霜降
掲載日:2012/10/23
「そろそろ、冬用布団出す?」
高校2年の井野嶽幌が、双子の姉の桜の部屋に顔を出して、聞いてみる。
「そうだね、そろそろいいかも。寒くなってきたしね」
「霜降だからかな」
幌は、ドアを後ろ手でパタンと閉めてから、それにもたれかかる。
ドアがすこしゆがんだ。
「漢字で書けばおいしそう……」
桜が、何かを想像しながら、よだれを垂らしている。
「おいおい、今日の夕ご飯は、さんまの塩焼きだからな。肉は出ないぞ」
「えー…」
残念そうにしている桜に、幌が言う。
「そもそも、霜降というのは、夜露が凍って霜になるような、寒くなる時期のことを言うんだ。ちなみにいえば、今日から立冬までの間に吹く、強い北風を、木枯らしと一般的に言うんだ」
「へー…」
肉のことに集中しているようで、夢想気味な桜に、幌が一言言う。
「明日な。明日は牛肉の予定だから。ただし、霜降りは買えんから、普通のバラ肉だからな」
冷蔵庫を思い浮かべながら、幌が桜に言った。
とたんに桜は喜んでいた。
それを見て、幌はふうと細く息を吐いて、部屋から出た。




