第15話 扉探しの試練#4
扉探しの試練が始まってから三日目の朝になった。今日を含めてあと三日も残ってる。時間は問題ない…と思う。今日も普通にやれば一日で今日の分は終わるはずだ。
で、今日は那覇の北を探す予定。西と東にはなかったから残るは北か南のどっちかのどこか。虱潰しで探してるから見落としがない限りは絶対に見つかる。今日こそは見つかって欲しい。これ以上は疲れを貯めたくないし。
みんなも準備が終わったらしい。そろそろ出発だ。なんていうか俺の勘だと今日のうちに扉が見つかる気がするんだ。けど、肝心なのはモンスターが出てくるからそう簡単に見つからないことだ。スムーズにも行かないしさ。みんな昨日よりは上達してるんだ。大丈夫、大丈夫。
そしていつものように俺が先頭で出発する。出発してそうそうモンスターも出てきたけれどそこは俺が剣を一振りして倒す。
みんな忘れてるかもしれないけど、俺の職業は勇者です。なので、そこらへんにいる奴なら一振りで倒せるくらいの実力はある。勇者だから当たり前なのかもしれないけど。
探してから数時間がたった。今日はみんな口を開かずに扉を探している。みんなのやる気も上がってきてる証拠なんだろうな。
けど、そんな沈黙を一人のバカな男がぶち壊してきた
「あのさぁ、もっと楽しくやっていこうぜ?昨日みたいにさ。な?」
「そこでなんで俺に振るんだよ」
「お前が勇者でリーダー的存在だから」
はぁ…そんな期待された目で見られても困るんだよな。でも、こいつが沈黙を破ってくれたおかげかな。みんなの表情とかが明るくなってきてだんだんと口も開いてきた。昨日みたいに戻ってくれてよかったと少し安心したりする。
「神門~。私って回復役だから暇なんだけど」
「仕方ないさ。でも、一番楽だと俺は思うんだけどな」
「それはそうだけどさぁ…」
ララは顔をムスッとさせている。つまんないといったような顔だ。けど、そんなララを可愛いと思ってしまった。だって可愛いんだから仕方ないじゃないっスか。つーか、俺の周りには可愛い人しかいないんだけど。ちょっと嬉しかったりするけどね。悠も一応は女子なわけだし。
俺は理紗も悠もミラもララも可愛いと思う。ちょっと欲張りすぎたか?でも、妹は可愛いとは思うけど言いはしないよ。だって変な誤解を作りたくないからな。
「ねぇ徹。チューして?」
こいつはいきなりなんなんだ。いつものことだけどさ。けど流石にキスは無理だな。ここは断るとしよう。
「嫌だ。なんでここでなんだよ。…恥ずかしいったらありやしない」
「いいじゃん。私たちは夫婦でしょ?別にいいじゃない」
「はぁ…分かったから後でな」
とりあえずこう言っとけばミラはおとなしくなるんだ。でも、あとでチューするのは決まってしまったことなんだけどな。つまり、俺は観念してミラとキスをすることにしたんだ。でもなぁ…けど、ミラだしまぁいいか。でも、これが他の人になるとしづらいから絶対に断るけど。
…にしてもさっきから目線が痛いよ。…俺の嫌な予感レーダーがそう言っているんだ
「ねぇ徹夜」
「なに理紗?」
「なんでミラちゃんだけなの?」
「え?」
なんでミラだけなのって言われても…つーか、この言い方からして理紗もおそらくは…
「…私ともキスしてよ」
「……はぁ?」
「あっ!理紗ちゃんずるいよー。じゃあ私も神門とキスする!」
「えっ!?ちょっと待て!」
なんか雰囲気がやばくなってるぞ。これは逃げたほうがいいと俺の勘が言っている。でも、逃げたら…いや、今は俺がここから逃げるほうが先だ!
「ミラちゃんとも理紗ちゃんともキスするんでしょ?なら私も神門とする」
「いや、まだすると決まったわけじゃ――――――」
「徹君、なんの話してるの?」
「どうしたのお兄ちゃん?」
なんかもっとやばいぞ。このままじゃ俺の人生が終わってしまう。…そんなのは絶対に嫌だ!よし、ここは真面目な話、逃げよう。じゃないと俺がミラに殺される。
「あ、理沙ちゃんと悠君。今ね、神門とキスしようって話してたんだよ」
「え!?みんなずるいよ。私もお兄ちゃんとする!」
「ちょ!僕も徹君とする!」
よし、今のうちに逃げよう。みんなが俺とキスするって話に夢中になってる間に…という俺の考えは甘かった
「どこいくの徹?」
「えっ!?いやぁ…ちょっとね…」
「逃げちゃダメだよ神門!」
「お前らはくるなぁ~!」
あの後は追いかけられました。俺とキスをするとか言ってさ。君らはファーストキスをもっと大事にしろって言ってやりたいよ。とりあえずでこの騒ぎはなんとか収まった。そして俺らは扉探しを再開した。
それから一時間後のことだった。俺らがモンスターと戦ってる最中に神藤が何かを見つけたらしく俺らを呼んでいる。
「おーい!扉見つけたぞ!」
「本当か!」
「もちろんだ!」
どうやら扉が見つかったらしい。俺らはモンスターを倒して走って扉に駆け寄った。そこには初日のときの男が扉の前に立っていた。
「やあ、君たち。試練お疲れさま」
「はぁはぁ…苦労したんだぞこっちは」
「それは分かってるって。…で今からここを開くからね」
こうして俺らは三日目にしてようやく扉を見つけた。今から扉も開こうとしている。やっとミラとララをファンタジーの世界へ帰してやれる。俺はそんな気持ちでいっぱいになっていた。
けど、このまま本当に帰しちゃっていいのかな…そんな気持ちもある。複雑になった俺の気持ちは心の中でぐちゃぐちゃになってしまっていた。




