14話 とある魔剣の放置プレイ
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眠ってなかったせいで久方ぶりに目が覚めるという動作にチョー感動。
でも固い石造りの床で寝たせいでちょっと身体が痛いのでさげぽよぎみに起床。
「あれ?」
ゆっくりと上体を起こすと、女の子と剣がいないことに気づく。
寝ぼけ眼をこすってからぽんと手を叩いてガテン。
「あ、そうだそうだ。剣は井の中の剣として修行に出たんだった」
ん? じゃあ、女の子は?
伸びをしてから辺りを見回すと、昨日の晩の残り物である鳥がらスープおかゆが減っていることに気づく。
女の子用の器にはそれをつい今しがた食べたらしい痕跡が残されていた。
頭をかいていると、不思議な音が聞こえてくるじゃないか。
擬音語にすると、ずるずるずる。
厨房を出て、その音のする方へ歩いてってみる。
するとどうだ。
女の子が女の人もとい彼女のママンの死体を引きずって砦から出ていくではないか。
なにをするのだろうか。
僕、気になっちゃう。
だからストーキングしちゃう。
しかしである。
「………………」
柱や建物の影をほぼ瞬間移動してったはずなんだけれど、女の子にあえなく見つかってガン見されてしまった。
こやつやりおるわ。
女の子の将来に期待を見出しながら話しかける。
「へいお嬢ちゃん。何をするつもりなんだい?」
「………………」
ゆっくり平原のほうを指さし、その後に僕のほうを指さし、さらに自分の母親の遺骸と地面を指さした女の子は再び彼女の母親の死骸を引きずり始めるのである。
ははあん。
自分のママンは自分で埋めたい。
そういうことだろう。ならば何も言うまい。
それに、早起きの労働はいいことだ。
僕も砦の中に残された遺骸をえっさほいさと運び始める。
そうして、昼過ぎ。
女の子が母親の遺骸を木の杭や剣や槍の墓標がずらりと並ぶ平原に引きずり出せた時には、僕は原形をとどめていない死体のために共同墓地の大穴を大地に開け始めたところであった。
僕は女の子にスコップとクワを渡す。
それは昼前に、砦の中にあった鍛冶場で同じく砦の武器庫に転がっていた鉄の剣を溶かして打ち直した鉄器と、木を組み合わせて造ったお手製のスコップとくわでで、女の子用に小さめに造っておいたものである。
女の子はそれらの道具を受け取ると、穴掘り作業に入った。
さらに三時のおやつ時になる。
僕が共同墓地を作り終えて、女の子の母親以外のすべての死体を埋め終わったことを確認したあたりで、女の子がどこらへんまで掘れたのか確認しに行った。
するとまだ穴の深さは女の子の腰くらいだった。
穴の中から無言でじっと見上げてくる女の子に首を横に振る。
「それじゃだめだよ。すぐに獣に掘り返されちゃうしね」
女の子は無言でスコップを地面に突き刺した。
[井戸の中]
†。oO(『……忘れられてる気がしますねぇ~……ぐすん』)




