛されているのだろう。



†。oO(『…………魔剣汁だなんて我ながらえろいこと言ったなぁ……は、恥ずかし~っ///』)

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