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17:〔神様訪ねて三千里〕

「じゃあ、行ってくるよ」

「あぁ。気をつけるんだね」

「……それでは」


僕は洞窟の前、二人の鬼に見送られて歩き出す。


いきなりだけど、僕は今日から、旅に出ます。










あの戦争が終わった後、僕達三人は、偶然生き残っていたあの洞窟にそのまま住むことにしていた。


それから数千年は平和そのもの。いつの間にか復活していた人間達をそこそこに脅かしながら、まぁ特に何の障害も無く暮らしていたのである。

ちなみに人間はどこから来たかは全くわからない。あの爆発で少なくとも辺り一面焼け野原、地平線が見れるぐらいになっていたので近くの人間が移住してきたわけではないみたいだ。勿論文明は底辺まで落ち込んでいて、最初に見かけた人間は正に原始人。驚かそうと考えていたのに、思わず黙って見送ってしまったぐらい驚いた。

吹き飛んだ森は、洞窟周辺に生き残っていた木々が少しずつ広がっていき、今では爆発のダメージは見られないほど。自然ってスゴイ。


で、そんなこんなで僕が感じたことは。


「神様っているのかな」


いきなりの発言に鬼二人は固まり、今度はなんだこの馬鹿はと言わんばかりの視線を送ってきた。桃鬼はともかく志妖にまで。傷付く。


「……でも、私聞いたことはあります。ここらの人間が、たまに話していますので」

「え、ホントに?」

「ハイ。でも、この辺りにいるわけではないみたいで……。私が聞いたのも、『なんだかって神様がいるらしい』っていう会話だけですので……」


昔より随分声を出せるようになった志妖が言う。だが人間よ、僕はその『なんだか』が知りたいんだけど。果たして人間がアバウトなのか志妖がアバウトなのか、僕には判断がつかない。


「ふ〜ん……」

「まさかアンタ、会ってみたいとか言うんじゃなかろうね」

「いや、その通りなんだけど」

「なら、行ってくればいいじゃないかい」

「え、いいの?」

「行かないのかい?」


不思議そうに首を傾げた桃鬼に、僕は少しだけ考えた。けどまあ、ここまで話が進んだのだから。


「じゃ、行こうかな」










てなわけで、旅に出ることにしたのである。

いつ帰ってくるかはわからないことを二人には言ってあるので、僕は気兼ねなく遠出出来る。

旅と聞き、桃鬼と志妖もなんとなくそわそわしていたので、もしかしたらあの二人も旅に出るかも知れない。

まぁ、あの二人なら簡単に野垂れ死ぬことなどあるまい。なんせ片は鬼神、片はあの爆発を退けた化け物である。


「むしろ、こっちが心配だよなぁ」


他人事のように呟く僕。危機感が足りないのかもしれないが気にしない。


「まずは……人里だな」


手頃な枝に跳び移り、尻尾を一振り。

最初こそ原始人だった人間も、数千年経てば文明も進歩する。

前みたいに二段飛ばしどころか十段飛ばしのような進歩の仕方ではなく、今回は緩やかな進み具合である。なんだかホッとする。


「よし、行き先が決まれば、まずは行動だ」


灰色の風なめんなよ、と寂しい独り言を最後に、僕は跳んだ。

























それから数年かけて人里を巡り歩いた。


時には猫の姿で。

時には人間の姿で。


こうして旅をしてみれば、いかに自分が狭い土地で過ごしていたかがわかる。井の中の蛙とは正にこのことだ。


「お、人里発見」


前の人里を離れて数日。

割とゆっくり移動していたのだが、もう次の人里を発見してしまった。いいけどね。今回は猫で行こうか。


「よっ」


木から飛び降りると同時に猫に変化。スタンと着地して、


「うにゃ゛!」


踏まれた。

人里に入りいきなり踏まれるとはツイてない。過去に何度かあったけど。














(ははぁ……なんだか臭うなぁ)


前足で顔を擦りながら考える。

この人里は今までの人里より幾分大きく、それでいて何か雰囲気が違う。

これはもしやと思いながら先へ進むと、



(おお!)


思わず声を出しそうになってしまった。猫が驚嘆の声を上げたら気味の悪いことこのうえない。気をつけなければ。


そこには、随分と立派な神社があったのだ。

元はと言えば神様に会いたいが為に始めたこの旅。なんだか神社を見付けただけで満足してしまいそうである。


(さてさて、ここからは人の姿で……)


一度家の影に飛び降り、人の姿へと変化。といっても、猫又の姿から耳と尻尾を無くしただけで、僕を知っている人が見れば簡単にバレるのだけれど。


「すいませんね……っとと」


お参りなのかなんなのかわからないが、神社へと向かう人の流れに身体を割り込んで、後は身を任せる。

数分もしないうちに神社に着き、僕は人混みから出た。


「しかし、近くで見ると更に立派だ。これは余程崇拝されてる神様なんだろうなぁ」

「そんな神様の敷居に入り込んだ妖怪よ。何か用か?」

「いや、ただ一目見てみたいなと思って」

「ほぉ。それはつまり消されたいと」

「いや、別にそういうわけじゃ。というか誰?」


僕は、鳥居に背中を預けて立っている女性に言った。

先程から僕に話し掛けているのは彼女だ。明らかに人間ではない。



「その会いたがっていた神だと言えば?」


まじか。

まさかとは思ったが本当に神様だった。

いや、背中にでかいしめ繩しょってる奴が人間だとか言い張っても信じないけれども。


「見ない顔だけれど、どこから来たんだ?まさかとは思うけど、私に喧嘩を売りに来たわけじゃないんだろう?」

「まさか。ただ本当に顔を見に来ただけだよ。神様ってのはどんな顔してるのかなってさ」


周りからの視線が痛い。それもそうだ。端から見れば僕は一人で社に向かって話し掛けているのだから。

気にしないけど。


「予想外に美人さんで驚いたけど」

「ハッハッハ!言うじゃないか。アンタ、名は?」

「ミコト。猫又のミコトだ」

「私は神奈子。八坂神奈子だ。中へおいで。ゆっくり話そうじゃないか」


神奈子はそう言うと背を向けて社の中へと消えていった。


原作キャラ二人目はあの方でした!


くそ……口調が桃鬼とにとりよったり……じゃなくて似たり寄ったりだ。


どうしよう?

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