13話 かくて魔剣は眠る
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『ぷんすこっ!』
井戸から引き上げた剣が何やら妙な擬音語をだしてうるさい。
その隣で静かにしている竜騎士のおっさんから預かったクレイモアを見習ってもらいたいものである。
って、そんなことよりも鶏がらスープおかゆうめえww。
砦の中の厨房にはあらかたの調理器具が散乱していた。
あと冷蔵室的な部屋の奥に散らばったお米的な白い粒粒の穀物をハケーン。
それを拾い集め、あとは僕が取り置きしておいた鶏肉や食べられる雑草やキノコで作った鶏がらスープおかゆである。
この世界に来てから初めてまともな食事と言っても過言じゃない。
すなわち、うまくないわけがない。
『ぷんすこすこっ!』
「……なんだようるさいなあ。今僕は文字通り至福を味わってるとこなんだからちょっと黙ってなさい」
『むきーっ! マスターもあんな臭くて暗くてじめじめしたとこに放り投げられたら私の気持ちがわかりますよっ!』
「そんなとこに放り投げられてないからお前の気持ちなんてわかんないわけで」
『じゃあマスターもあの井戸の中に入ってくださいよっ! そしたら私の気持ちがわかりますぅ!』
「ああ、そう。じゃあ、明日にでもお前を投げ入れてみることにするよ」
『そうそう、明日にでも私が……って、なんでっ!?』
「え? 今から行く? 仕方ないなあ」
『え? ちょっ、マスターってばうそで……あ~れ~~~ぇキラリーンっ』
厨房の窓からやり投げの要領で投擲すると、剣はご丁寧にもドップラー効果+星になるSEとともに夜空に消えたのだった。
この角度とこの初速。これなら無事に剣はあの井戸にジャストミートである。
遠くの方で微かにポチャンという音が耳をくすぐる。
「ふう、これで平穏が訪れたぞ」
うるさいのを排除して清々した僕は、鶏がらスープおかゆのおかわりを大鍋からよそう。
すると服が引っ張られた。
見ると、そこには女の子が空っぽのお皿を両手に持っているではないか。
おかわり、ということだろうか。
でもなあ。
そんな急にたくさん食べると身体に悪いんだけどなあ。
現に、女の子は一杯目のおかゆを何度も嘔吐しては食べて嘔吐しては食べてを口腔内で繰り返していたように思う。
それでもがむしゃらに食べていたのは、何かをするためにエネルギーが必要になったのかもしれない。
それはまあ、生きる分には良いことなんだけれど、身体には少し残酷ではある。
「今日はもう寝て、明日また食えばいいよ」
そう僕が提案すると、女の子はゆっくりと器を置いて横になり、死んだように寝息を立て始めた。
[井戸の中]
†。oO(『…………すやぁ』)




