第32話 苦渋の選択
皆さん、本当にすいません
執筆が進まなくて、ここ二ヶ月間投稿できずにいました。
これもこれで作者の私としては満足のいかないものですが、完成はしたので一応更新しておきます。
これから先、話が思い浮かばなくて、更新が遅れることになるかと思いますが、できれば最後までお付き合い下さい。
よろしくお願いします。
条件。その言葉に少し戸惑うものがあったが、俺はその条件を呑むことにした。こいつがここにいる以上、普通に探しても見つからないのだろうということが大体はわかってしまうのだ。
「で、その条件って言うのはなんだよ」
「よくぞ訊いてくれた。その条件とは、どんな場所にいても絶対に向かうこと。それともう一つ。お前の周りにいる人間を一人選べ」
「前者はいいだろう。で、後者のはよく意味がわからねえな」
「お前の人間関係を全てリセット。つまり、その選ばれた一人はリセットしないでお前の傍にいるということだ。で、リセットされたやつはお前の記憶に関しては全て消える。家族であろうと誰であろうと、きれいさっぱり、ね・・・」
「ふざけんな!そんなことできるか!」
「・・・まあ、君のことだからそういうとは思っていたよ。けど、今の君には魔法も使えないのだろう?」
「うっ・・・。てめえか、ララをさらったのは!」
そう、今の俺は事情があって魔法を使えない身である。俺が魔法を使う場合、強力で効果が強い分、それの代償として俺の寿命が一年分縮まるというのがあるために使えない。向こうにいるときはその代償を打ち消せるだけの薬草などがあるのだが、なにせここはあっちとは違う。魔法という概念すら存在しない世界だからだ。そんな魔力すら存在しない世界で使おうといおうものならば、寿命が一年どころか、下手したら死んでしまうかもしれない。そのためにこっちに帰ってくる際に注意として言われたのが、「こっちの世界以外で貴方の魔法は使わないで下さい。使ったら大変なことになってしまいます」ということだった。
現に沖縄の一件では俺は魔法を使わずに他のやつらにそういうのは任せて、俺は剣一本で戦っていた。
ちなみに、向こうの世界に行くためには、この世界中にランダムで出現する扉からくぐる以外に方法はない。で、この前の事件はそれがたまたま沖縄に現われた、ということになる。
しかし、その扉の出現場所はこの世界に紛れてひそかに暮らしている、門番しか知らない。ラースはその数少ない門番の一人だった。
そして、俺の推測が正しければ、ラースの言葉的には、ララはこの世界ではなく、向こうの世界のどこかにいる、ということになるのだろう。
「今頃気づいたのかい?だからこうして条件を引き換えに居場所を教えてやるって言ってるんだろう?」
「だからって、ミラや他の皆の中から一人だけ選んで、それ以外のやつは犠牲にしろって言うのかよ!」
「ああそうだ。だからこその交渉だろう?」
「て、てめえ・・・」
見て分かるとおり、状況は明らかにこっちの方が不利だった。この交渉を断れば、ララの居場所が聞けずに危険に晒されたままになる。
逆に、交渉成立した場合、ラースの条件に則り、俺の人間関係は一人以外を除いて全てリセットされてしまう。けど、今の俺に誰か一人以外を見捨てるなんてことはできなかった。だが、選ばないともうララを見つけることは不可能だろう。
苦渋の選択だった。だが、誰か一人を選ぶしかなかった。そして悩んでいた。妹の理沙をとるか、それともやはりミラをとるか、はたまた娘の由紀をとるか。本当なら理紗や大輔や、悠も、みんなを選びたい。が、ここで理紗たちの中から選んだらきっと怒るだろう。あいつらはそういうやつだから。
やはり辛すぎる。誰か一人、というのがまた辛かった。俺は誰を選ぶか、苦渋の選択に迫られていたのだった。




