158話
最上層を眺めると数匹のウォードラグーンが群れていた。
大将首でも攫いにいったのか。
しかしユーリの前にはそれなりの盾がある。
時折、ウォードラグーンがおかしな軌道を描く。
彼女が放つ不可視の風の攻撃を回避しているからだろう。
だめだ。
ヒルデの攻撃でさえ避けられてるし。
っていうか彼女はちゃんと魔力の配分を考えているのだろうか。
あんなに風の攻撃を乱発していては心配だ。
僕も加勢した方がいいんかな。
まがりなりにも僕は今現在、指揮者である。
そんな僕が持ち場を離れて戦線を完全に崩壊させちゃうことと、彼女たちの命とを天秤にかけて迷っていたら、どうやら僕は油断していたらしい。
その隙をついて、直上から敵機が来襲してきた。
さすがは中ボス。
でも、慌てない。
慌ててはいけない。
僕は足元に転がった剣を蹴り上げて掴み取る。
そしてその黒い鞘からクレイモアを取り出して迎撃態勢をとった。
その時である。
急降下してきたウォードラグーンが金切り声をあげた。
ふざけたことに、その音の波は指向性を以て僕に直撃。
鼓膜が破れた。
内耳が破壊され、三半規管もだめになる。
あらら。
こうなると動けるようになるまで、あと一秒はかかるなあ。
だというのに、すでにウォードラグーンの足にくっ付いたゴツイ鍵爪が上を向く僕の目と鼻の先にあるものだから困る。
これは恐らく、特攻だ。
地面にそのまま着弾する気だ。
自らを爆弾にして僕をぶち殺そうとしている。
そんなウォードラグーンと目が合う。
果たして愉しそうにキラキラさせていた。
この戦闘狂め。
剣を抜くか。
でもそれじゃあ、勝ちの目は無くなる。
今ここで抜いてしまえば、敵の大将をぶち殺せる確率が零になる。
五十万回負けてようやく引き分けになり始めていたのに、それが水の泡になる。
さて困った。
心の中で頭を抱えて困っていると、突如として高速滑空してきた暴風が真横から乱入する。
僕へとダイブしていたウォードラグーンはその乱入してきた暴風に足蹴にされた。
そして、そのまま合体して真横へ吹き飛んでいくから驚きである。
どおん。
そんな着弾音を立てて何かが地面に堕ちる。
動けるようになった僕はその音源の方を見た。
そこにはジタバタするウォードラグーンを足に敷き。
そのウォードラグーンの首へ鋭い牙を食いこませてそのまま引き千切り。
そのウォードラグーンが消える黒い靄をかき消すように吼える。
翼を広げ、深紅の鱗を波立たせ、鋭い牙が並ぶ大口を開けて咆哮し、大気を響かせるその立ち姿は、万物の王者の如く。
うわー、ドーラ―ゴーンーだー。
初めて出会った時と同様に僕は叫んだ。
ア。oO(『うおぉーっ、アニキマジかっけぇー超リスペクトっす! 安全な場所で待機しておけっていわれてなかったらマジいっしょに戦いたかったっすよマジで! え? ドラゴン? うひょー、まじっすか超すっげぇーっす!』)
ナレーション:「その頃ッ! 一方ッ! 戦馬アルデバランは影ながら自身の主を応援していた! しかしその両の目は恐怖で固く閉じていたのだった! テテーン!」




