事件と襲撃
姉さんは、ただ眠っていた。――きっと、そろそろ目を覚ますだろう。姉さんが起きる前に、夕飯の支度をしておかなくちゃ。
夕食の準備を済ませて、まだ眠り続ける姉さんを、呆れたように溜息をついて起こしにかかる。それは、いつものような光景。
でも、姉さんが目を覚ますことは無かった。私は知っていた。姉さんがもう目を覚ますことはありえないことも。
なぜなら、殺される直前もずっと、姉さんの側にいたのだから。
それでも、姉さんの死を認めることができなくて。その冷たくなってゆく身体を揺すり続ける。泣きじゃくりながら、ずっと。
それは、子供の頃の。苦しくて、辛い、事実。思い出なんかより、ずっと鮮明に、脳の中に焼き付けられた、事実。
その日からずっと、復讐を夢見てきた。大好きな姉さんのために。
姉さんを殺した犯人は、もうこの世にいない。
残念ながら、犯人を殺したのは私じゃない。病死だそうだ。その噂を聞きつけた時には、とっくに、私の歯車は、狂っていた。
姉さんを殺した奴の事は調べ上げた。そいつに、一人息子がいることも。
そいつには私と同じ思いを味わわせてやる。絶対に許さない、許さない許さない許さない許さない――
気づけば、私はそこにいた。抜き身のナイフを片手にぶら下げ、そのアパートのインターホンを軽く押した。
自分から扉を開けたその男は、私を見るなり硬直した。
――怖いか? 怯えろ。姉さんと同じ気持ちを味わうがいい! そしてできるだけ苦しんで死ね!
人を殺すということは。確実にその周囲に私と同じ状況の人物を作るということ。それは分かっていたつもり。でも、今更止めることなんて、できなかった。姉さんを裏切るのが怖くて。
こんなことをしても、姉さんは帰ってこないと分かっている。それでも、私が復讐することで、姉さんを守れなかった償いになると、本気で思っていた。
だから、私は全力で、目の前の男を刺し貫いた。――つもりだった。
不運にも、攻撃はその男が持っていた一冊の本によって防がれてしまう。まさか、こんなことになるとは思いもよらなかった。
男はその本ごとナイフを私から取り上げると、手刀を私の首目掛けて振り抜いた。
「けふっ……」
やや強めの衝撃と共に意識が薄れていく。まさか、失敗するなんて……姉さん、ごめんなさ――
一次小説としては処女作になります。短編を書いたつもりだったのですが、予想外に長くなってしまったので連載です。連載ですが短めとなっております。
学生の拙い文章ですが、最後まで読んでくだされば幸いです。




