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休日が終わり、だいぶ体調もよくなった。また菊池に振り回されると思うと億劫になりそうだが…

学校に行くと、俺と菊池が一緒にいたという事が広まっていた。一体どこから広まったんだ。

こんなことにはならないと鷹を括っていたが、どうやら想像以上に広まっていた。

男女双方からどうやって塩対応の菊池と打ち解ける事ができたのかその話題で持ちきりだった。

その中であまりよく思っていない目線もあったが、無視することにした。


しかし、菊池遥は学校に来ていなかった。欠席だそうだ。理由はわからない。俺としては、彼女のことを考えるに最近疲れていたので考えずに済む。

彼女がいない日はとても快適ではあった。彼女がきてからというもの何かに悩まされてばかりだ。

その当の本人がいないとなると、楽なものだった。

彼女が来なければ、あの時代の事を思い出すこともなかっただろう。

ん?あれ、なんで忘れていたのだろう。急にいなくなったとは言え、僕にとってあの子と過ごした日々は良いものだったはずだ。手話を覚えてよかったと思えた。

急にいなくなったことに俺は怒っていたのだろうか。

ダメだ、いなくなった後の事がどうしても思い出せない。今度啓に聞いてみるか。


それから菊池遥は全く学校に来なくなった。

もう2週間くらいになるだろうか、未だその理由はわかっていない。

俺は焦燥に駆られていた。彼女がきてからというもの振り回されてばかりだったが、俺の思い出を思い出させてくれた人。よく喋りかけて来た人。彼女が転校して来てからそこまで月日はないが、それだけで彼女の存在は俺の中で大きなものとなっていた。

また、いなくなるのだろうか。


しかしあれからというもの、啓も彼女のことについて、なにも聞かなくなっていた。彼女がこれほど来てないとなると、なにか話しにくる。啓はそんなやつだ。でも、なにも言ってこない。

啓も最近は部活で忙しい。昔のことを聞きたかったがタイミングが中々なかった。授業中に聞くこともできたが、手話で話すことではなかったので、やめた。


そして彼女が来なくなって1か月が経った頃、彼女はひょいっと現れた。何事もなかったかのように。

『よっ!おはよう』

『お、おはよう』

彼女の姿を見てから安堵した自分がいた。

それがとても悔しかった。けど、嬉しかった。あの時もこんな感じで何事もなかったかのように佐倉香織が戻って来てくれたらとどれだけ願ったか。でも、彼女は戻ってこなかった。


授業中、彼女がこちらを向いてるのがわかった。彼女に視線を向けると手話をしていた。

『ねぇ、放課後空いてる?』(手話)

『なんで?』(手話)

『授業わからない、ノート見せて、勉強教えて』(手話)

そりゃそうだ。1か月も学校に来ていないとなるとついていけなくなるのも当然だ。もうすぐテストも近い。

『分かった』(手話)

本当は断りたかった、彼女といると悩む事が増える。

だけど、彼女といると昔のことを思い出すきっかけかもしれない。

俺たちは学校が終わると、二人で図書館に駆け込んだ。二人でいることが増えたので相変わらず周囲の目が痛い。付き合っているという噂もまだ払拭し切れていない。


ところで彼女はなぜ1か月もの時間を休んでいたのか。聞いて良いものかどうか、頭の中で反芻する。

勉強どころでは、なかった。目の前で勉強している菊池遥はとても集中していた。この邪魔をするのもどうかと思い、聞くのをやめた。

すると、俺の視線に気付いたのか彼女と目が合う。

『どうしたの?』

『いや、なんでもない』

『なんで、1か月も学校に来なかったか気になるの?』

『いや、別に』 なぜ、バレた?相変わらず彼女の考えている事が読めない。

『顔に図星って書いてあるよ』

『……』

『私、実はね…』

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