新たな事件、発生。少女とモフモフは諦めない。
エーデル村の巡回兵の詰め所。そこがシャーロットの目的地だった。昨日の怪しい男のことを報告したかったのだ。殺人依頼だ。シャーロットが記憶がある限りでは、この国では殺人事件など起こったことがなかった。
「やあ、シャーロットちゃん。おはよう」
「おはようございます。折り入ってご相談がありまして――」
顔なじみの村の巡回兵だ。この村の人達は、昔からよくしてくれる。孤児育ちのシャーロットからしたら、家族同然であった。
当然信用して、昨日の来訪者の話をした。自分以外の店にも訪れかねない。これでよし、とシャーロットは安心していた。
「……」
モルゲンにも相談すること。シャーロットはそれも考えたが、モルゲンは不在だ。今度会った時、にでも、シャーロットは報告することにしていた。
「……?」
巡回兵達はにこやかなままだ。そう、彼らはシャーロットの話をしたあと、黙ったままだったのだ。
「あの……」
「シャーロットちゃん。――君が、『共犯者』だったんだね」
「!?」
シャーロットは意味がわからなかった。不審者の報告をしにきただけだ。シャーロットはそれだけだったのに。
巡回兵の男が持っているのは、拡声器だ。シャーロットは止めることもかなわず。
『シェリア・カイゼリン令嬢殺害事件。自白により、共犯者逮捕。名はシャーロット・ジェム――』
「じ、自白!?」
シャーロット・ジェムの自白による逮捕。シャーロットは建物の外を見る。ばらまかれているのは、自分の顔写真が掲載されたものだ。
不審者が魔法に訪れた、殺人依頼を持ち掛けた。シャーロットは頭が眩みそうだった。この。
――この強制力はなんなのか。
足音がする。荒々しい、いくつもの足音。
「……!」
シャーロットは理解した。金糸雀隊がやってきた。――自分を殺しに来ようとしている。
わけがわからないまま、殺されるわけにもいかない。シャーロットは氷の魔力で対抗しようとしたが。
「……これが、我々の役目。我々の使命!」
「あ……」
眼前に迫るは金糸雀隊。いつのまに距離を詰めていたのか。気づいた時には。
――シャーロット・ジェムは生を終えていた。
「……」
気がついた時には、シャーロットは鳥籠の中だった。今回は死を迎えての訪れだった。
「なに、なんで、なんでなの……?」
シャーロットは体育座りで、事態を整理しようとしていた。だが、考えれば考えるほど、頭がぐちゃぐちゃになっていく。
突然の逮捕もそうだ。共犯者ということは、実際に殺人を行った者がいるということ。そして、殺されたのが。
「どうして、カイゼリン様が……」
シェリア・カイゼリンはブルーメ学園、自治委員会のトップだ。朗らかで、信頼も厚くて。時には対立もし、時には助けられた。彼女が殺される理由こそ、シャーロットにはわからなかった。
「シャーリー……」
くぅーんと鳴くのは純白の犬。リッカだった。シャーロットがあげたケープもつけている。
「リッカ!」
そう、突然殺されたシャーロットからしてみたら、リッカ達がどうなったかわからなかった。
「僕も、よくわからないんだ。放送が聞こえて、シャーリーを探そうとして。……そこまで」
「そっか……」
リッカやモルゲンの生存もわからないままだ。ただ、わかることは。
「このまま平和では、いさせてくれない」
「うん……」
また事件が発生したのだ。となると、繰り返しの日々を送ることになる。あの、死が容易に訪れる日々を過ごすことになるのだ。
「……」
シャーロットは怖い。彼女にとって、死は怖ろしいままだ。
「リッカ。私は逃げないよ。――また力を合わせよう」
だとしても。乗り越えたからこそ、手にした未来もあった。シャーロットは前を向く。
「うん、シャーリー!」
リッカもやる気だ。二人は頷き合った。
「それじゃ、寝ようか。おやすみ、リッカ」
「おやすみ、シャーリー……」
次、目覚めた時は。苦難の日々が待ち受けていることだろう。シャーロットは、丸まるリッカを見た。シャーロットにとって、かけがえのない存在だ。
「乗り越えようね、リッカ」
シャーロットも瞳を閉じた。日々の訪れを待つ。
囚われの少女は、今宵も鳥籠の中で眠る。閉じ込める錠前は、彼女を逃しはしないようだ。
その一つが、揺れていた。
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こちらでひと区切りです。次回の話へとつながります。
この次の話は、前書きにて補足させていただきます。ご一読くださいませ。




