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俺とあいつの変わった日常  作者: 龍聖
最終章 俺とあいつの変わった日常
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第29話 壊れていく空間


 8月上旬。あと数週間で夏休みが終わる。宿題をやってないやつらは今頃から必死こいてやっているだろう。そうじゃないやつはゆっくりとくつろいでいる。

 セミの声がやまない、いよいよ夏本番のこの季節。

 俺は今、病院にいた。それも総合病院なる大きいところに。理由としてはミラが俺の家で突然倒れたため。医者が言うには慣れない環境で過ごしていて、疲れなどが溜まっているんだろう、とのこと。

 それならまだ良いとしよう。だが、もしも、倒れる前に誰かが行方不明(・・・・)になっていたら(・・・・・・・)どうだろうか。そんなことが起これば倒れたって納得がいくだろう。

 そして理紗は留学をするらしい。高校を卒業はしているが、今は大学に通っている。留学するところはフランスだそうだ。

 悠はみんなに秘密を言ったことが親父さんにばれてこの時期に退学をさせられるらしい。それだけのくだらない理由で退学をさせるのはどうかと思ったのだが、俺にはどうしようもできない。就職先はあるらしいから大丈夫だそうだ。

 にしてもどうして、こういきなりこんなに俺の周りからみんながいなくなってしまうんだろう。そして何もできない自分が悔しい。やろうと思えば今からでも行動に出れるかもしれないのだが、今はミラが倒れているからそれに移せないでいる。なんたってこんな状況を体験するのは初めてだからだ。

 妹の理沙は俺が無理矢理部活に行かせた。やはり、こんな状況で部活なんて行かないで一緒にいたいと言われたが、いきなり休んで部活の仲間に心配をかけさせるべきではないと思ったからだ。しかも理沙のところは大会を控えているため、余計に休ませるわけには行かなかった。

 そんなふうに何も出来ない自分に悔しがっているところに電話がかかってくる。電話の相手は大輔からだった。


「……はい、神門です」

「おいおい、久しぶりに電話してそのテンションはないだろ」

「お前には……関係ないだろ」

「関係あるね。俺はお前の親友であり、ライバルだ。今までだってお互いに助け合ってきたじゃんかよ」

「親友?お前ってやつは電話して早々、バカバカしいことを言うんだな」

「な!本当のことだろ!」

「どうだかね」


 何も事情を知らない大輔は相変わらずのテンションだった。それに比べて俺のテンションの低さは比べるまでも無く低かった。


「おい、どうしたんだ?やけにテンションが低いじゃんかよ」

「色々とあってな」

「何があったんだよ。俺でよけりゃ相談乗るぜ?」

「…ま、お前には話しといたほうがいいかもな」

「は?どういうことだ?」

「ミラが倒れた」

「…はぁ?ふざけてんのか、お前」

「嘘ついてどうすんだよ」

「なんで倒れたんだよ。理由があんだろ。理由なしに倒れたとかほざいたらぶっとばすぞ、お前」

「ララが行方不明(・・・・・・・)なんだよ」

「おい、どういうことだよ、それ」

「…………」


 俺は何も言うことが出来なかった。自分がもっとしっかりしていればこんなことにはならなかったのだろう。それなのに俺はただただ、ボーっとしていたのだから。

 大輔の声がさっきとは明らかに違った。動揺が半分、怒りが半分、といったところだろう。


「お前、今どこにいるんだ」

「……病院。ミラのとなりにいる」

「探しもしないでなにしてんだよ」

「…看病してる」

「こういうときにてめぇが動かないでどうすんだよ!てめぇ、ふざけてると本気でぶっとばすぞ!」

「仕方ねえだろ!理紗は留学するって言うし、悠は退学させられるらしくて、悠の親父さんが会わせてくれねえし、妹のほうは部活の大会を控えてるからって休ませないで行かせてるんだよ。確かにこんな非常事態で行かせたのは間違いだったかもしれねえよ。けど、無駄な心配して、何もしてないよりはマシだと思ったから!」

「由紀ちゃんはどうなんだ」

「一応知ってる。けど、あいつにはまだこういうことに深く関わるのはダメだと思ったから、ある程度の状況しか言ってない。これでも俺は由紀の親だからな。不可抗力で生まれたにしろ、あいつは俺の立派な娘なんだよ」

「そういえばそう、だったな……スマン、少し言い過ぎた」

「いや、お前に何も話してない俺のほうが悪い」


 理解をしてくれた大輔は電話を切ろうとした俺に最後にこう言って電話を切った。


「いいか。お前はこの関係がいつまでも続いて欲しいってのはよく分かる。俺だってきっとそう思う。けどよ、今動かないでいつ動くんだよ。今のこの関係は、お前が無意識のうちに作り上げた空間なんだよ。だったら、てめぇが、てめぇのその自分の力でこの空間を守れよ。俺なんかはもう親父の跡継ぎで今はもう大事な時期だから直接は関わることはできねえけど、こんな言葉で支えてやるぐらいのことはできんだよ。俺はお前に何一つとして勝ててないかもしれないけどな、それでも、俺はお前なんかとは違う!俺だったらなにがあろうと守ってやりたいって思ったものは命を懸けてでも守りぬく自信がある。だけど、今のお前は、ただのへタレだ。この関係がいつまでも続いて欲しいからって怯えて逃げてさ。前のお前はどこに行っちまったんだよ!前までのお前なら、思ったことがあれば即実行してただろ。なんかグダグダになっちまったからこれぐらいにしとくけど。最後にひとつ!理紗さんも、理沙ちゃんも、悠ちゃんも、ミラちゃんも、みんなを守れるのはお前しかいないんだ。いつまでも立ち止まってんじゃねえよ、バカヤロウ」


 俺は今日、大事なことを大輔に思い出させてもらった。今までの俺はただただ、びびって逃げているチキンやろうだった。

 この数日間のことを今からみんなにお話しよう。この1週間の間になにが起こったかを。




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