19話 光の中で
神剣による相殺で一撃で魂が破壊されることは辛うじて回避された。
魔王ワルーは最初に魔将コスモマージが倒され、上手く把握対処できないことに気付いた時点で神からの認識阻害を了解し、いずれ必ず現れる勇者達を滅ぼすべくこの、初撃、を撃ち込むべく力を溜めていた。
歴代魔王の中ではある種、卑屈と言ってもよい捨て身に近い防衛手段であったが、この悪魔の発生経緯からすれば不思議なことではなかった。
(···う、く、俺、は···俺??)
闇の中、己を見失いつつある勇者ヒカル。
まさに痛恨の一撃。かつて神剣を手にするまで育った勇者をここまでただ一撃で追い詰めた魔王はいなかった。
······致し方ない。
(ル···カル···ヒ···ル···ヒカル!)
(モモミチ!)
(ノブミ!)
(ミリンミリン!)
わたしはわたしに課したいくつかの戒律を反故として、直接勇者ヒカルに、勇者モモミチに、勇者ノブミに、勇者ミリンミリンに呼び掛けた。
(((?!)))
勇者達は闇の中で目覚めた。
(おお、勇者達よ。闇に打ち負かされてしまうとはなさけない。···だが、そうであっても、お前達はここにあの悪魔を倒す為に、必要な物は既に全て持ってきている。私が紡いだ運命の糸。断片的にのみ伝わったいくつかの予言の結末。全てがここにある。必要なことは、その光を、手放さぬこと)
わたしの呼び掛けに、勇者達は光を放ち出した。
「俺は···ヒカル! ヨキの子孫で、樵と、機織りの息子!!」
「私はモモミチ! 忍者が好きで、パン屋の娘!!」
「わたくしはノブミ。大賢者ゼリの傍系子孫で、学院中退の田舎の薬師!!」
「オイラはミリンミリン。河童一族で、一番相撲が強い人気者!!」
闇の中で、4人は互いに手を差し伸べ、手を取り合い、善なる光で全ての闇を打ち祓った。
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再び4人の勇者達が魔王城最下層に降り立つと、そこは緩慢に逆巻く闇の大渦の覆われたそこかしこが陰火で燃える瓦礫の漂う空間となっていた。
「トゥルース・マナシャイン!!!」
初手の闇の一撃で消し飛んだ光球の代わりに、真なる魔力の光源、仮初の太陽を頭上に発生させるノブミ。
闇の大渦は大きく勢いを削がれ、闇の中から蝙蝠のごとき翼で身を包んでいた魔王ワルーの姿を炙り出した。
「神の奇跡を使ったか。2度はあるまい···」
闇を集め、巨体の棘の植物で覆われた白骨の魔神に変化するワルー。
「お前達を、赦そう」
触れる物を消失させる波動を放つ白骨のワルー。
ヒカルとミリンミリンは回避し、
「ふんぬ〜っっ」
モモミチはノブミを庇いながらシャマシュの神鎚を巨大化させて受け凌ぎ切った。鎚にヒビは入る。
「トゥルース・マナエクスプロード!!!」
一先ず魔力切れになるが、真なる爆炎を放つノブミ。
白骨のワルーの全身の棘の植物は燃え上がりその巨体を焼き続けだした。
苦痛は無意味であったが、爆炎の直撃と身体を構成する要素が炎上しコントロールを失い、動きに制限を掛けられるワルー。
「クワッハーっっ!!」
隙を逃さず、激流を纏わせたヒヒイロカネのブーメランを投げ付け、左腕を破壊するミリンミリン。引き換えに至高の素材のブーメランも砕けてしまった。
「···」
白骨のワルー自身は特に反応しないが、自動的な反撃で傷口の腕の付け根から死の骨片の無数の矢がミリンミリンに放たれた。
「クワワワっっ??!!」
避けながら激流を纏わせたダゴン殺しを回転させて弾いたが、防ぎきれず大きく吹っ飛ばされてゆくミリンミリン。
ヒカルは白骨のワルーの足元で闇に消し飛ばされてゆく瓦礫の1つに飛び乗っていた。
「おおおおぉっっ!!!」
逆手に持った神剣リーラシオンで3連続で加速斬りを放って白骨のワルーの両足を砕き滅ぼすヒカル。
神剣は勇者の技を使っても壊れず、むしろ研ぎ澄まされたようであった。
(形ある仮初めの世界。精算の時が来た。赦すのだ。勇者よ。苦痛に満ちた命あることを手離し。お前も救われろ)
両足を砕かれても闇の中に浮遊する白骨のワルーは胴回りの4つの星の世界への扉を開き、その全てで流星群を引き寄せ始めた。
「トゥルース!! マナぁっ、ディメンショおおおーーーンッッ!!!!」
マキシマムエリクサーで回復したノブミは真なる空間操作魔法で開けられた星の世界への扉を強引に操り、鼻血を出しながら、側のモモミチにヒールを連打されながらソーンワンドを砕きながら、白骨のワルー自身の方に向け、全ての流星群をぶつけさせた。
ドドドドドドドッッッッ!!!!!
