女神像破壊事件の真犯人。
学園から村へ至る道。途中で国の都につながる道がある。シャーロット達は駆け抜けていた。
『今から通信をつないだままで。共有しておきたくてな』
「わかりました」
走っている最中だった。モルゲンからの連絡があった。
「それで、先生。そちらは――」
シャーロットは映像に衝撃を受ける。警戒するモルゲン達。対して、ゆったりとした動きで現れたのは、――今回の事件の真犯人だった。
「……君なんだね」
あの囚われていたルートも。それだけではなく。これまでのルートでも。彼だと思えるところはいくつもあった。自白していた時もあったのに、勝手に思い込みで信じてしまっていた。
女神像破壊事件の真犯人。――アルト・モルゲンが、そこにいた。
モルゲンからの映像は続いている。リッカがモルゲンの声が聞こえてるのを不思議がっていた。後で仕組みを教えるとシャーロットは約束した。
映像では、モルゲンは自治委員達を後方に下がらせ、退散させていた。彼らはあくまで目撃者としていて欲しかっただけか。となると、モルゲンは一人で相対する気なのだろうか。
『邪魔だよ、兄貴。元々邪魔だったけど。ほんと、今はやめてほしい。――俺、今から壊さなきゃなのに』
『アルト、お前……。壊さなきゃって、何だよ。まず、どうしてこんなことをしたんだ』
アルトとモルゲンの会話も聞こえてきた。
『うるさいな……。ただでさえ、シャーロット不足で機嫌悪いんだからさぁ。ねえ、兄貴。あの子見てない?あんたなら知ってんだろ』
『さあ? 見てないな』
モルゲンはしれっと答えた。それがよりアルトを苛立たせていた。
『ぜってぇ、嘘だろ。まあ、いないみたいだし。こっち壊してからかな。ってわけで、どいて』
「アルト……」
アルトが真犯人だとしても、こうして目の当たりにしたシャーリーは堪えるものがあった。それは、兄であるモルゲンも同じはずだ。
『それは出来ない相談だな、アルト!』
モルゲンは、アルトとやり合う気だった。彼の魔力によって、辺りは炎に包まれる。女神像をも覆う、強い炎の力だ。アルトが飛び込もうにも、炎に阻まれる。
『まじ邪魔なんだけど……!』
火傷しようが、おかまいなしだ。まだアルトは突入しようとするも、今度は炎に押し返されてしまっていた。
『クソ兄貴……』
『アルト、お前はわかってるよな?どうしたら、これが消えるかってことくらい』
ギルド知識の復習な、とモルゲンは言っていた。これは、煽っていないか。
『うっぜぇ!』
「!」
アルトはモルゲンを蹴り飛ばした。一方的に殴りつけている。モルゲンの痛ましい姿に、シャーロットは今すぐにでも助けにいきたかった。
「でも、私は……!」
自分の戦いも待っている。きっと、アルトはこのままでは済まさないのだから。
『ぐはっ……。正解だ、アルト……。そのまま、俺を殺せば、炎は消える』
『!』
アルトの動きが止まった。振り下ろそうとした足は、宙で止まったままだ。
『……お前は、無抵抗の人間を、そうするわけだな』
親父と一緒だな、とモルゲンは加えていた。アルトは足を下ろすと、踵を返した。
『……くそ、後回しだ。今だけは生かしてやる』
アルトは学園の方は後回しにし、今度は都の大型の方を狙いにいくのだろう。今はまだ、理性が残っているようだが、次、モルゲンと対峙した時には。――モルゲンかアルト、最期だろう。
『……俺も、かけつける。悪いな、今立ち上がれなくてな』
「先生。今は喋らない方が」
アルトに相当やられていた。モルゲンは一方敵にやられっぱなしだった。あの炎の魔力があれば、アルトも封じ込められたはずだ。
『はは、確かにな。でも……こうするしかなかった。あいつと本気でやり合ったら。俺は、アルトを殺しかねなかった』
「!」
シャーロットは驚愕した。モルゲンはいたって真剣にそう言っていたのだ。
『……お前なら、あいつを救ってやれる気がするんだ。――頼んだ、シャーロット』
「私は……」
シャーロットは自身に問う。アルトのことをどうしたいのかと。この事件の真犯人でもあり、狂人でもあった彼。
「今は、まだ。……でも、私は。未来は見たいです」
『十分だ、シャーロット――』
通信はそこで途切れた。原因はモルゲン側の機体の故障によるものだった。
「シャーリー。僕もね、未来が見たい!」
「……うん。それじゃ、もうひと頑張りだ!」
「うん!」
都まではもう少しだ。シャーロット達は走りだしていく――。




