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7:〔時は流れて〕

僕が『ミコト』となった日から、しばらくは何もない平穏な日々が続いていた。


朝起きて、桃鬼と談笑して、たまに手合わせして、人間に悪戯をして、たまに一緒に寝たりして。


そんなこんなで、百年が過ぎていた。


僕はちょうど百歳。桃鬼は百五十に近い。しかし互いに見た目は変わらない。百年前は反則だろとか言っていたが、今では僕も同じ立場に立ってしまった。


妖怪というのはやはり歳を経た個体ほど強くなる傾向にあるらしく、現在真っ当に戦って桃鬼に勝てる者はこの辺りにはいない。

彼女本来の強さと相まって、能力がこれまた厄介なのだ。能力持ちはそれだけで他の奴とはスタートラインが違う。

実際、発生したばかりの能力持ちの妖怪がそこらの妖怪を蹴散らして桃鬼に襲い掛かることもあった。だがそこは流石の魅王桃鬼。彼女に傷を負わせられるのは数少ない。ほとんどが秒単位でその場から消えている。

彼女自身の妖力もかなりのものだが、『硬度を操る程度の能力』から昇華させた『掴み取る程度の能力』がこれまた厄介。これは彼女が硬度を弄ったものを距離関係なく掴み取ることができる。

雑魚妖怪などはそいつ自身の硬度を限界まで下げられ、掴まれた時点で潰されてさようなら、だ。

ある程度の抵抗力(妖力?)がある相手には使えないらしいが、恐ろしいことこの上ない。強くなったものだ。


もちろん、僕だって成長している。

今まで身体能力だけで行っていた高速撹乱移動。妖力をうまく使うことで更に早く動けるようになった。

更に爪。こちらも妖力を充満させて殺意をもって使えば、自らの硬度を上げた桃鬼にだって傷をつけることが出来るだろう。実際にやったらこちらの爪も犠牲になるだろうが。


能力に関しては、より細かい感情の操作が可能になった。

喜怒哀楽だけでなく、歓喜、混乱、恐怖、驚嘆、絶望などより具体的に調整することが出来る。

ただやはり、自分以外の者の感情を操作するには、その場その場での相手の感情を読み取らなければならない。しかもこの読み取り、読み取っているというよりは、相手の感情を『取り込んで』理解しているらしく、軽い気持ちでやると取り込んだ感情にこちらが支配されることもある。

全く面倒くさい。

更には心をしっかりと持った相手、閉ざした相手は感情が取り込めないので、そういう場合はまず相手に揺さぶりをかけて心に隙間を作ってやらないといけない。

全く以て面倒くさい。


もう一つの能力『命を感じ取る程度の能力』は、その名の通り『命』を感じ取る能力だ。

こちらは未だに使い方がよくわかっていなく、結局気配を探る時ぐらいしか使っていない。







――と、暇だったので分析をしてみたのだが、桃鬼最強じゃね?

いや、間違いなくここらでは最強なのだけれど。

現に、彼女は二十年程前からここら一帯の鬼のトップに座っている。

確か、『鬼神』とかいったかな?『灰色の風』とは大違いである。


さて、その鬼神様だが、現在僕の耳をフニャフニャしながら唸ってばかりいる。

唸りながら触るのは正直止めて欲しい。何となく耳もヘタリとしてしまう。


「どうしたの」

「おぉ、聞いてくれ」


待ってましたとばかりに僕によしかかってくる桃鬼。両手が僕の首にからまる。はずい。


「アタシの下にいる奴らのことなんだけどなぁ」

「その彼らならさっきから痛いぐらいに僕を睨みつけてきてるからくっつくの止めて」

「なぁにを今更。でな?流石に頭数が多過ぎて、アタシの目が届かなくなってきてるんだよ」

「ほぉ」

「でだなぁ、どうにかして減らすか分けるかしたいんだが……あ、そうだミコト」

「嫌だ。僕だって鬼以外の妖怪抱えてる」


桃鬼が鬼のトップなら、僕はその他連合軍のトップだ。

まぁ、大体が温厚な人畜無害な妖怪やら妖獣やら妖精なんだけれど。


「そう言わずに〜」

「甘えた声出してもダメ。下っ端にだって腕の立つ鬼いるんだからそいつらに任せればいいじゃん」

「おお」

「思いついてなかったのか」


そうかそうか、と僕の肩に顔をのせたまま頷く桃鬼。痛い痛い、角が刺さる。


「となると、そいつの力を皆に示さなくてはならないな……。ミコト、何かいい手はないかい?」

「決闘させれば?そこなら広いし、被害少ないでしょ」

「ほぅ」

「一応人間がここら一帯に近寄らないように、僕と妖精達で結界張るし」

「ほぅほぅ」

「万が一暴動が起きたなら、桃鬼が一人で抑えつければいい。そうすれば逆らう奴はいなくなると思うよ?」

「流石っ!ミコトは頭いいなぁ〜!いい子だっ!」

「わあっ」


いきなり押し倒されて頭やら耳やら尻尾を撫でられる僕。力は桃鬼の方が強いので一回捕まればなされるがままである。

あぁ洞窟の外からの鬼の視線が痛い……。

ついでに言うが、僕の懐に入っていた妖精さん、何を顔を赤くしているんだい?

かたや百歳の老猫に百五十近い鬼の頭領だよ?


何も色気づいたことはない……といいたいが、実は自分で感情を操って恥ずかしさを抑えているだけだったりもする。


あぁ、こんなところで使えてしまう能力。




便利だからいいけど。

なんか本格的に桃鬼が最強になってきた……。


い、いや!これも計算の内さ!



ここらで感謝の言葉を。


お気に入り登録をして下さった方々、恐縮です。ありがとうございます。

どうかこれからも私の駄文に付き合ってくだされば、幸いです。


感想、ポイント、どんどん下さい。

不自然なところもどんどん教えて下さい。


では。

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