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ヤサグレ聖女とエクセル騎士

ヤサグレ聖女、護衛を選ぶ

作者: 瀬田えいち
掲載日:2026/09/20

とうとうやってきました。ようやっと、エクセルの代わりの護衛さんの選定の日です。遠征とか入っちゃったのもあり、延び延びになっていました。


エクセルは渋々ながら、ちゃんと陛下に護衛補充の申請をしてくれていました。偉いぞ。

護衛さんは二名選出の予定です。一名じゃないの?ってメリーさんにも聞かれたんだけど、このチャンスは逃さないほうがいいでしょ。スタートダッシュですよ。

エクセルには、あなたの代わりが一人で足りるの?とか言ってみたら、一も二もなく二人選出で了承となりましたよ。…ちょろ…いえ、ものは言いようであります。


エクセルのかつての古巣、騎士団から数名が候補として選出されました。ま、順当ですね。

わたしも面談はするものの、多分エクセルが選出してくれた人たちであればどの人も問題ないんじゃないかな。

候補をあげるにあたって、エクセルによる振り落としのための訓練があったとかなんとか。風の噂が回ってきました。もう、何も言えない。ここは聞かなかったことにします。


そして、わたしとの顔合わせの後で、エクセルが護衛を決定します。わたしの意見はきいてもらえるのでしょうか。どうなのでしょうかね。


候補を選ぶ前にエクセルにはどうせならやや差別されている種族を選ぼうと思っていることも伝えた。

少数民族っていうのかしらね。さすが、異世界なのよ。獣人はいないんだけど、リザードマンはいるの。すごい身体能力はいいんだけど、恐怖心をそそるところがあるのかな、ちょっと隅に追いやられてる感があるんだよね。

聖女の隣に普通にそういう護衛がついていれば、だんだん目が慣れてくるだろうし、いい考えじゃない?


最終的には人間性を考えて選出してもらいたいけど、今のところは少なくとも一人はリザードマンにしたいと伝えたら、ちょっとびっくりしていたけど、ふっと笑って、「仰せのままに」と言ってくれたので、よかった。


護衛二人としたらコミュニケーション能力とか差別意識がない人じゃないといかん。同じ騎士団だからそんなのはないかもしれないけど、相性もあるじゃない?だから、まずは候補者とまとめてお話することにしました。みんなで雑談。で、その後、わたしとエクセルとメリーさんが一人ずつ面談します。特にメリーさんの意見も聞きたいところ。


ということで、第一部はガーデンパーティでございます。準備はメリーさんにお任せしましたが、さすが。男子用に飲み物も食べ物もちょっとしっかりめ。

立食でかしこまらずにカジュアルに、としたつもりだけど、全員騎士団制服姿なのは当然として、カッチンコッチンになってる人もいる。ちょっとかわいい。

聖女っていうと大層なもんに聞こえるけど、大柄な人が多い異世界人にくらべるとちんまり感が満載で聖女の威厳なんてないから、そんな緊張しなくても大丈夫だよ。


「こんにちは。今日はわたしのためにお集まりいただいてありがとうございます。まずはみなさん、お茶をしてリラックスして下さいね。これを機会にみなさんとお話できるのを楽しみにしています。どうぞ、よろしくお願いいたします」


ぺこりと頭を下げて挨拶をする。

なんとなく、どよめいたのはなぜだ。その後、一人ずつ自己紹介してくれる。みなさん、爽やかですこと。そして、みんなそれなりにイケメンだな。


黒髪クール系、茶髪爽やか系、赤髪ワイルド系。リザードマンはターコイズブルーの鮮やかかっこいい系、赤い上半身と青いシッポのスパイダーマン?系、ちょっとかわいいレオパ系、みなさん、バラエティに富んでおります。

でもなんか、固いんだよな。なぜだ。と思ったら、後ろからの視線に気付いた。

振り返ると、エクセル。おいっ。お前か!そんな無表情で木にもたれるな。腕組んで見てんな!

いかん!あいつに引きずられてはだめだ!


「みなさま、せっかくご用意したのですから、ご自由にご賞味下さいませ」


さすが、出来る女、メリーさん!エクセルの無言の威圧をぶった切ります。よっ、いい女!

メリーさんの言葉がきっかけになって、縛りが取れた模様。

わたしも「これ!おいしいからどうぞ!」なんて声をかけると、エクセルのところに向かいます。

ったく、もう。お前、いい加減にしろよ!


「ちょっと!何、圧かけてんの!」

「は?いたって普通ですが」

「元上司が無表情で腕組んで見てるのが圧にならないわけないでしょうがっ!気がつけ!」

「……」


不満そうだな。美形が無表情だと怖いんだよ!


