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河童と一緒に魔王倒し隊〜友情編〜  作者: 大石次郎


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7話 魔法学院の罠 前編

石巨人の消滅と共に遺跡のペトロナイト群も崩壊。北の野営地の冒険者達はサンクの商人達からも支援を受けながら遺跡の探索を再開することになった。周辺の放棄されていた野営地や魔除けの街道の復興も始まる···


「メジハから一繋がりで安定した地域が拡大してゆくのはいいことだ」


「オイラ達の伝説か広まってるんだぞ? クワッハー!」


「調子、乗り過ぎ」


「支度は整いました。銀毛(ぎんもう)の馬も借りれましたし。遥か南のセッテ国を目指しましょう。立ち寄る理由がいくつかありますから···」


危険を伴うが海路で、侵入可能な魔王軍のテリトリーに最も近い、希望の砦、と呼ばれる大野営地を目指すのが最短。


しかしノブミは魔王軍との戦いに消極的なセッテの魔法学院を説得し、また学院に伝わる至高の魔法使いの防具を借り受けるつもりなのであった。


_____



···小雨の中、ミリンミリン以外はフード付き撥水マントを着たヒカル達は魔力の強い銀毛種の馬に乗って高台になっている小山の崖から、眼下の盆地にある強い魔力の籠もった水路の目立つ美しい街並を見下ろしていた。


「水の都、世界で唯一魔法学院のある叡智の国、セッテ。わたくしの故郷です」


複雑な表情でノブミは呟いた。


セッテの魔除けの水堀の内側は雨も魔王軍の侵攻もまるで問題ないように賑わっていた。


傘は持ち手の短い浮遊傘(ふゆうがさ)と呼ばれるアイテムも魔力で浮かせて人々は使用している。


単純労働は小型のゴーレム達が行っていた。


「ゴーレムもだが、日用品の魔法のアイテムをみんな使いこなしてんだな」


「服装もみんな魔法使いっぽい」


「皿でわかる! 全員魔法の素養が高いんだぞっ」


「ここは魔法が全て。素養の無い者は追放されてしまいます。国民全体の特権意識が強く、苦手でした」


ノブミの屈折した様子に困惑するヒカルとモモミチ。


「居心地悪いならとっとと用事を済ますんだぞ? 魔法学院にGO!!」


銀毛種の馬を馬借に返し、一行は稀有なことであったが、国の行政機関を兼ねているセッテの中央にある魔法学院に向かった。


道々、雨が止んで晴れ間が見え出すとノブミはフードを取ってポツポツと話しだした。


「わたくしは、セッテの魔法学院を中退しています。腹違いの姉とも折り合いも悪くて、街を出て、魔族も避け、行き着いた戦火から遠いとある田舎の郷のはずれで薬師の真似事をして暮らしていました」


「そこがちょうどオイラの故郷に近かったんだぞ? 仲間を探してたオイラは、腕利きの魔法使いがいるって話を聞いてスカウトしに行ったんだ!」


全員の衣服や髪等に付いて雨水を操って集め、水路に捨てながらミリンミリンも話し出した。


「普通に断りましたけど、しつこくて。家に立て籠もって無視を決め込んだのですが、家の前で、1人河童祭り、というよくわからないことを始めて大騒ぎして···」


「そうそう! 段々郷のヤツらも参加して、20日くらいドンチャン騒ぎをしてやったら、ノブミがノイローゼになってギブアップして出てきて、仲間にしたんだぞ?」


「酷っ」


「強めのハラスメントだな···」


フードを取ったモモミチとヒカルは歩きながら呆れた。


「ふふ、でもなんだか、ミリンミリンと旅立ってみるとなんだか鬱屈から解放された気がしました。あんなに人に求められたのも、人に笑わされたのも、初めてだったから」


「だろぅ? オイラは勇者パワーは底知らずなんだぞ?! クワックワックワッ!!」


「「···」」


ノブミのミリンミリンへの信頼の厚さの理由が知れて、それが思ったより容易に想像できる内容で、ヒカルとモモミチは微笑ましい気で2人を見ていた。


_____



「これはこれは、ようこそ水と魔法の都セッテへ。あなた方が噂の···??」


事実上のセッテ国の行政トップである学校長は、ヒカル達を前に急に言葉に詰まった。


「? どうされました? 校長」


「···そう! セイレーン、水晶竜、ヘルクラーケン、石巨人を次々と屠った勇者! と噂される皆様方っ。サンクとメジハの商人ギルドから魔法石通信で聞き及んでおりますともっ。ノブミさんは私が就任前の本校の出身のようですね」


