第1話 転生
(あれ?ここは……)
そんなことを考えていると……
「久遠様、享年23歳、男。闘病の末……」
声の聞こえた方を見るとそこには美しい女性がいた。
(天…使…?)
そんなことを思っていると……
「私の名前はアルテナ。貴方に新しい人生を与える女神ですっ!」
そう美しい声で言い放つと彼女、女神様は歩み寄ってきた。
「残念ながらあなたは長い闘病の末、お亡くなりになりました……。ですがっ!そんなあなたに新しい人生を与えることになり、私が参りました!」
(なるほど、結局俺は死んでしまったのか。しかし、新しい人生……?どういうことだろう?もう一度人生をやり直せるのかな?)
そんなことを考えていると、女神様は心の声を聴くことが出来るのか……
「はい!その通りです!」
(!?)
続けて女神様は、
「あなたに新しい人生を与えます。しかし、天界にもルールがあり、元の世界に返すことはできないのです。ですが、その代わり、私、女神アルテナの加護を与え新しい世界に転生していただきたいと思っています。」
女神様はそう言い、まるで天使のような笑顔(女神だけど…)を向けてきた。
そんな笑顔を向けられた俺は、一瞬ドキッとしてしまった。
ハッと我に返り、
「あの~女神様?少々聞きたいことが……」
畏まった口調で話す俺に女神様は、
「アルテナ!で、いいわよ♡」と優しく囁いた。そんな感じでいいの?女神様…と思ったが、せっかく許可をもらったのでアルテナ様と呼ぶことにした。
「では、アルテナ様。加護とは何ですか?」
先程アルテナ様が言っていた加護とやらが気になり直接聞いてみることにした。俺の質問にアルテナ様はわかりやすく説明してくれた。
「加護とはね、私の力の一部をあなたに分け与え、加護を受けた側がその力を使えるようにすることよ♡」
なるほど、そういうことか。俺はアルテナ様の説明のおかげで加護について知ることができた。
加護ってそんなすごいものなのか…てかそんなすごいものを簡単に与えていいの?そう思ったが口にはしなかった。
「では加護を与えますね?」アルテナ様はそう言って、俺に手をかざした。すると魔法陣から光が現れ、俺の体を包んだ。眩しいっ!と思ったが、直ぐに消えた。
何か変わったかな?そんなことを考え、体を見回したが特に変化はなかった。
その後、力の使い方やその他諸々を教えてもらった。突然アルテナ様が「時間のようですね…」そう呟いた。
「あなたにはどうか……この世界を楽しんでほしいのです。」
そう言って、アルテナ様は俺の足元に手をかざし魔法陣を発動した。加護の時の光よりは弱かったが眩しいのには違いなく目を瞑る。
気が付くと俺は、数十mはある黒い幹の木に囲まれていた。耳をすませば微かに水の音が聞こえる。川があるのならば行きたい。生きていくには水は必須だけど川があるという確証はない。だが、自分の感を信じ、歩きだすことにした。しばらくすると、本当に川があった。アルテナ様の加護のおかげだろうか。前より感覚が鋭くなっている気がする。そんなことを考えているとどこかからか悲鳴が聞こえてきた。急いで声の方へ走っていく。声の主はエルフだろうか…銀髪に碧眼の美しい少女がいた。その目の前には少女の3倍はあるだろうクマがいた。そんなクマが少女を襲っていたのだ。少女はクマの攻撃避ける。しかし、泥濘に足を取られ転んでしまった。
(まずい!!)
そう思った俺は急いで少女の元に駆け寄った。転んだ少女を急いで抱きかかえてその場を離れようとする俺にクマは爪をふりおろした。数秒、数秒遅かった危なかっただろう。少女は理解が追い付かないのか
ポカンとしていた。我に返ったのか、少女は俺に話しかけてきた。
「あなたは…?」
俺はなんて返そうか考えていると、少女は今はそんな時ではないと気が付いたのか、
「いえ、今はそんな時ではありませんね…とりあえず助けていただきありがとうございます!それで、このクマどうしましょう…」
そうだよなぁ。このクマどうしよう。せっかくアルテナ様の加護もあるし試してみるかな。
「あ~。あのクマ、倒しても大丈夫だよね?」
倒しても大丈夫か確認のために少女に話しかけた。そんな俺の問いに少女は「あっはい。大丈夫です!というか、お願いします!!」とこたえた。返事を聞いて、俺は魔法を発動する準備をした。今回発動するのは氷魔法だ。なぜ氷魔法かというと、ここは森で火魔法では周りに延焼する可能性があるからだ。とりあえず足だけ凍らせて次の一撃を入れよう。そう考えた俺は右手に魔法陣を展開させ氷魔法を発動させた。
「我が敵を凍てつかせよ。氷結!」
発動した魔法陣から放たれた魔法はクマに直撃し、直後熊を凍らせた。
(あ、あれ…?とりあえず足だけ凍らせて次に別の魔法で倒そうと思っていたのに……)
そんなことを考える俺とは裏腹に少女は話しかけてきた。
「あの!改めて助けてくれてありがとうございました!私の名前はリリーです。よろしければお名前を教えていただけませんでしょうか?」
そう聞かれた俺は、
「気にしなくていいよ。俺の名前はクオンだ。」
と、いうとエルフの少女リリーは背を向け「クオン様♡…」と顔を赤くしていた。
俺はリリーになんでこんなところにいるのか聞いた。リリーは俺にいろんなことを教えてくれた。
要約するとこうだ、人間は容姿の優れたエルフたちを捕まえ奴隷にしているそうだ。そしてこの森にエルフの村があり、そこで密かに暮らしているそうだ。リリーは山菜を取りに来たところ、クマに襲われたようだ。助けてくれたお礼に村に案内してくれるらしい。村はここからしばらく歩いたところにあるそうだ。俺たちは村に向かって、歩き始めた。歩き続けて数十分エルフの村が見えてきた。
「ここが私の村です!」
リリーがそう言うと村の大門から二人のエルフが出てきた。二人のエルフはリリーのもとに走っていき、抱きついた。リリーは何が起きたのかわからない顔をしていたが、二人のエルフの顔を見て理解したようだ。
「お父様!お母さま!」
なんとリリーのご両親だったようだ。三人で抱き合って泣いていた。しばらく抱き合って落ち着いたのか、ご両親は俺の方に向かってきた。
「クオン様、オオグマから娘を救っていただき感謝します。私はこの村の長でリリーの父ローガンです。」
と、リリーの父で村の長であるローガンさんが感謝してきた。なんでも村の戦士たちから聞いたらしい。ちなみにリリーの母はミリーさんと言うらしい。助けてくれたお礼に村総出で宴会を開いてくれるとのことだ。リリーを助けてくれたこと、懐いていることで村の人たちは心を許してくれた。みんなはリリーが無事に帰ってきたことに感動していた。
そんな中一人、別のことを考えていた。
(おいしいものたくさん…宴会が楽しみだ!!)
そんなことを考えている俺だった。
初めまして、久我と言います。趣味で書いてます。不定期更新です。よろしくお願いします。
誤字脱字があったら是非教えてください。