小さな誤解と大きな過ち
それから、何日かが過ぎた。
私がそいつを襲うのは、日課のようになっていて。一度襲ってダメならその日の襲撃はおしまい、というようなルールが、自然と私の中でできていた。
残った時間は、ベッドの上にいたり、彼がいない時にアパートの中をうろうろしたりするだけだった。
時には、彼の方から話しかけてくる事もあった。気が向いた時には、少しだけ会話を交わし、気が向かない時には喋る事もしない。
もう失ってしまった日々が戻ってきたような気がして、少しだけ、その生活に酔いしれていた。
久しぶりに過ごす、普通の生活も楽しかった。
でも、私は襲撃をやめることは無かった。まだ私の心の中に、姉さんに対する罪悪感が残っていたから。
いつしか、私は自分の意思とは無関係に襲撃を行うようになった。もう、別に殺したいという意識は無い。それでも、姉さんに対する罪悪感だけで動いていた。
今日も、一日一度だけの襲撃を終えて、早めの眠りについた。
――また夢を見た。
姉さんが、またどこかへ行ってしまう夢だった。
また追いつけなくて。
また姉さんが振り返った。
その表情は笑顔で。どこか嬉しそうだった。
嫌。
私が姉さんを裏切ったから? 姉さんは私に失望したの?
嫌。
姉さんが、また私の前から消えてしまうの?
そんなの――嫌だ。
私は飛び起きて、何かを呟きながら、ナイフを手に取る。
――ごめんなさい、姉さん。
部屋を出て、彼の元へと向かう。
――ごめんなさい、姉さん。
台所で夕食を作っている彼の背後に立つ。
――ごめんなさい、姉さん。
両手でしっかりと握ったナイフを引く。
――ごめんなさい、姉さん。
彼は私の気配に気づいて、背後を振り返るが、もう遅い。
避けようとする素振りも見せないまま、彼の腹部にナイフが突き刺さる。
――ごめんなさい。