「……この程度で固まるくらいなら、護衛として役に立ちませんね。やめましょうか」

「なに自分に都合いい解釈してんのよ!」

「都合が良い?それは違います。護衛として役に立つかたたないかという話です」

「……あのね、あなたが護衛についたのって、王家が聖女に最高の人材をということで抜擢されたんでしょ?それ以上の人は今は見つからないでしょ?現時点であなたが合格点を出した人たちがあそこにいる方たちでしょ?もし、なにかが足らないのなら、今後あなたが育てて下さい。最初から振り落とさないようにしてほしいの!わかる!?」


あ、やば。興奮してちょっと声が大きくなってしまった。ちらっと後ろをみると、護衛候補くんたちがキラキラした目でこっちを見てる。聞こえちゃったか。

その後ろでメリーさんが親指立ててた。じゃ、まぁ、いっか。


エクセルに視線を戻すと、もたれていた姿勢から身体を起こし、「はぁ」とため息をつくと、「承知いたしました」と腕を胸にあて、頭を下げた。


……こいつ、まだ納得してないな。まぁ、いい。言質はとった。


「じゃあさ、元上司耐性を見るためにも、いっしょにお茶いただきましょ。行こ」


エクセルをお茶に誘う。もう、世話が焼けるよ。なんでわたしが腕をとって連れてかないといけないのよ。


テーブルに戻ると、メリーさんがお茶を持ってきてくれる。やっぱりメリーさんの淹れたお茶はおいしい。


「神子さま、グッジョブ!」

「どうなることかと思ったよ」

「神子さまの印象爆上がりですよ。かえってよかったのかも」


二人でコソコソ話します。となりにエクセルがいるけど、気にしません。けど、まぁ、お茶でも勧めるか。


「エクセル、メリーさんのお茶、おいしいよ。あと、このサブレ、おいしかった。食べてみて」


雑におすすめお菓子を渡す。彼の好みの甘さ控えめ、どうせ、ここでケーキとか食べないだろうから手でつまめるやつ。一応、気を使ってますよ。

護衛候補の騎士くんたちも多少ほぐれてきたけど、まだまだだな。


「みなさん、お菓子は苦手ですか?」とわたしが質問すると、

「いえ!そんなことはありません!」とみんなが返してくれる。

ふむ。じゃあ、予定通りでいっか。


「じゃあね、親睦もかねてゲームしません?お菓子のお家があるの。クッキーとかクリームで作ってあるから順番にひとつずつとって解体していくの。ただし、その時にお菓子から離れちゃだめ。離れなかったら、いろいろと操作してよし。例えばクッキーでクリームをすくい取ってもOK。でも、それでお家を倒しちゃったり、最後のひとつに当たった人は負け。どお?おもしろそうじゃない?やりません?」

「楽しそうですね!」

お、自主的に発言した騎士くん、一人。と思ったら、「おもしろそうです」「やります!」とわらわらとみんなが答えてくれた。いい感じ。


「じゃあ、順番決めましょうか?」

「負けたらどうなるのですか?」


はい。エクセルによる不規則発言入りましたー。


「えーと、どうしよっか。わたしが負けたら、みなさん、どうしてほしい?」

「神子さまが負けた場合は、もちろん、わたしが代理となります」


思わず、笑う。そう来たか。

……エクセル、この場をわかってるのでしょうか。あなたがすごい騎士さまということは重々承知していますが、これはちょっとズレてないか。まぁ、もうめんどくさいからそれでいいや。


「あ〜、じゃあ、それでいいや。じゃ、わたしとエクセルはこの際、二人で一組ってことで。えーと、負けたらどうします?」

「じゃあ、歌でも歌うってのはどうでしょう?」お、自主発言。

「または何か芸を披露するとか」


ぱちぱちぱち。


「拍手がでたってことはそれでいいってことね。じゃ、そうしましょう!」

うん、いい感じじゃない?


「えーと、最後の人が負けだから、あとの人は勝ちってことなので、勝った人たちには『聖女の癒し』でもしましょうか」


「おおぅ〜」とどよめき。いや、そんな大したもんじゃないけど、みなさん、本気でやる気になっているようでよかった。


ゲームはめちゃくちゃ盛り上がりました。人間とリザードマンがいっしょになってお菓子の家をちょっとずつ解体していく。ちょっと不思議で、すてきな風景。

最初のうちはひとつずつちゃんとパーツをとっていたけど、残り少なくなるにつれ、それぞれの思惑がでて、クリーム一気取りとか、セコく極小のかけらをパーツと主張する輩もでて、みんなで爆笑。おもしろかった。


そして、負けちゃったのは、リザードマンの一人。ミロくん。元の世界でいうところのレオパ――ヒョウモントカゲモドキ系の見た目でつぶらな瞳とトカゲ顔ながら愛嬌のあるお顔だち。

かわいい!しょぼんとしちゃうところもかわいい!

みんなが攻略しているところ、生真面目にパーツ取ってるから〜。かわいすぎる!

ちょっとファンになっちゃうかも。さて、負けたからには何か芸を披露していただかないとですが、何するの?


「ミロくん、残念でした。罰ゲーム頑張って!」

声掛けをしただけで、ぱぁぁ〜っと表情が変わりました。ほんと、かわいいね、ミロくん。


「ありがとうございます!えーと、では、サンドイッチの蝶々を飛ばします」というと、キュウリのサンドイッチを手にとり、上に投げた!と、シッポをヒュンッと振ると、シッポが触ったわけではないのに、サンドイッチが半分にスパンと分かれた。すごい!


