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ある日、空から剣が降ってきた。  作者: まいなす
第一章 “白き山裾城”決戦
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168話 えっちすけっちわんたっち、お風呂に入って~?

 

「きみも薄々は感じてたんだろ。ユーリは狼の皮を被った羊だ。彼女は僕やきみはもちろん、他の誰よりも弱い人間だ」


「…………そうなのかも、しれないな」


 ヒルデは静かに、ユーリが小さいころは自分よりも泣き虫だったことを暴露した。

 けれど、いつの日よりか誰かの前で彼女は泣かなくなった、と。 

 そしてあの、誰もがすがりたくなるような聖人みたいな人間になったのだと、ヒルデは言った。


「きさまの前で泣いている姫さまを見たとき、私はそのことを思い出したのだ。昨日今日出会った人間に姫さまの信頼を攫われるなんて、私は今まで何をしてきたのだろうな」


「信頼? それは違うな。彼女が僕の前で泣いて、きみらの前で泣かないのは、きみらがすがりつくものがないと駄目になるからだろ。駄目になってほしくないから、彼女は虚構を被るんだ。きみらはとても愛されてるんだよ。その点、僕は自分以外の人間なんてぶち殺せるかぶち殺せないかでしか測ってない屑だからねえ。ゲロは掃き溜めに吐く。そこをユーリはよく理解しているよ」


「…………ばか。それはきさまの勝手な解釈だろう。少なくとも姫さまはきさまに……」


 ヒルデが首を横に振る気配がした。


「これだけは聞いておきたい。そんな、そんな姫さまにすがる私たちを、私を、きさまは咎めているのではないか?」


「いいや? それは彼女から望んでることだろう? そんなの勝手にしてくれって話だ。それに、きみらがすがりつくのはある意味で正解だぜ。なんせユーリくらい強い人間はそうそういないからねえ」


 上空の風の流れを見ていた僕は適当に応える。

 しかしヒルデはむっとしたように食いついてきた。


「言ってることが矛盾しているじゃないか」


「なんで? 弱いからこそ、強いんだ。そういう人種だよあれは。必死で他人から見て強そうに思えるゴツイ皮を被る。だからこそ、彼女は強い。人間は中身なんてどうでもいいんだ。外面が問題なんだ。何であるのかが問題じゃない。それが何をするのかが重要なんだ。例え優しい人間でも人間ぶち殺せば悪魔だし。例え心の中で人類滅べと願ってる人間だって、誰かを救えばヒーローだろ? 他人のことを捻くれてるっていうけど、彼女のほうがよほど捻じれてる。まあ、それをわかったうえで、ユーリは自分への皮肉のつもりで言ってるんだろうけどね。やっぱ笑いのセンスあるよ」


「きさまは、……姫さまのことをよくわかっているのだな。私なんかよりも、ずっと」


「当たり前だ。ああいう人間にあうのはユーリで二人目だからねえ」


「……それは、きさまの師匠だった女の、話か?」


「そうだよ。よくわかったね」


「その女の話をしたとき、きさまは、笑うからだ。私たちには向けないような優しい顔に、なるからだ」


「まじでか」


 頬を軽く両手でマッサージしてからヒルデの方を見た。

 彼女は立ち上がり、両腕を組んでむすっとしている。

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