「···中退ですが。それよりも、セッテの魔法学院からも希望の砦等への積極的な人員派遣、応じて頂けませんか? いかにセッテが繁栄していても、世界が魔の手に落ちれ破滅です」


「俺からもお願いします。この国は勇者ヨキの旅の仲間、大賢者ゼリ・キャンデが興した国であるはずです。今こそ魔王軍に対し、反旗を翻す時です!」


「あと、なんか伝説の魔法使い防具も貸してほしいんだぞ?」


「···」


なぜか喋らず校長の様子を伺うばかりのモモミチ。


「反魔王軍活動に関しては、学内や議会の承認が必要になりますので少々時間は掛かりますが、前向きに検討させて頂きます。伝説の魔法使いの防具、灰の装束シリーズの貸与は準備しましょう」


「お! 装備の方は意外とすんなりだぞっ」


「ありがとうございます」


「一先ずよかったな、ノブミ」


「はい」


「···」


引き続き無言のモモミチだったが、そこへ、


「聞き捨てなりませんぞぉーっ?! 校長ぉー!!」


「そうですわっ、直系のあたくしを差し置いて、こんな中退落伍私生児に大賢者の装備を渡すなんてっ!! 断固反対です!!!」


副校長と吊り目ではあるがどこかノブミと似た顔立ちの学院の最上級生らしい女子生徒が、校長室に怒鳴り込んできた。


「アズミ姉さん···」


「気安く姉等と呼ばないでっ、このキャンデ家の面汚し! あ痛ぃっ?!」


速攻で尻をミリンミリンに叩かれて飛び上がる吊り目の最上級生にしてノブミの腹違いの姉、アズミ・キャンデ。


「オイラの仲間を悪く言うヤツは尻ビンタだぞっ?!」


「なんでこんな所で河童族が野放しになってるの??」


「アズミ・キャンデさん。その方は、勇者の御一人、ミリンミリンさんです」


「河童族が勇者···」


たじろぐアズミ。


「そんなことより、装備の貸与です! 増援要請は国軍や魔法使いギルドからいくらか融通してやればいいでしょう。しかし、地下保管庫のあの伝説の装備は初代校長ゼリ・キャンデ様の遺品っ。それをこんな、血縁とはいえ···中退者の小娘に」


「クワーッ」


「ひぃっ?!」


跳び掛かろうとするミリンミリンに仰け反る副校長。


「やめて。ミリンミリン。ありがとう。もういいのです。わかりました。ゼリ・キャンデの装備は諦めます。しかし、増援は」


「いえいえ、お貸し致しますとも」


「「校長?!」」


「では、副校長。あるいはアズミ・キャンデさん。あなた方が伝説の装備を纏い、代わりに最前線に出陣してくれますか?」


「うっ、私は街の魔除けの水路の強化計画や論文が···」


「あ、あたくしもそろそろ生徒会選挙が···」


しどろもどろになる副校長とアズミ。


「では、ノブミ・キャンデさん。お仲間の皆さん、地下保管庫へご案内致しましょう」


「私も副校長として同伴させて頂きますっ」


「あたくしも直系子孫として同伴します!」


「そうですか···ま、いいでしょう」


一瞬冷淡な顔になるが、執務席から立ち上がって出入り口に向かいだす校長。


ヒカル達は顔を見合わせたが、


「あの! ちょっとおトイレいいですか? 皆でっ」


「「「えっ?」」」


モモミチの突然の提案にヒカル達は戸惑った。これに、


「···そうですか。では我々は一階のロビーでお待ちしております」


校長は満面の笑顔で応えた。

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