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河童と一緒に魔王倒し隊〜友情編〜  作者: 大石次郎


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6話 石巨人の眠り

ヒカル達の船団は無事、ヌントラ島の北端の港町サンクに着いた。


ちょうど海峡を挟み、水晶山脈の南にあった滅びた漁村が対岸にある位置の港であった。本来はヌントラ島の交易の1つの基点となっていた港。


今は街に活気はなく、物々しい防衛耐性の半要塞的な街となっている。しかし、


「メジハの旗だ! ン・バヨの船団が着いたぞっ!!」


大量の物資を携えたピザタンクの商船が一度に入港すると、久々に活気付くサンクの港。


甲板で歓声を受けながら、ピザタンクは込み上げる物がある様子だった。


「これは儲かる! ヒカル達よっ、お前達が本物の勇者であるかは知らんが、このピザタンクに富をもたらしたっ。その事実は評価する!! ···私が善人ではないの知っているだろうが、商いは世界の血液だ。それを巡らすことに関し、少なくもこのピザタンクは全身全霊を懸けているっ!」


「まぁあんたのような人達がいなければ、平時の世の中も有事の支度もままならない。商売は好きにしたらいいさ。ただ···馬車で子供に怪我させて居直るのは大商人の振る舞いじゃない」


「ぐっ···考慮はする」


後ろでモモミチにジト目で見られつつ、多少は懲りた様子のピザタンクであった。


_____



報酬を元に石巨人戦を考慮して一行は装備を整え直した。


「金額が上がり過ぎてチャリンの感覚が麻痺してきた···」


ヒカルが戦々恐々としつつ、白銀と称される魔力を込めて加工した鉄鋼シリーズの剣、盾、兜、鎖帷子を購入。モモミチは今の装備を一通り強化。


ノブミは守備力重視でまた見た目がメルヘンな為やや気恥かしいらしいカボチャシリーズの帽子やローブやブーツを購入し、シールドワンドも強化。


ミリンミリンはより強力な水属性マフラーのミヅチのマフラーと鉄亀(てつがめ)の腕輪を選び、武器は地属性と相性のいい風属性の疾風のチャクラムとバルタンスピアを購入し、諸々の支度を整えた。


「私、見た目がこれから攻城戦する、て感じだね」


「集めた資料通りなら、石巨人戦に関してはあながち間違っていないような気もします」


「取り敢えずちょっと休むんだぞ?」


それから一行は宿で一休みすることになった。


_____



一行は馬借で馬を借り、サンクの南にある元は遺跡探索をする冒険者達の常設キャンプで、魔物が活性化した今は石巨人の遺跡の監視と定期的な魔物の間引きをする為の前線基地になっている野営地を目指した。


そこで馬借に馬を返し、より詳しい情報を仕入れて一晩休むと、早朝からそう離れてはいない遺跡へと出発した。


···石巨人の遺跡は、かつて海を挟んでメジハ王国と世界の覇権を巡って争った大帝国の首都があった場所であった。


帝国は最終兵器として魔導の粋を集めて造られた最強のゴーレム、終末の石巨人が暴走し滅びている。


「全員、石化耐性の黄金蜂(こがねばち)の護りと精神耐性のブーケの護りは身に着けてるな? 石巨人とは別に幽霊騒動があるから。まぁいまいち、どういう攻撃ってのは特定できなかったが···」


「取り敢えずざっくり精神耐性を上げておけば問題いかと思われます。魔物の活性化の影響で遺跡に宿る大昔の死霊達が騒いでいるのでしょう」


「僧侶の私が言うのなんだけど、昼間でも出るもんかな?」


「モモミチぃ、お化けだぞぉ〜? ベロベロベロ〜っ!!」


「いやあんた河童でしょ? というかどんだけ舌伸びんの? ええ?」


等と話しながら、朽ちた砕け散った石の都へと一行は入っていった。


ここもダンジョンではない為、トラップの心配はなくルートを確認していて山地でもなく、足場の崩落に気を付ければ水晶山脈の攻略よりも移動は楽であった。


ただし、


「モッ!」


ペトロナイトと呼ばれる倒しても年月を経れば復活する石の兵士の魔物が徘徊し、これが手強く、対策済みだが石化能力持ちで、なにより数が多かった。


「きりがないなっ、足は遅い。振り切って、安全地帯に入ろう!」


この遺跡には石守の野営地の冒険者達があちこちに魔除けの安全地帯を造っていた。


「じゃ、よいしょっ」


「あ、どうも、です」


モモミチが他のメンバーより機動性に劣るノブミを抱え、一行はミリンミリンが水の弾の連射でペトロナイトを怯ませている内に遁走していった。


点在する安全地帯から安全地帯に逃げ回りながら、ヒカル達は石巨人が封じられた深部に最も近い安全地帯を目指した。


_____



遺跡はペトロナイトが他の生き物を片っ端から石化させる為、小規模な火や煙や食品の匂いに反応する魔物はいなかった。


一行は最後の野営地で簡単なスープとパンと酢漬けと茶と茶菓子等で食事を済ませ、仮眠やトイレも済ませ、再出発した。


深部ではあれだけ面倒だったペトロナイト達の気配がない。また古代の朽ちた街並みは深部以外よりも健在な様子だった。


「···静か。というか、深部は意外と建物が残ってるな。むしろ跡形もないはずだが?」


「冒険者達は深部には近付かないようなので、詳しくは不明ですが、石巨人の再生能力の影響を受けているのかもしれませんね」


「街を復活させようもしてるの? 自分で壊したクセに??」


「クワッ? なんか一杯いる! 形を成してないヤツらだぞ?!」


(滅びろ滅びろ···)


