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その日、俺は久々に夢を見た。
『晴くんは優しいね』(手話)
『そう?』(手話)
『うん、助けてくれる人には初めて会ったよ』(手話)
『助けになれたのなら、よかった』(手話)
あの子は今どうしているのだろう。そんな疑問を胸に抱きながら、俺は目を覚ました。懐かしい日の記憶、そんなこともあったと言う気持ちと何故今更こんな夢を見るのか。これも全部昔の記憶を思い出させてきた啓とあの転校生のせいだ。
転校生、菊池遥は手話を理解することができる。
何故理解することができるか彼女に問うと、人に話すようなことじゃないよとはぐらかされた。
菊池遥は健常者に見える、俺のようなやつでなければ手話なんか覚えようとはしないだろう。となれば元聴覚障碍者なのだろうか。治ったともすれば、伝音性難聴なのか。感音性難聴では一般的に治療は難しい。
確かにそんな事情があれば、人に話すことではないか。もっとも、人に話すことではないこととはただ授業中に会話がしたいために手話を覚えたという俺の方だ。それより誰にもわからないと思って、手話を使い会話をしているのに誰かにその内容を知られていたかと思うと少し恥ずかしい。
その日の授業中は手話を控えた。
休み時間中、それを怪訝に思った啓に問いただされた。
『晴お前、無視すんなよ。俺が話しかけてるのに』
『仕方ないだろう、会話の内容がバレてるんだから』
『誰…に?』
『転校生』
『え!』
啓の反応は予想通りだった。驚きというより喜びの反応だった。更にこんなことを言い出した。転校生とも授業中会話できると。当然俺は却下した。
そして、その放課後、菊池遥に再び話しかけられた。