独房でのアリバイ証明。
「わたくしはこれにて。約束の日までは誰一人とも迎えには参りません。ごきげんよう」
「はい。ありがとうございました」
シャーロットは独房の一室に閉じ込めらた。鍵もしっかりと施錠された。
水が落ちる音がする。生きる為の水道は通っていた。蛇口をひねれば水が出てくるようだ。あとは、トイレだ。窓は人が通れそうもない、外の景色がわかるくらいだ。空は曇っている。
「……」
静かだ。暗くて、一定のリズムで水音がするだけ。
静かだ。水音だけ。何も。誰もいない世界だ。
「……」
シャーロットは腕時計を見る。時間はさほど経っていなかった。携帯していた鞄は取られなかった。手慰みにとカイゼリンが見逃してくれたのかもしれない。
変哲もない仕事道具や調合した薬だ。新鮮味もなく見飽きたものでもある。でも、することがないので、シャーロットはそれらを床に広げて眺めていた。そして片付けた。思ったより時間の消費にならなかったからだ。
あとは、モルゲンがくれた通信機器だ。彼は何かあったら連絡をしてくれとは言っていた。
「私は、安全なんだ。あの人に比べたら」
これから大変なのは、むしろモルゲンだった。彼は、容疑者確定ともいえる行動をとることになるのだから。
曇り空を通して夜を迎えたのがわかる。シャーロットはろくに眠れないまま、一日を終えた。
翌朝。この日もまた、曇っていた。シャーロットは眠れはしたが、ごつごつの床で疲れはとれていなかった。
「……大丈夫かな」
手筈通りなら、今頃ビラが都中にまかれているはずである。内容は。――――女神像の破壊予告。愉快犯だととりあわないのがほとんどだろう。まさか、象徴である女神像が破壊されるなんて。シャーリーだってかつては想像もつかない。
ただ、モルゲンを信じて待つしかない。シャーロットは祈り続けていた。
夜となった。ここが最も危険といって良いかもしれない。実際にモルゲン達が。
――都の女神像の破壊工作をすることになるのだから。
といっても、あくまで脅しである。女神像破壊をしかけるも、ぎりぎり位置はずらす。像の近くには大穴を開けはするようだ。――次は本気だぞと。
もう、関与している。大罪に足を突っ込んだ状態だ。それが、モルゲンの覚悟だった。事の信ぴょう性を増す為に、彼はその手段をとった。
「先生、みなさん、どうか無事で……」
シャーロットはひたすら祈り続けた。
「リッカ、今頃大丈夫かな……」
いつもは近くにいるモフモフがいない。彼は心配になる様子も見せていた。リッカも今回こそは巻き添えにならなようにと、シャーロットは願うばかりだった。
次の日を迎えた。シャーロットはろくに眠れないながらも、生きていられることに感謝した。モルゲン達はどうなったのかもわからない。シャーロットはただ、待つしかない。
本日。計画通りにいけば、小規模ではあるものの予告通りであった。金糸雀隊も出ることになるだろう。都ならばもっと人員も割けるはずであり、学園にも警備しに来てくれるはずだと。
この日の夜から深夜にかけて。――女神像を破壊した者が現れるはずだ。
女神像さえ破壊されなければ、容疑も何もない。ただ、何が何でもシャーロット達を犯人にしたがる傾向があった。どんなこじつけで容疑者にされるかわかったものでもなかった。現に、モルゲンも犯罪しているのだ。
「うまくいきますように……」
もう空腹過ぎて、お腹もすかなくなってきた。シャーロットはただ、祈りを捧げ続けていた。




