2話 勇者の墓に行こう
「一旦、整理しよう」
とヒカルが提案し、1回の酒場で全員分のフィッシュアンドチップスとドリンクを購入し、部屋で協議を行うことになった。
「えっと、ミリンミリン? 君も勇者なのか?」
「そうだぞ? 水風呂上がりのフィッシュアンドチップス、うんまぁ〜っ」
爆食してるミリンミリン。
「ヒカル、アイディンティティが揺らいじゃうね?」
面白がるモモミチ。
「揺らいでないしっ。おほん。つまり、河童族の中の勇者的な戦士、ということなのか? あるいは別系統の勇者、とか??」
「オイラも詳しくはよくわからんのだぞ? 河童族はあんまり昔の記録とか真面目に取っとかないからな。それでもオイラの家系は、お前勇者だからいざとなったらGOな、とずっと言われてきた。これは、宿命なんだぞ!」
「···」
根拠曖昧な気配に困惑のヒカル。
「ヒカル。ミリンミリンの勇者の力は本物です。仮にそうじゃなかったとしても、ミリンミリンはこの時代の勇者としてその名を残すとっ、わたくしは確信しています!」
「···それは、友情的にってこと?」
思いの外ノブミがミリンミリン推すことが意外だったモモミチ。
「それもありますね。少なくともわたくしにとってミリンミリンは真の勇者なのですっ」
「そうだろうそうだろう! ノブミっ、もっとオイラを褒めろっ。そういうの欲しかった! クワックワックワッ!!」
「真の勇者か···」
ヒカルの家系にはそれらしい伝承や伝来の品はあったが、無条件で代々修行し、いつ来るかもしれないその時に備え続けた点ではミリンミリンと変わらない、と感じられた。
「よし! ミリンミリン。お前も勇者で、俺も勇者だ。たぶん自分が勇者だと思って行動できたヤツが勇者なんだと思う。勇者同士、改めてよろしくなっ」
「オッケー! よろしく、人間族の勇者ヒカルっ」
2人は固い握手を交わした。
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正式にパーティーを組んだヒカル達は、まずメジハ国の北西にあるヨキの墓と呼ばれる洞窟を目指すことになった。
修行と、ヒカルの一族の伝承では先人が遺しているはずの石碑を見にゆく計画を立てていた。
「ライト」
ノブミが光の玉を数個出して明かりを確保し、一行はヨキの墓へと足を踏み入れた。
···しばらく進んだ一行。
ミリンミリンは水の玉を造りだし、石材を嵌め込んだ構造の通路のあちこちに挿入した。
「ん〜〜···ほいっ!」
石材の中で水が弾け、一斉に通路に仕掛けられた大半のトラップが空打ちして露出しだす。
「「お〜っ」」
毒や麻痺のガスはモモミチがクリアの魔法で解消し、解消できない睡眠ガスや混乱ガスとみられる気体はノブミがエアの魔法で集め、革袋に詰め込んで処理した。
「アラームっぽいのは壊しといた。テレポーターはたぶんなかったぞ?」
「ミリンミリン、優秀だな!」
「だろ? クワッハっ。まずオイラの頭の皿の危険探知の力が利いてるからさぁ」
「この皿にねぇ?」
何気なく子供のように小柄なミリンミリンの頭の皿をペシっと軽くはたくモモミチ。これにミリンミリンは飛び上がった。
「うひゃうっ!」
「ええ?!」
「河童は皿が急所で凄く敏感なんです」
「マナー違反だぞっ? センシティブっっ」
「ごめんて。代償ある能力なんだね」
「わたくしもフィールの魔法による探知や、ハンドの魔法による念力が使えるのでトラップ対策は慌てなければ問題ないですよ」
「心強い。忍者なしでも大丈夫だったな? モモミチ」
「いや忍者はマストだよ。隙あらばこれからもスカウトするからね」
「もういいって〜」
「このトラップルートでショートカットできますね」
「クワックワ〜」
一行は濡れた空打ちトラップだらけの通路を進んでいった。
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「ほっ」
まだ装備してる金属お玉で次々と流動体生物のスライム、犬サイズの蟻のロックアント、茸の魔物シイタケゴンを倒してゆくヒカル。
「そりゃ!」
ブーメランで効率よくモンスター群にダメージを与えるミリンミリン。
「サンダー!!」
ミリンミリンが弱らせたモンスター群に雷魔法で纏めてトドメを刺すノブミ。
「ふんぬっ」
味方が強く回復や補助が特に必要ない為、取り敢えず棍棒で手近なロックアントを叩き潰すモモミチ。
ヒカル達は程なく通路で出会したモンスター群を壊滅させた。
「戦闘もいい感じだ」
「私、魔法使うタイミングがないから棍棒使いみたいになってるよ···」
「金欠なので売れそうな素材はコツコツ拾いましょう」
「よ〜しっ、拾うぞぉ? あ! スライムグミみっけ」
ヒカル達はモンスターの死骸から換金素材等を採取し、ノブミの収納鞄や、ミリンミリンの水を介した収納能力でしまい込んでいった。
これが平時の普通の冒険者であれば、程々の低級モンスター狩りだけで半年もすれば一戸建てを建てられたそうな効率であった。
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それからヒカルが持参した先祖伝来の墓の地図を頼りにさらに通路を進む一行。
モンスターを退け、避けられないトラップを皿探知と水や念力を使った解除で抜けつつ、勇者の墓の下層まで来た一行は宝箱を2つ発見した。
「皿がビンビンする! 右の宝箱はミミックだっ。左は特にな〜し」
「右は無視で、左だけ開けましょう」
ヒカルは左の宝箱を開けてみた。中には銅の剣が入っていた。
「お、お玉は卒業か。でも料理に使えるからな」
ヒカルはだいぶ傷んで汚れた金属お玉を背中の鞘から抜き、親しみを込めて言った。
「まずちゃんと洗ってからにしてね!」
モモミチから牽制されていたが···
通路を進み、最深部の部屋の入り口を土の大型魔法人形のマッドゴーレム1体と人魂の魔物ウィスプの群れが守護していた。しかし、
「いい切れ味だっ」
「相性抜群!」
ヒカルは銅の剣の一閃でゴーレムを倒し、ミリンミリンは水の弾の連射でウィスプをあっさり全滅させた。
「速っ」
「勇者が2人いますからね」
一行は勇者の墓深部の部屋へと入った。
そこには伝承通り大きな石碑があった。
刻まれていた言葉は、
『私は仲間と共にこの時代の魔王を倒した者。試練を越え、神の祝福を受けた私の力は高まり過ぎた。悪用を避ける為に私はこの力を5つに分け、1つは私の子孫に。1つは私の旅の仲間の中で最も身軽な心を持った河童族に託す。残り3つはセイレーンの迷宮、水晶竜の住処、石巨人の遺跡に封じた。未来の若者達が5つの光を使いこなし、その時代の闇を祓うことを願う。温かな友情が繋がらんことを ヨキ』
とあった。
「出た! 友情っ」
「メジハ王の酔狂だけってワケでもなさそうだな」
「身軽な心だってさ!」
「どうやらわたくし達は勇者ヨキの力を求めて旅することになるようですね···取り敢えず、ここから出ましょうか?」
ノブミは収納鞄から迷宮離脱アイテム、脱出の鏡を取り出し、使用した。
鏡が砕け渦巻き空間の扉が開き、一行は吸い込まれ、勇者の墓を後にしたのだった。




