モフモフデイズ。
「ふぁーふぃー、ふぉーふぅー」
ぬいぐるみをくわえたモフモフがやってきた。ちょっと言っていることがわからない。可愛い。
「えっと、ボール遊びかな?うん、お外でよっか」
「うん、ありがとう!」
リッカはぬいぐるみ遊びは十分楽しんだようだ。ぬいぐるみをその場に落とすと、尻尾を振った。シャーロットのあとをついて回っている。
「犬。もう遊ばないんなら、ちゃんと片付けなよ」
アルトはリッカが放置したぬいぐるみを指した。専用のおもちゃ箱に入れるように、とのことだった。
「あ、ごめんね。アルト」
リッカは素直に返事した。ぬいぐるみをくわえ直して、箱に戻していた。
リッカは普通に人語を話している。それをアルトは特に気にしていないようだった。あれだろうか。彼の兄も言っていたが、この世界だと普通なのだろうか。
「アルト、リッカだよ」
アルトはそれでいて、いつまでもリッカを犬呼ばわりだ。
「いいんだって、犬で。犬だし。つか、シャーロットのデレを一身に受けてさ。この、ズルイーヌ!」
「ズルイーヌ!」
言われたリッカはガーンとしていた。
「アルト!」
「つーん」
アルトは大人気なかった。やれやれと、シャーロットは肩を落とした。ならばと事実をあげてみた。
「そのぬいぐるみあげたのも。アルトなのにねー?」
「そんなん、知り合いからもらっただけだし」
「へえー、ピンポイントに犬用グッズをねー?」
「ぐはっ。小悪魔シャーロットの破壊力がっ」
小悪魔とはなんだ。呆れつつも、アルトがリッカを可愛がっているのはバレバレだった。犬は苦手といっていた彼は、本当に最初は苦手そうだったが。ある日を境に。
シャーロットは目撃していた。アルトがリッカのボール遊びにつきあっていること。アルトがリッカとおもちゃで遊んでいること。お手やおかわりを仕込んでいること。お利口さんだったら撫でて褒めていること。
シャーロットは今は知らないふりをしている。
アルトは家にいると言ったので、シャーロットとリッカ二人で遊びに行ってきた。ボール遊びをしつくしたあと、家に戻ってきた。
シャーロットが最近購入したもの、それはボタンを押すと水が出てくる装置だった。タンクに水を補充しておけば、リッカが好きな時に水が飲める代物だ。リッカは早速ボタンを押すと、備え付けの器に水が注がれた。彼はごくごく飲んでいる。
「……俺に頼んでくれたら、作ったのにぃ。つか、買ったのにぃぃ。プレゼントチャンスだったのにぃぃぃ」
アルトがなんか言っている。シャーロットはこれ以上悪いと返した。アルトにつれないと返された。
「リッカ、楽しかったね?」
「うん!」
リッカは上機嫌だ。シャーロットは良かったと頷いた。この流れならいけるだろうと、シャーロットの目が光った。
「ご機嫌だねぇ。そろそろ、君の体洗わせてくれないかな」
「ぐるるるるるるる」
リッカは唸った。機嫌の良さはどっかいった。
「ほら、さっぱりするよ。もう痛くも沁みたりもしないから。ね、リッカ?」
「ぐるるるるるるる」
まだ唸っている。シャーロットは途方に暮れていた。
「ぐるるじゃねえっての。もう、怪我直ってんだからさ。シャーロットが、せっかくこう言ってくれてるんだし」
アルトは見かねでもしたのか。シャーロットに助け船を出した。
「ぐるる」
「まだ言うか。シャーロットなら、怖い思いさせないからさ。洗ってもらいな。……ほら、リッカ」
「アルト。……うん、わかった」
リッカは唸るのをやめた。シャーロットに近づく。風呂に入る気になったようだ。
「お風呂、きらい。こわい。でも、お願い」
「はい。じゃ、行こうね?」
シャーロットは洗う準備は出来ていた。あとは、風呂場で自分が薄着になるだけだった。
「そうそう、行こう行こう。俺も手伝うからさ」
「――その、アルトはお茶でも飲んで待ってて?けっこう大変になると思うから」
「手伝いてぇ……。シャーロット大変そうだし。でもって、濡れ透けがなぁ……。はい、我慢します!でも、シャーロットが手伝って欲しそうだったら、喜んで手伝います!」
「濡れ透けって……アルト?」
アルトの発言は度し難かった。シャーロットは冷めた目をしていた。
「そんなこと言ってないよ? つか、濡れ透けってなに? シャーロットの造語?」
アルトの目は泳いでいた。確実に言っていたのにだ。
「絶対手伝わなくていいから」
シャーロットはぴしゃりと言い放った。アルトは項垂れる。
「えー……」
「えー、じゃなくて」
「ほら、気が変わって手伝ってほしくなったりとかー。ほしくなーれ。ほしくなーれ!」
まだ手伝う気があったアルトに辟易していたところ、ドアのチャイムが鳴った。来客だった。店は閉めているのにだった。シャーロットはドア越しに確認した。




