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……
たす……… は………ん
誰かの声?
ベッドから飛び起きると身体中汗でびっしょりだった。自分でもびっくりするくらいの量だ。
もうすぐ冬の季節、気温もだいぶ落ちてきている。
濡れた服が自身の体温を奪っていく。新しい服に着替えながら、さっき声がした。
誰かが何か言っていた。思い出そうとしたが、昨日の頭痛が響いてるのか、それどころではない。
だが、今日は休日だ。今日安静にしてれば大丈夫だろう。
午前に少し休み、午後にはすっかり元気になっていた。
ピロン、誰かからの通知だ。
『今日、部活休みなんだ、久しぶりにどこか行かない?』
啓から連絡が来た。元気になったとは言え、外に出るとまたぶり返すかもしれないと思ったが啓とどこかに誘われるのは久しぶりだ。自分の体調のことより啓とどこかへ行く喜びの方が優った。気晴らしにでもなるかもしれない。
『よし、行こう』
『なぁ、あれからどうよ』
『なにが?』
『なにがって、転校生とだよ』
『別にどうもないよ』
『嘘つけ、前に2人でデートしてるの知ってるんだからな』
『デ、デート⁈違う、あれはただ街を案内してただけで。』
『デートじゃん、でもおまえが楽しそうなによりだ』
まさかもう啓に知られているとは。あの日は本校の生徒をあまり見かけなかったから油断していた。
どこから情報が回ったのやら。
啓と久々に遊んだ。昔は毎日のように遊んでいたのに今では啓の部活がオフの日ぐらいにしか遊びにはいかない。でも、一時期佐倉香織といるようになってからはあまり遊ばなくなったっけ。
『あ、そうだ。啓、佐倉香織って覚えてる?』
『ん?いや、誰それ』
『そうか。』
『ちょっと歩き疲れたな、どこか座ろうぜ』
『この近くなら、あの公園があるけど』
『いや、…そこはダメだ』
『ダメ?なんで?』
…少しの間があった。啓はすごく深刻そうな顔をしている。啓のこんな顔は初めてみる。
『いやぁ、この前ここらへんで不審者がいたらしいから危ないだろ、どこか別の場所にしようぜ』
『そうなの?わかった』
啓は早歩きでその公園とは真反対の方へ進んで行った。まるで、その公園から逃げるように。
その後は、カフェで休憩し、あいつが別れたらしいとか誰がかわいいとか、部活が大変だとか他愛もない話をして、解散した。