胸から下を全て失う白骨のワルー。
自動反撃のやや細くなった消失の波動はモモミチがシャマシュの神鎚を砕きながら防いだがモモミチもノブミも纏めて吹っ飛ばされていった。
「ワルー!!」
流星群の直撃の余波を避ける為に一旦離れていたヒカルが、瓦礫から瓦礫へと扉移り、駆け抜けて接近していた。
範囲の狭まった死の骨片の矢の連射は神剣で斬り払い、細くなった消失する波動はアダマンタイトの盾を砕きながら受け流し、ワルーの胸部に加速斬りを打ち込むヒカル。
骨の胴体は全て消し飛んだ。が、
(その剣は赦しを認めず、傲慢だ)
白骨のワルーは右腕を一瞬で骨の龍と化して神剣に喰らい付かせた。
同時にヒカルの手から神剣を奪うと、頭部だけになった大口からヒカルに血も凍る死の衝撃波を放って吹っ飛ばし回収を阻止させ、呪いの骨の球体と化して剣を封じ闇の渦の中に落とした。
「ふぅ〜〜〜っっ」
兜を砕かれながらもどうにか着地した瓦礫の1つで、ボロボロになった収納鞄からマキシマムエリクサーと水晶の剣、バスタードソードを纏めて抜き、マキシマムエリクサーを頭から被って回復するヒカル。
「勝手なことばっかしだな。お前、それ、全部1人で考えたろ? 変な予言だか王様の拘りだかで、やたら友情友情言われるワケだ。ワルー、お前に対抗するよ。なにしろさ、お前とまともに話すの、俺達が初めてだろ?」
「クワーーーっっ!!!」
闇の底から、マキシマムエリクサーで回復したミリンミリンが傷んだトリトンマフラーに守られて飛び出し。
「ニンニーーーンっ!!」
「普通のエリクサーでも多少は···」
流星のバックラーを対価に造った結界に守られてモモミチとノブミも闇から飛び出してきた。
「···奇妙だ」
骨の頭部が砕け、再構成され、骨の鎧で身を包み、骨の大剣を持った元の姿のワルーが現れた。
「お前達を赦し難い気持ちが湧き起こる」
「それ友情っ!!」
ヒカルとミリンミリンは突進を始め、
「プロテクト! レジスト! ストロング!」
モモミチは切れていた補助魔法を掛け直し、
「サンダー! キャリバー! マナフレア!」
ノブミは通常攻撃魔法を連打して援護した。
「勇者よっ!!」
通常攻撃魔法に怯まず、1人でヒカルの双剣とミリンミリンのダゴン殺しを捌く魔王ワルー。
力、技、速さ、武器の強度、いずれもワルーが圧倒していたが、
「んぎっ」
ミリンミリンがヒカルに飛び付いてオリハルコン亀の腕輪にヒビを入れながら大剣の一撃を受け、その機会を逃さず右手の水晶の剣を瞬間的に逆手に持ち替え骨の大剣の刀身の腹を加速斬りで打ち据えヒビを入れるヒカル。
水晶の剣は砕けたが、ワルーの体勢も崩した。
「クワッ!」
加速斬りの速さになんとか耐えたミリンミリンは抱き着いていたヒカルからさらに飛び付き、ダゴン殺しでヒビの入った骨の大剣を完全に砕いた。
のだが、ワルーの骨の尻尾で頭の皿を叩き割られ、即死するミリンミリン。
「ぽぅっ??」
「即死かよっ」
「サンダー!」
ノブミの援護が入ってる内に慌ててマフラーを掴んで引っ張り寄せて皿にエリクサーを掛けて後ろに投げるヒカル。
「リザレクション!!」
モモミチの蘇生魔法で皿が治り蘇生するも、
「クワぁ〜???」
完全ではなく、酔っ払ったようになってるミリンミリン。
「キャリバー! マナフレア! ···はぁはぁ」
魔力切れとエリクサーの飲み過ぎで膝をつくノブミ。
モモミチはそれを小脇に抱えてフラフラしてるミリンミリンを回収に走る。
尾の骨の鞭と剣の代わりに伸ばした骨の両鉤爪と斬り結んでいるヒカル。
「オオッ!」
魔法の連打と、鉤爪とのリーチの差でワルーの兜は破壊され、鎧にも損耗があったが、骨の鞭を防ぎ切れず、ヒカルのアダマンタイトの鎧も損耗していた。
「オオォーーッッ!!」
「···」
ワルーは困惑していた。
倒し切れないことではなく、勇者達との交戦に、愉快さを感じている自分に。
愉快であること。全く知らない感情であった。




