葉桜によせて
本羽 香那さま主催の【一足先の春の詩歌企画】参加作品です
キーワード:「桜」
子どもの頃、満開の桜が好きだった
膨らんでいくつぼみを眺め
花開く日を首長くして待っていた
少女の頃、咲き初めの桜が好きだった
日ごとに開く花を眺め
満開の桜を思い描いていた
若い頃、散り際の桜が好きだった
花びらと陽光の競演を眺め
次の再会に想いをはせた
いつからだろうか
散っていく花が幼子を守るうぶ毛に
見えたのは
いつからだろうか
花の間に顔を覗かす若葉が愛らしいと
感じるようになったのは
そして今、輝く葉桜が好きだ
花びらのうぶ毛をふるい落とし
光を浴びて輝く透明なみどり
それは冬を乗り越えた言祝で
新たな生命の静かな産声だから
未来の私はきっと祝うのだろう
厳しい冬を乗り越えた喜びを
新しい生命と共に
拙い作品をお読み頂きありがとうございます。
年をとったら葉桜に向かって「今年も生き延びたねえ」と声をかけていると思います。