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数年後私の病気も悪化している。早く手術しないといけなくなってしまったが、まだドナーもいない。
あぁ、このまま死んでしまうのかと思ったが、ドナーが見つかった。
そこからだんだん生きる希望が見えてきた。
手術は成功。私は生きながらえた。本当は不安で死に近づくのが怖かったが、今はその感情は嘘のように消え去った。手術が成功した後も術後観察ということでしばらくそこにいた。
そして16歳の年の夏、隣の県に戻ってきた。
夏休み期間であったので学校にいけるのは夏休みが終わった後だった。私は小学校、中学校とまともに行けなかったので楽しみで堪らなかった。
転校初日、授業中手話で会話する二人を見つけた。
周りからすれば、何をしているのかわからないが、手話をわかっている私には筒抜けだ。アニメの話で盛り上がっていた。見たところ、健常者のようだ。
『ねぇ、なんで授業中アニメの話で盛り上がってんの?』
『は?え、なんでわかって…んの?』
『あれ、手話でしょ』
『そうだけど、なんでわかるの?』
『んーなんででしょう、まぁ人に話すようなことでもないかな』
『なんだよ、それ』
『そっちは、なんで手話できるの?』
『話したくない』
………
ちゃんとした学校生活は楽しかった。あまり友達はできないし、勉強は難しいけど香織ちゃんが楽しそうに教えてくれたことを思い出す。それと照らし合わせながら毎日ちゃんとした生活を送れるだけで十分だった。
なぜかはわからないけど、彼のことが気になった。風間晴、見たところ普通の男子高校生のようだ。何かにつけてはちょっかいを出した。
相変わらず手話ができる理由については教えてくない。