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ある日、空から剣が降ってきた。  作者: まいなす
第一章 “白き山裾城”決戦
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17話 何かの気配



 砦の一室。

 三つの太陽のうち二つが沈んで、残る一つも傾きかけた頃。

 サイズの合いそうな服を見つけたので女の子に着替えさせようとしたついでに彼女の裸体のあちこちを触って体調を確認していた。


『きゃ~、マスターのロリコンっ! えっちっ! すっけべ~っ!』

「許可は一応とってあるだろ」


 まあ、何も言わずに黙ったまま自分から全裸になってぼーっと立つという動作を女の子の承諾ととっていいのか微妙だったけど。

 でも触診中もずっと虚空を見つめて大人しくしているのでたぶん大丈夫だろう。

 ということにしておく。


『っていうかどーして何の用事もないのに私を井戸から引き上げてくれたんですかぁ~? 都合のいい時だけ私を頼ろうとするマスターらしくないじゃないですかぁ~。……あっ、もしかして寂しくなっちゃったとかですかぁ~? でゅふふふ、マスターも可愛いとこあるじゃないですかぁ~、このこのうぅ』


「はっはっは」


 壁に立てかけていた剣が勝手にほざきやがる。


「さてへし折」

『さーせんっっしたぁッ!』


 女の子の身体だけど肉も正常に付き始めていた。

 栄養失調なりかけであったようだけどずいぶんよくなっているようだ。

 内緒で食事に滋養のつくものを色々混ぜておいたのが功を奏しているみたい。


 ついでに身体も拭いてあげよう。

 水の入ったバケツからタオルを絞ってふきふき。


「さっきのどうしてって質問だけどね。僕もホントいうとお前を井戸から解放したくなんてなかったんだぜ? でも、もうすぐ話してたやつらがここに来るだろ? 場合によっちゃ逃げるってこともありえるし。そう考えると、さ。お前を置いてけぼりにすることなんて俺、絶対できないもん」 


『マッ、マスタ~っ! そんなさらりと私がマスターにとって必要不可欠な存在みたいなタラシ台詞言わないでくださいよぉ~! 照れちゃうじゃないですかぁ~、えへへ~』


「ごみを井戸に捨てて立ち去るなんてしのびないからなあ」 


『そうですよねぇ~! さすがにマスターもごみを井戸に捨てて立ち去るような真似はしま……ごみっ!?』


「あはは、冗談だよ。お前がいないとこの世界のこと説明してくれるやツアーガイドがいなくなって僕が困るだろ? いやぁ、お前は右も左もわからない僕にとってはすごく都合のいいガイドさんだよ。食べ物を教えてくれたり、言葉を教えてくれたり、この辺の地形や気候や生活様式なんかも教えてくれたりしてさ。武器はお前の不思議空間にいくつかストックできて手がすくしね。さらにはウザくなったら放り投げればいいとくりゃあ。なんて付き合いがいのある荷物持ち兼ガイドさんなんだ。これからもよろしくな」


『あの……マスター? ひょっとしてぇ、もしかしてなんですけどぉ……そのぉ、私が魔剣に属するものだってこと、忘れてませんかぁ~? 斬るのがオシゴトなんですよぉ~? なのにマスターってばこっちに来て未だに私で何も斬ってないじゃないですかぁ~! 魔剣冥利に全然つきてないんですけどぉ~、ぷんすこっ!』


「いや、一回だけ斬ったじゃん。僕のエコバックに入ってるあのヒョウタンを」


『いやぁぁぁぁぁあっ! 思い出させないでくださいよぉっ! せっかく忘れてたのにぃぃぃぃぃいっ!』


 剣は『樹精のタマタマだなんてぇ~、ぅあうぁうあぅ~』とか言って独りでウェットになっている。

 そんな剣を無視して女の子の身体も拭き終わり、彼女に洗って干していた清潔な服を着せ終える。


 僕は立ち上がって伸びをして剣に向かって両手を軽く広げた。

 

「ほら、どうよ」

『しくしく……ふぇ? どうよって何なんですか、もお~』

「こっちの世界の普通の人間に見えるかって話」


 何を隠そうこの僕も砦の中で見つけておいた布服に着替えていたのである。

 そして自分が着ていたこの世界のものでない衣服はというと、さっき焼却しておいた。


 剣は『う~ん』と唸る。 


『えーっとぉ、私には自分史上最低の鬼にしか見えないんですけどぉ~、まあ客観的に見れば、顔に火傷跡のある人相の悪い平民、くらいには見えますかねぇ~』


「人相の悪いは余計だろ」


『じゃあ目つきがすごく悪い、に訂正しますよぉ~』


「よし」


『……え、いいんだ』


「目つきが悪いのはお父さん似だからね」


 んじゃ、団体さんのお出迎えでもしましょうかね。


†。oO(『…………、ッ!? いくら待っても井戸に放り投げられないっ!?』)

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