1話 仲間を探そう
魔王ワルーは世界の7割占領し、人々を恐怖のずんどこに落とした。
勇者ヨキの血を引く戦士ヒカルは魔王を討伐する為、旅立つのであった!
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ヒカルはメジハ王国の玉座の間を訪れていた。
片膝をつくヒカル。
「メジハ王! 戦士ヒカル。勇者ヨキの血の宿命に従い、参じました」
「おお、戦士ヒカルよっ。魔王ワルーをその勇者の血と、聖なる仲間達との友情で倒すのだ!」
「友情···はい、それは勿論。つきましては旅立ちの路銀を少々」
山の中の隠れ里で修行ばかりしていたヒカルはほぼ無一文であった。
「友情を育むのだ! 1人はみんなの為にっ、皆は1人の為にっっ。友情! おおっ、友情を高めよ!! 友情友情っ、Yo Yo セイ、ホーっ!」
メジハ王、テンションMAX。
「す、凄い友情推されますね···」
「友情大事でしょうがぁーっ?! Yo!」
「おおおっ??」
メジハ王の勢いに困惑しつつ、どうにか路銀50チャリンをメジハ王からゲットした戦士ヒカルは一先ず城下町で装備を整え、旅の仲間を探すことにした。
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「50チャリンか···宿や食事、持ち道具の購入費を考えると、竹槍と革の帽子を買うのが無難だが、武器を最弱の檜の棒にして他を節約すれば皮の盾も買えそうだな。安全第一···いや、攻撃は最大の防御! 武器は棍棒1本で薬草を多めに買ってマッチョプレイも悪くない。どうせしばらくは城の周りで雑魚狩り···ん?」
ヒカルが独り言を言いながら通りを歩いていると、前方に人集りができて騒ぎが起きているようだった。
「貴様ぁ! このピザタンク様がメジハ商人ギルドの幹部と知っての狼藉かぁ?!」
「はぁ? ここ昼間は馬車乗り入れ禁止でしょ?! 子供にケガさせといてなに言ってんの!!」
僧侶の女と、太った豪商の男ビザタンクが揉めている。近くにケガした子供を庇って狼狽してる母親もいる。ビザタンクの派手な馬車もあり、ガラの悪い護衛の男達もいた。
「もういいわ。子供の治療が先! 今、ヒールしてあげるからね?」
「ちょっと待てぇい! まだ話が済んでおらんっ。ええい、者共! この小娘に、社会をわからせタイム、してやれ!!」
回復魔法で子供の手当をしようすとする僧侶に護衛の男達をけし掛けるビザタンク。
ヒカルは溜め息をついた。
「これ、買います」
スープの屋台の金属のお玉を2チャリンで購入したヒカル、素早く護衛の男達を叩きのめして昏倒させ、さらに御者の手綱もお玉で斬撃を飛ばし切断した。
腰を抜かす御者。
「ひぃ?! 冒険者か? お、覚えてろ!!」
ビザタンクは泡を吹いてる護衛達と馬車を置いて、御者と秘書らしい者と慌てて逃げ去っていった。
周囲城下町の人々はやんやの喝采をする。
「子供は?」
「ヒールした」
僧侶は魔法を使った治療を終えていた。
「ありがとうございました!」
「ありがとう、お姉ちゃん、お兄ちゃん」
母子は去っていった。人集りも徐々に解けだす。
「私も、ありがと。凄いお玉捌きね」
「いやお玉はアレだけど、俺は戦士ヒカル。君は僧侶だろ? 魔王を倒しにゆくんだが、旅の仲間にならないか? あ、友情? なんかも込みで」
「···友情?? そうね」
少し考え、ヒカルを見る僧侶。
「わかった。私は僧侶モモミチ、よろしくね? お玉使いのヒカル」
「いや、お玉使いじゃないが」
ヒカルは僧侶モモミチを仲間にした。
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ヒカルとモモミチはメジハの冒険者の酒場に入った。
「戦士と僧侶だけじゃな···あと2人は仲間を探そう。鍵師か忍者は必須だ。ダンジョンとかで詰むから」
「私、忍者好きなんだ。適性があったら忍者になりたかった···」
「へぇ?」
モモミチの忍者願望を聞きつつ、ヒカルは酒場を見渡す。
かなり広い、ビアホールと言っていい規模の店で、2階と3階は宿になっているようだった。
それなりの賑わい。
「取っ掛かりがないか。店に仲介料を払って人を紹介してもらおっか?」
「そんな隙間バイトみたいな感じで魔王を倒す仲間を探すの? まぁいいけど、私もお金はないからまず掲示板見てみようよ」
「おお」
店には掲示板があり、記載の情報の信憑性は不明だがパーティーメンバー募集の張り紙も多数あった。
「え〜と、戦士と僧侶を募集で、鍵師か忍者」
「忍者で!」
「え〜? まず忍者職就けてる人少ないんじゃないか??」
モモミチの忍者推しでターゲットを忍者に絞って探すことになった2人。
実際、適性や訓練環境の確保の難度から忍者に就く者は鍵師の半分程度だった。
「···いない、な」
「忍者で募集してる人がほぼいないね···」
「あのぅ」
不意に2人の背後から陰気そうな魔法使いの少女が話し掛けてきた。
「わたくし、魔法使いのノブミといいます」
「「モブ味?」」
「ノブミです!」
「ああ、ごめんごめん」
「なにか用? ノブミさん」
「パーティーメンバーを探しているなら、わたくしと、わたくしの仲間をメンバーに加えて頂けませんか? ちょうど戦士系職と回復系職の方を探していたんです」
「残念だけど、ヒカルは戦士ではなくお玉使いだから」
「戦士だよ! 今のメインウェポンはお玉だけどっ。というか、俺達、忍者か鍵師、トラップ対策できるメンバーを探しているんだ。···あと実は魔王倒しにゆくんだよ」
ノブミは口をパクパクとさせ驚いたが、すぐに姿勢を正した。
「実はわたくしの仲間も魔王討伐志望なのです!」
「受験とか就活みたいに言うよね」
「モモミチ。よし、話は聞いてみよう。ちなみにその仲間は友情とかある方?」
「友情ですか? ···わたくしの、数少ない友達ではあります。あと、トラップ対策得意です。鍵師や忍者ではありませんが」
「「ふん?」」
要領を得ない所もあったが、2人は2階だというノブミ達が取っている部屋についてゆくことにした。
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部屋に入ると、撥水布のカーテンで仕切られた風呂場から、カン高い声の歌声が聴こえてきた。
「クワックワ〜ッ。ある日ぃ、ノブミと2人でぇ、語りぃ合うったさぁ。オイラの偉大さ賢さ格好良さについて〜。ミリンミリーンっ、3時のおやつを全力待機ぃ。ミリンミリーンっ。湖水でめっさ泳ぎ速い、ルル、オイラを称えてぇ〜。オ、イ、ラ、をたーたーえぇて〜!」
ノブミは無表情で既に歩み寄っており、カーテンをシャッと素早く開けた。
緑色の奇妙なシルエットの人影がアヒルの玩具等を浮かべた水風呂にいた。
「キャーッ! ちょっとノブミ、破廉恥っ。オイラは裸だぞっ? ノイズになるから水着着せられちゃう!!」
「あなたは基本裸じゃないですか? 紹介します。この子はミリンミリン。河童族の、自称勇者です」
水風呂には頭に皿、背に甲羅、手足に水掻きと短い尻尾を持つ、水棲人型種族、河童が1人いた。
「「えーっ?!」」
地域にもよるが、中々レアな種族であった。