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一歩目
病名はうつだった。
通称『人生の風邪』。
そう言われてもあまり実感はないもの。
母親は病院を勧めてくれたものの、
親父、兄貴はまるで知らない素振りをする。
家族からまるで違う生き物が出たような、そんな目をする。それが憐れみでも関係はない。嫌気がさす。家にいても毒を吸っていく感覚になる。
ダウンジャケットを羽織り、寝癖のまま一本道をトボトボと歩いて、コンビニへ。
歩道から一歩進めば散々嫌と突き放して来たこの世から離れられる。
と、そんな事思いついても勇気がない。
母親は悲しんでくれるだろうか
ボーッとしてただ生きていくこんな1日だ。
灰皿にようやく辿り着く。
うつであろうと、喜びも悲しみも存在しない世界。
それがこの灰皿と向かい合って煙を吐いてる時間だ。ここが一番何もない、そして何でもない自分でいられる。たばこを咥えて、煤の匂いがほんのりと香る100円ライターで火をつける。
この何でもない時間が大好きだ。




