真夜中の来訪者。
真夜中を回った。今年はあと一日はあるものの、シャーロットは昼にまったりしていた分を、取り戻すべく。この時間まで作業をしていたのだ。シャーロットは自室にて、就寝の準備をしていた。
「……?」
階下から、ドアを叩く音がする。チャイムを鳴らさずに、ドアのみを叩く音がした。配達人だろうか。いや、彼らは鳴らして知らせてくれていた。閉店と立て看板で知らせているのに、やってきた、真夜中の来訪者。
「……?」
まだ、扉を叩く音がしていた。玄関までやってきたシャーロットは、部屋の灯りで在宅はバレているだろうが、様子見することにした。
「がるるるるる」
「!」
リッカがいつの間に近くに来ていた。彼は尻尾を垂直に上げて警戒していた。
「――夜分に失礼します。こちらが魔法屋であるとお伺いしました」
男の声だ。といっても、淀んで濁り切った声をしていた。
「……」
シャーロットは応答するか迷っていた。相手は構わず続ける。
「警戒されるのは、当然といえましょう。ですが、是非ともお願いしたい件ではあります」
「……」
「報酬は惜しみません。――で、いかがでしょうか」
シャーロットは目を丸くした。相手はとんでもない価格を提示してきたのだ。大家への返済も出来て、孤児院への仕送りもたんまりと出来る。生活にも余裕が出来るほどだ。
「こちらはあくまで依頼料です。成功した暁には、成功報酬もお約束します」
「……」
シャーロットは冷静になった。そんな美味しい話があるものかと。彼女は沈黙を貫き、この男が去るのを待っていた。
「依頼内容は、――あなたの魔力で人を殺めることです。相手につきましては、契約成立時にお話します」
「!?」
この男は何を言い出すのか。当然、シャーロットが受けるわけがない。
「……」
シャーロットが返事するまで、居座る気なのか。
「……お引き取りください。当店は、そのような内容は承っていません」
「……」
シャーロットは答えた。男は、何も言わない。
「……こわいニンゲン、帰ったみたい」
「ちょっと見てくる」
リッカは男が去ったことを伝える。シャーロットは扉を開けることはせず、窓から見ることにした。
闇夜の下。遠くに見えるのは、黒い外套の男だった。不吉さを彷彿させるその後ろ姿。シャーロットは固唾を呑んで見守っていた。
いやに胸騒ぎがする。シャーロットは落ち着かない気持ちのまま、考え続けていた。いてもたてもいられず、向かいたかった。
「アルト、来るっていってたけど」
まだ夜も明けてない。アルトだ。来る可能性もゼロとはいえない。外出中という貼り紙を扉に貼っておくことにした。戻りは遅くはならない。それでもアルトを外で待たせてしまったら、その時謝ろう。シャーロットはそう考えた。
「リッカ、お留守番しててね」
「わかったぁ……」
リッカは寝ぼけているようだった。メッセージがちゃんと伝わったのか、シャーロットは自信がなかった。すぐ戻るとも言っておいた。
夜が明ける前の空。いつもは綺麗だと思えるそれが、シャーロットにはそら怖ろしく思えてならなかった。