(我らのように···)


(石巨人の供物だ···)


朧げな者達が奇妙に健在な古代の街並の陰を飛び回り、這い回り、伺い、ヒカル達に呪いの言葉を投げ掛け出した。


しかし、一行の勇者の力か? あるいはアクセサリーの加護か? 近付けはしない様子であった。


「恨みがましいねっ」


スルッと聖水の瓶3本と霊木の灰の小袋3つを抜き、それを対価に聖なる多層魔法陣を編みだすモモミチ。


「ターンアンデッド!!」 


聖なる波動が周囲に放たれ、多くは昇天し、或いは慌てて逃れていった。


「これで一先ず静かでしょ?」


得意気なモモミチだった。


街並みの先には街の再生やペトロナイトの干渉を受けないのか? 半ば森に還ったような空間があり、その中心に、緑の小山に埋もれた石の巨人がいた。


「クワ〜っ? デカっ!!」


「水晶竜やヘルクラーケンをペットにできそうですね」


途方もない巨体のそれは両目を光らせ、ゆっくりと、地響きを立てながら身を起こそうとしていた。


「ちょっとゴブレットの位置がわからないがっ、手筈通りやるぞ!」


「プロテクト! レジスト! ストロング!」


「フライです!!」


モモミチが補助魔法を掛け、ノブミが飛行魔法を全員に掛け、任意で飛翔可能な状態にした。


「ノブミは維持と飛行補助! モモミチは回復とノブミのガード! ミリンミリンは、行くぞ!!」


「クワッハーっ!」


森と周囲の街並を崩壊させながら身体を起こした石巨人は飛来したヒカルとミリンミリンに拳を振るった。回避しても風圧で2人は吹っ飛ばされかける。


皿に周囲に光の球体を発生させ、そこから無秩序に無数の熱線を放つ石巨人。


遺跡全域が焼かれてゆく。


「また隙を作るんだぞっ!」


ミリンミリンは風の勢いを保つ為、水ではなく圧縮した霧を纏わせた疾風のチャクラムを左腕に投げ付け、爆発的に激突させて粉砕した。


よろめき、熱線の乱射を止める石巨人。


「よしっ」


左側から飛翔して回り込むヒカル。頭部を狙ったが、右腕で護りの構えを取られるとこの巨大な右腕を斬り付けて打ち砕いた。が、銀の剣も砕けてしまった。


「使って!」


「サンダー! サンダー! サンダー!」


モモミチがディフェンドメイス改をヒカルに投げ渡し、ノブミがフライを維持しつつどうにか電撃を連打して両腕を失った石巨人を怯ませた。


「助かるっ、ミリンミリン!」


「合点だぞっ」


ヒカルとミリンミリンは突進を始めた。ヒカルは盾を構えほぼ直進。ミリンミリンは発生させた水流に乗って複雑な軌道で石巨人の頭部に迫る。


石巨人は石片のブレスを吐いて応戦したが、ヒカルは盾を壊されながらなんとか切り抜け、ミリンミリンは水流に乗って器用に回避した。


「ここまでだっ、石巨人!」


「クワァッッ!!」


ディフェンドメイス改とバルタンスピアが石巨人に打ち込まれる。


(帝国ニ···栄光ヲ。我···ラニ勝利ヲ!! 国民ニ···平穏ナ···日々···ヲ)


石巨人の思念の感じる2人。


撃ち込んだ武器諸とも、石巨人の頭部は粉砕され、その圧倒的巨体も、先に砕かれた両腕の破片も、塵と消えだしてゆく。


「ずっと混乱していたんだな」


「設計ミスだぞ。クワっ」


「ヒカル! ミリンミリン! あれを見て下さいっ!」


消えゆく巨人の塵の中から輝くプラチナのゴブレットが出現した。


「勇者ヨキは封印のついでに、各地の強壮な魔物もゴブレットで抑え込んでたのかもね」


一行は最後のプラチナゴブレットを回収すると、完全の崩壊した遺跡深部に降り立った。


「勇者ヨキ、最後の力をっ!」


「よろしくだぞ!!」


ヒカルとミリンミリンがゴブレットを掲げると、それは光と変わり、4人に力を与えた。


(遠い未来の、光の仔らよ。私の全ての善の力は受け継がれた。あとは自らの力と勇気と意志で、闇に打ち勝つのだ。私は次の魔王は友情によってのみ打ち倒されると神の予言を得ていた。それがどんな悪に対抗する手段なのか? 私は知り得ない。その時代の光の仔らに託そう···)


勇者ヨキの思念は遠ざかっていった。


「友情推し、そんな根深い理由だったんだ」


「魔王ですか、一体どんな者なのでしょう」


「友情で倒せるならすんごい寂しいヤツかもしんないぞ?」


「今はこの力を使いこなせるようになろう。魔王軍挑む日も近い」


力を得て、決意を新たにするヒカル達だった。

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