都に立ち寄る。
いつもの朝ごはんの時間になり、リッカも起きてきた。ご飯とお水が用意されると、いただきますとかっこんでいた。二人は全力な彼を見守っていた。
「ごちそうさまでした!」
リッカはご飯皿をくわえてやってきた。おりこうさんと、シャーロットはひとしきり彼を撫でた。リッカもご機嫌に尻尾を振った。アルトは羨ましそうに見ていた。
「ボウルにお水注いでおくね。出発前にも飲んでおくんだよ?」
「ありがとう!」
いいんだよー、とシャーロットはまたリッカを撫でた。リッカも感謝を込めて尻尾を振った。アルトは心底羨ましそうに見ていた。
「ああ、モフモフ……」
こんな穏やかな時間が続いてくれたらと、シャーロットは思う。それでも、いつまでもこうしてはいられない。
この平和な時間が末永く続いて欲しいと願うのならば、乗り越えなくてはならないものがある。
「出かけよっか」
アルトがコートを羽織った。シャーロットも頷く。
「――行ってきます」
ブルーメ学園。――の前に、シャーロット達は都に寄っていくことになった。
山間にあるダイヤノクト国の首都に、郵便物を管理している施設がある。推薦状を事前に受け取ることにしたのだ。さすがに毎回、あの配達人に苦労させること。シャーロットは心苦しかった。
シャーロットはエーデル村の住民票を提示し、手続きを終わらせた。不思議がられていた節もあったが、シャーロットはごり押しした。
「おかえり、シャーロット」
「お待たせ」
施設から出ると、リッカを抱っこしたアルトが出迎えてくれていた。すっかり仲良しな二人に、シャーロットは微笑んだ。
「……俺もさ、寄ってきたいところがあって。いいかな」
都にある中央広場にやってきた。三角屋根が並ぶカラフルな街並みに、舗装された道路。この道路に雪が積もることはない。栄えし都は人々で賑わっていた。
中心は、春の女神像だ。学園にあるものよりも大きめである。アルトの目的だった。
「へっへっへっへっ」
リッカはアルトから下りて、女神像の元へ。彼はとても嬉しそうだった。彼にとってのご主人様なのだ。お座りをして、笑顔で見上げていた。
「ちょっと時間ちょうだい」
アルトは瞳を閉じて手を合わせた。彼以外にもそうしている人達はいる。感謝を込めての祈りが大半だ。
「……うん」
アルトはそれもあるが、それだけではない。シャーロットにはわかっていた。今、アルトがしているのは。――懺悔だろうと。これまでのアルトが行ってきたことを、詫び申しているのだろう。
「……」
シャーロットも共に祈りを捧げた。厳かなる時間だった。
「――さてと。俺のは終わったよ」
「うん、私も」
アルトもシャーロットも祈り終えた。足元のリッカは見上げたままだ。
「リッカ」
アルトがそう呼ぶと、屈んだ。彼はリッカの瞳を見た。
「……本当にごめん。リッカの大事な人の像だったのにな」
「……」
リッカもまた、アルトの瞳を見た。そして。――アルトに近寄って、手をぺろりと舐めた。リッカは笑んでいた。それがリッカの気持ち、答えだった。
「……うん」
アルトはリッカの背中を撫でると、抱え上げた。都を出るまでの間、そのまま歩いていく。
「……」
シャーロットはそんな彼らを眩しそうに見ていた。新たな不穏が訪れようとも、新しい風だって吹いているのだと。そう思えたのだ。
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郵便配達人の救済と、女神像破壊の件のフォロー回でした。




