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ある日、空から剣が降ってきた。  作者: まいなす
第一章 “白き山裾城”決戦
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16話 慣れは口ほどに物を言わない


 次の日のこと。

 朝ごはん食べた後に女の子と花を適当に摘んできて適当に墓にそなえてって昼ごはん食べて適当に花を摘んできて適当に墓にそなえてってをやること九時間ほど。


 もうすぐ夕飯の食材でも調達に行こうかなあと思ってたところ。


 湖に沿った平原を南西からこちらへ向かってやってくる集団の気配がした。

 数は五百くらいである。

 この感じだと夕方辺りにはここに着きそうだ。


 どうしたもんかな。

 わりと困ったぞ。

 墓に花をそなえて手を合わせる作業を女の子にまかせて、僕は少し相談することにしたのだ。


 そんなわけで件の井戸の前にやってきた僕は剣を一日半ぶりに引き上げた。


「よっ、ひさしぶり。元気してたか?」


『…………つーん』


 返事がなかったので。


『って、っちょっちょちょっちょっと待った待ってくださいよぉ~! しゃべりますしゃべりますよぉ~! 』


 もう一回、井戸の中に落とそうとしたらようやく話し始める剣。

 ほんと面倒なやつだなお前は。


 やれやれと首を振ったあとに井戸の中へ剣を放り込んで、再び引き上げてから僕は事情を説明することにした。


『って待て~いっ! なぜ今、井戸に放り投げる工程を挟んだんですくぁ!』


「そりゃあお前、僕の気分の問題さ」


『いい加減にせ~よわれ、おおんっ?!』


「あ?」


『って、違います違います~っ! 今のは空耳ですよぉ、マスターぁ! だから井戸はもうやめてくださいぃ~っ!』


「そうか。井戸がそんなに居心地がいいか。よくよく見ればお前の形も井戸との相性がぴったりのようにみえる」


『あはは、やっだなぁ~。マスターいつからそんなに耄碌しちゃったんですぷらっしゅッッッ! ……ひ、ひどぃぶくぶく、ぶく』


 剣を井戸に再びどぼんした僕は、しばらくして引き上げてやった。


「あのさ。井戸からお前を引き上げる動作も飽きてきたんだけど」


『……もういいもんっ。ぷんすこっ! マスターとはもーぜったいお話しませんっ! 魔剣の誇りを舐めんなって話ですよぉっ! ぷんすこっ!』


「それはそうと井戸の中」


『ひゅーっ! わーい待ちに待ったマスターとお話ができる時間だぁ~いっ! 何かなぁ~! どんな話かなぁ~! マスターいっぱいお話してくださ~いっ! オラわくわくすっぞ~うっ!』


 仕方ないなあ。

 そんなに期待されちゃったら嫌でも剣と話さなければならないじゃないか。


 仕方ないなあ。


「あのさ。北から来てるんだよね」


『えっと何がですかぁ~?』


「さあ。数は五百くらい。集団行動もある程度とれてる感じ」


『う~ん、集団で活動するのは人間かエルフかドワーフか魔族くらいなものですからねぇ~。でもエルフやドワーフがこの辺にいるはずもないですし~。人間か魔族かのどっちかですねぇ~』


「一ついい? エルフとかドワーフってこっちの世界、つまり僕がいた世界でのあんな感じのイメージでオーケーなの?」


『そうですねぇ~。たぶん大丈夫じゃないですかぁ~?』


「じゃあ魔族って言うのは? いまいち広すぎてビジュアルとかイメージできないんだけど」


『あっ、それって二つ目の質問じゃないですかぁ~っ! 一つでいいっていったのはどこの誰マスターなんでしょうかねぇ~! ぷぷぷぅ~』


「お前はそんなに井」


『魔族っていうのはですねぇ~っ! どういうビジュアルかって言われたら答えられないんですよねぇ~。なんせ人型からスライム型まで色んな形の魔族がいますからねぇ~』


「使えないなあ。もっと有益な情報をよこしなさいよ」


『むっ、魔族について知っておかなきゃならないのは、えっと、そうですねぇ~。魔族の頂点に魔王がいるということとぉ~。あっ、例えばここに一匹の魔族Aがいますね~。そのAが自分よりも下位存在である魔族BとCを生み出しますよぉ~。ここで例えばマスターがBを倒したとしますねぇ~。その場合はAもCもまだぴんぴんしてます。でも例えばマスターがAを倒したとしますよぉ~。その場合はAが生み出したAの下位魔族であるBとCが、なんともれなく消えちゃいまぁ~す』


「ふうん。つまり、上を倒せば下は勝手に消える。だから魔王一匹を倒せば魔族はみんな消えるってことか」


『そうですねぇ~。だから魔王とか上位魔族は滅多に前線に出てきませんねぇ~』


「あれ? でも魔王とかめっちゃ強いんじゃなかったっけ? 強いのに前に出て戦わないわけ?」


『そうなんですよぉ~。さっきも言ったように魔王の死は即魔族の全滅でリスクがありますからねぇ~。ほら、万が一ってこともあるじゃないですかぁ~。だったら下位魔族を量産して物量で物理的に世界征服征服ぅっていう感じなんですよねぇ~。今の魔族の方針はぁ~。だから魔王と最上位魔族の四天王たちは冥都ラプラスにこもってますしぃ~。その周りを大ボスクラスが固めててですねぇ~。戦場に出てくるのはせいぜい中ボスくらいでしょうかぁ~。ビビりですよねぇ~。そのせいで逆に魔族とその他の種族との間の戦争が長引いちゃってるってところでしょうかぁ~。ま、魔王とか四天王とかがひょっこり出てこられても困るんですけどねぇ~』


「へえ、いろいろと難しいんだなあ」


『マスターってばホント他人事ですよねぇ~。それでどうするんですかぁ~?』


「ま、いいや。向こうが人間だろうが魔族だろうが、とにかく遭ってから決めるか」


『雑っ! マスターってば、ほんと雑っ! あーあ、この先マスターの魔剣である私はどうなっちゃうんでしょうかぁ、とほほぉ~』


 そんな感じで落ち込む剣を井戸の中に投げ入れてから、夕飯の食材を調達するために弓と矢を、そして新しく鍛えた手投げ用の斧を装備した。 


[井戸の中]

†。oO(『……だいぶ慣れてきちゃったなぁ~。慣れって怖いなぁ~』)

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