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21:〔心縛〕

目を見開いたまま、僕は動くことが出来なかった。

辺りを包み込む静寂。

髪の毛が数本パラパラと舞い落ちていくのを視界の端で捉えながら、ダラリと両手をぶら下げた志妖を見る。

僕の数メートル後ろでは、ミサイルが着弾したかのように巨大な穴が開いていた。


「……できない」

「?」

「やっぱり、できない……」


僕に首を掴まれたまま、苦しげに、しかしそれとは別に辛そうに志妖が呟いていた。流れ込んでくる感情が、痛い。


「たとえ、敵だとしても、ミコトさんを殺すなんて、できない……!」

「…………!?」


僕は本当に驚いた。

殺らなければ殺られるこの絶体絶命の状況下で、志妖はそんなことを言ったのだ。

僕の手に冷たいものが落ちる。志妖は、泣いていた。

思わず歯を食いしばる。なんて甘いんだ、この娘は……。


「なら、ここで殺されても文句はないな」


ギリ、と首を掴む手に力を込める。

ビクリと志妖の身体が跳ね、けれどそこから抵抗はしなかった。


それを見て、僕は――。


「……仕方ない、奴だなぁ」


――そのまま志妖を引き寄せて、この身体に抱き留めた。

なにがなんだかわからないのか、志妖は僕の腕の中に抵抗なく収まっていた。


「えっ…………え!?」


数秒遅れて声を上げ、抵抗を始める志妖。けれど、逃がさない。更に抱く力を強めてやる。

そんな僕に、首から洩矢諏訪子をぶら下げた桃鬼が近寄ってきた。呆れたように大きく息を吐いて、僕らを見ている。


「全く……騙す方も騙す方なら、騙される方も騙される方だよ」


まさか、あの演技を信じるとはねぇ、とくつくつ笑い始める桃鬼。志妖は首をグルッと回して、痛っ、角が刺さっ……。


「ど、どういうことですか」

「まぁ、全てはそこの悪戯猫の仕業だよ。大方、本気のアンタと戦いたかったとかだろうけどさ」


ねぇ?と桃鬼は僕を見る。つられるようにして志妖も僕を見た。


「ま、まさか」

「そのまさか。僕は身体を奪われてなんかいないよ」

「…………!」


ぱくぱくと口だけが動いている志妖。珍しい、志妖にもこんな一面が。


「けど驚いた。まさか、志妖が僕のことをあんなに考えてくれてるなんて思ってなかったから、さ」

「――――――!」


だんだんと赤くなっていく志妖の顔。

しばらくしていきなり、ボスッ、と僕の身体に顔を埋めてきた志妖だが、それ自体恥ずかしい行動だと気づいてすぐに離れようとする。

けど、させない。

志妖の頭の後ろに手を回し、少し強めに抱き寄せる。


「ゴメンね。少し悪戯が過ぎたみたいだ。けどまぁ、なんだ……。その、ありがとう、ね」

「…………!!」


耳元で囁くと、志妖はぐいっと身体を寄せて僕を押し倒した。傷だらけの身体を包み込むように抱きしめる。

途端に罪悪感が込み上げてくるが、殺されていたかもしれないのはこちらも同じ。言い訳はしないけど、理解はして欲しい。


「……妬けちゃうねぇ」

「ん?」

「なんでもないよ」


背を向けた桃鬼に首を傾げ、僕は空を見上げる。







まぁ、いい気分といえば、そうなのかもしれない。


けれど、僕は考える。


『私の、名を……』


志妖がそう言った瞬間、僕はまるで何かに縛られたように動けなくなった。

まるで金縛り。実際に遭ったことはないが、多分あのような感じなのだろうと思わせるほどに、動くことが出来なかった。


能力を使ってもどうしようも出来なかった。


思い出すだけで、胸が苦しくなる。

あの言葉を、僕は知っている。


そう、あれは――。










「ミコト、さん?」

「なんでもない……なんでも、ない……」

「…………?」

エラーが起きて一度文章がぶっ飛んだ過去にも負けず書き上げた!

ハッハッハッ!

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