その後にサンドイッチは落ちることなく、空中にとどまり、ふたつがくっつき、パタパタと羽を動かして空中に留まっていたかと思ったら、こっちにきてわたしの周りを回ってくれて、お皿に止まった。

なに、すごくない?


まわりは、「あ〜、その手があったか!」「ミロ、負けてかえって得してない?」などとかしましい。確かに。正直者が損をしないでよかった。


「ミロくん、すごい!」拍手です。

「ありがとうございます!ほんとは勝ちたかったんですけど…。でも、ちょっと得意な技を披露できてよかったです!」

「良いものを見せてもらいました。とってもすてきでした。どうもありがとう!」


「ミロ〜。うまくやったなぁ〜」なんてみんなに言われて、いじられています。愛されキャラなのね。

ゲームやってよかった。ワイワイ楽しい空気が続きます。


「じゃあ、勝者のみなさんもどうもありがとうございました。癒しは…今やる?この後の面談終わってからの方がいいかな?」

「あ、その方がいいです!」とみなさん、一致。そうだよね。気持ちはわかる。

「はい。了解です。じゃあ、切りが良いところで、個別面談に入りますか。それまで庭でも向こうの部屋でもお好きなところで寛いでてね〜」


バイバイと手を振って、別の部屋に移動します。あ〜、面白かった!



個別面談はもっぱらエクセルが質問して、わたしたちに聞かせる感じ。わたしはさっきのゲームでけっこう候補のみなさんと話したしね。

あらためて、それぞれのこれまでの経歴や得意分野、騎士としての気をつけていることなどを聞いた。さすが、みんな優秀だわ。

とりあえず、全員の面談が終わったら、終了。お帰りいただき、結果は後日ご連絡となります。


「今日はどうもありがとうございました。さて、聖女の癒し、行いますね。でね、ちょっと一人だけやらないのも心苦しいので、やっぱり、みんなにしてもいいかな?」


「もちろんです!」と全員が気持ちよく答えてくれた。よかった。気持ちのいい人たち。さすがにエクセルの選出メンバーだけあるよ。


せっかくだから、まとめてやらないで、一人ずつやります。みなさん、感動して下さってよかった。

他の人が癒しを受けてるのを見るのも、客観的に状態が見えてなかなか楽しいんだよね。

うん。透視したけど、みんな、悪いとこなし。よかった。


全員の癒しが終わり、バイバイ。みんながすっかりリラックスした笑顔になっていたのが、うれしい。

みなさんから「また、お会いできることを願っています」とか爽やかに言われて、ちょっとキュンとなりました。

さて、これからエクセルがどう判断するか。わたしもわからんので、ドキドキです。 


「エクセルもメリーさんも今日は一日お疲れ様でした。エクセル、結果はゆっくりでいいので、よろしくお願いしますね」

「神子さまは今日のメンバーで外したいものはおりましたか?」

「いえ、みなさん、すてきな方ばかりでしたよ。メリーさんはどうだった?」

「はい。みなさま、とても良い方ばかりでした」

「……ということで、女子チームの判断としては全員合格です」

「ああ、では、もう決まりました」

「はやっ。え、もう決まったの?いろいろ検討してくれていいんだけど」

「決まりです。ルドヴィアス・ファンダムとブルーです」

「茶色の髪の人とターコイズブルーの人ね。へぇ。反対する理由はないけど、どうして彼らにしたの?」

「ブルーは高い身体能力を持ち、かつ冷静沈着、臨機応変な対応ができます。そして、目立つ。ルドはブルーと人間側との橋渡し・適応力・調整役に向いているかと」

「なるほどー。他の人達の評価も聞きたい!」

「カシウスは万が一の緩衝材的な働きがやや不得手、ラグナスは二人で動くには順応に少し時間がかかると判断しました。ミロは優秀だが融通がきかない。カイゼルは護衛より機動に向いていますね」

「ああ、黒髪くんは確かにクールな感じ、赤髪くんはソロで動きそうではある。ミロくんは真面目くんだったもんね。カイゼルさんは護衛より別の役目によさそうだね」

「はい。神子さまとの相性は全員問題なさそうでしたからね。そこの考慮は不要と判断しました」

「ねぇ、せっかくだから、あなたが育ててチームにするのは?いや、わたしの護衛じゃなくていいんだけど」

「まぁ、今回は護衛の補充ですからね。騎士団の運営にも関わってきますので、今回は二名選出でご了承下さい」

「そうだね。了解です。じゃ、まずは二人で決定!いろいろとありがとうございました。連絡とか引き継ぎとかはおまかせしますので、よろしく」

「引き継ぎというか業務説明、申し渡しです。基本週一だけの護衛ですから」

「はいはい。そうでした。すみません」


はい。引き継ぎではないですね。失礼しました。こだわりますね。細かいな。

でもね、アリの一穴という言葉をご存知ありませんかね。ああ、ないですよね。元の世界の言葉ですからね。

ふふふ。これからがあなたの労働環境改善のスタートなのだよ。これから待ってろよ!


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