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学園への入学、決意する。

 シャーロットにとっては何度目の来訪か。ここは、王立ブルーメ学園。石造りの歴史ある建物に、いくつもの建物が連なる。校舎は初等部、中等部、高等部と分かれていた。正門から見えるのが本校舎、そこに、高等部の教室もあった。

「あの、すみません。シャーロット・ジェムと申します。推薦状の件で参りました」

 シャーロットは門番に挨拶をした。門番も挨拶をすると、推薦状を確認した。国章もしっかりとある、正式なものだ。

「かしこまりました。しばらくお待ちください」

「はい。お願いいたします」

 門番が責任者を呼んでくれるようだ。いつもならここでモルゲンが来てくれる。げんなりするアルトを宥めつつも、シャーロットは待つことにした。

 しばらくして、校舎の方から男がやってきた。シャーロットは振り返る。

「……?」

「ふぉふぉふぉ」

 モルゲンではない。ご年配の男性が立っていた。迎えにやってきたのは、モルゲンではなかったのだ。

「あ、学園長じゃん。こんにちはー」

「学園長……?」

 犬を抱っこしたアルトがさらりと言う。この好々爺は学園長のようだ。シャーロットの推薦は匿名だというが、承認したのはこの男となる。

「……初めまして。シャーロット・ジェムと申します。この度はお招き預かりまして光栄です」

「ふぉふぉふぉ。私はポラールです。学園長じゃよ。……お、ワンちゃんかい?かわいいのう」

 人の良さそうな男性だ。リッカも尻尾を振っている。学園長は笑みを浮かべた。

「――して、シャーロットさん。前向きに考えてくれておるかのう?」

「!」

 いきなりの学園長には、シャーロットも驚いてはいた。それでも、願ったりかなったりでもあった。話が早く済むと。

「――はい。入学の件、慎んでお受けいたします」

「……シャーロット!?」

 アルトも反応せずにはいられなかった。シャーロットは、以前入学はしなかった。今回もそうだろうとアルトは勝手に思っていたのだ。共に学園生活を過ごせることより、今は戸惑いが勝った。

「ふぉふぉふぉ。では、爺に付き合ってくれんかのう。手続き諸々もあるのじゃ。私の秘書も紹介するぞい」

「はい、ありがとうございます。……アルト、またあとでね」

 今は学園長についていくことにした。先行く彼に、シャーロットも急ぐことに。

「……うん、話聞きたいし。リッカ、俺の部屋で預かっておくから」

「ありがとう。お願いね。リッカもいい子にしてるんだよ。……リッカ?」

 アルトの腕の中の犬が、がたがた震えていた。シャーロットとしてもアルトの部屋は、こう、アレな気持ちになる。リッカも良い思い出ではない場所だが。リッカは別のことに恐怖していた。

「……できない。僕、おしっこ、あそこで絶対にしちゃいけない」

 リッカは小さな声でもらしていた。アルトの腕から下りると、そこらの茂みに入っていった。

「ああ……」

 シャーロットも納得した。あの整理整頓され過ぎた、綺麗過ぎる部屋だ。糞尿で汚そうものなら、どうなることか。

「いや、そこまで怒りはしないけど。つか、しつけるだけだし。――って、こっちはいいよ。ほら、学園長あんな遠くだし」

「あっ」

 マイペースなご年配だ。かなり先に行っていた。

「あとは頼みましたっ!――遅れてすみません、今参ります」

 いつまでも来ないシャーロットに、学園長は一旦立ち止まって待ってくれていた。シャーロットは慌てて追いかける。アルトは呟く。

「……一応、あいつにも話しておくか」


 シャーロットは学園長室に通された。本校舎の学園に関する説明。諸々の手続き。学園長の秘書によって行われた。何枚もの書類に必要事項を書いては確認し、そして、また書いてを繰り返す。

「……」

 保護者の項目があった。そこでシャーロットの筆が止まるも、学園長が教えてくれた。シャーロットが育ったジェム孤児院。そこの院長が保護者となってくれたと。予め連絡をとっていたことの詫びも添えてだtった。

「……院長先生」

 優しい女性だった。シャーロット達孤児も懐いていた。涙ぐみそうになるのを抑え、シャーロットは項目を埋めていった。

 残すは、実印だ。――学園に入学するか、これで本決定となる。

「――よろしくお願いいたします」

 シャーロットは押印した。晴れて、ブルーメ学園の学生となった。

「ふぉふぉふぉ。よろしくのう」

 学園長は彼女の入学を歓迎した。


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