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シャーロットが生きる世界。

 シャーロットは目を覚ます。いつものように朝かと思いきや、部屋は暗いままだ。枕元の時計を確認すると、深夜を回ったところだった。

 シャーロットは寝つけないので、水を飲みに行きたかった。起き上がるとギシギシと音はない。『あの時』のベッドだ。シャーロットは身震いした。――アルトと愛した日々を思い出されてしまう。

 自分の部屋は影響を受けたままだった。あのアルトの影響下だった。

「アルトが来たり……」

 ここでアルトが来るかもしれないと構えるも、それはなさそうだった。

「……ん?」

 ベッドの上。足元ですやすや寝ているのはモフモフだ。リッカが、彼女の部屋で寝ていた。熟睡している。

「君、来たんだ……」

 リッカの姿を見て、シャーロットの心は軽くなった。

 今回は異例の始まりだ。シャーロットは息を呑む。繰り返し続けたことで変化をすることも理解している。今回はアルトとの件が影響でもしているのだろうか。

「念の為」

 シャーロットは机の引き出しを開けた。この時点では手に入らないはずのものがあった。――学園の推薦状だ。


「……?」

 階段を下りて、カレンダーを確認すると。開始日は同じだった。シャーロットがただ、夜中に目が覚めたくらいだった。

「アルトは、今頃は……」

 深夜のクエストに勤しんでいるだろう。彼が今訪れることもないだろう。来るとしても早朝だ。

「眠れないし。……うわ」

 シャーロットは外に出ると、当然猛吹雪だった。無謀だ。それでもシャーロットは挑む。薪割りをだ。

 薪割りセットで薪を割っていった。彼女は少しは上達した気がした。気だけだったかもしれない。

 家に戻り、薪を火にくべて。シャーロットは暖炉の前に座った。ただ、揺らめく炎を眺めていた。

「……シャーリー? どこー?」

 リッカは目をしょぼしょぼさせながら、モフモフと階段を下りてきた。見つけた、とシャーロットに飛び込んできた。彼女もキャッチする。

「リッカ、ぎゅーだ!」

「わーい!」

 念願の抱っこも出来たのでシャーロットはご満悦だった。リッカも嬉しそうにしている。

「あ、ダンロだ。またつけてくれたんだー」

 リッカはシャーロットの腕の中から下りると、尻尾を振りながら暖炉を見に行った。匂いもかいでいる。

「あまり近づかないでね。危ないよ」

「はーい」

 匂い嗅ぎの確認も終えたので、リッカは戻ってきた。シャーロットの隣に座った。シャーロットはリッカを撫でた。ふわふわの手触り。撫でる手から伝わるのはぬくもり。リッカは身を委ねていた。

 火がくべられた暖炉の炎が揺らぐ。外は大荒れの猛吹雪。でも、ここはとても静かで。なんだか別世界のようだ。

 リッカが欠伸をしていた。体も伸ばして、シャーロットの足元でうずくまる。もう寝る体勢に入っていた。聞こえてきたのは寝息だ。フゴっとなった。それはシャーロットにも聞かれていた。

『僕は君の味方だっ!』

 思い返すのは、リッカの言葉だ。シャーロットも同じ気持ちだ。彼女だって、リッカの味方である。

「……」

 こうして静寂が訪れると、シャーロットは思いに耽った。

 未来が怖い。未来を迎えられるのか。自分達に未来は訪れてくれるのかと、シャーロットは考えてしまう。。

 シャーロットは怖い。いつだって死ぬのが怖いかった。

 だけど、怖がっていても、避けられない。逃げようとも。いつだってそうだ。

――死はシャーロットを迎えにやってくる。

「ぐっすりだね」

 シャーロットの味方でいてくれる、大切な存在。それでも、まだリッカに教えていないことがあった。――冬花の、自分の最初の死。

 このような時でも、シャーロットは思い浮かべてしまう。彼女は今も、あの頃に囚われているままだ。――あの日も雪が降っていたなと、記憶を蘇らせていた。


 皇冬花。そして、片桐郁也。この二人は悲恋で終わった。いや、恋愛関係すらなかったのだと。そう思い返したシャーロットは自嘲気味に笑った。

「――っと」

 視線を感じる。リッカは寝てたと思いきや、起きていたようだ。シャーロットの様子が気になったようで、心配そうに見ていた。

 シャーロットはリッカを持ち上げ、抱っこした。たまらない感触だ。リッカはよじろいだかと思うと、落ち着いていた。シャーロットの腕の中にすっぽり収まるよう、体勢を整えていたようだ。

「君はあったかいね」

 シャーロットが鼻を撫でると、今度はフガッと、リッカは鳴らした。

「……」

 シャーロットは怖い。最初の死をまともに覚えてないのもある。曖昧だからショックは少ない方だけど、感触だけは残っている。その時の思いもそうだ。

「片桐先生」

 冬花と一緒に絶命した人。周りにはどうみえていたのか。彼女は思い出せないなりに、推察してみた。

 生徒の自殺を止めようとして巻き込まれたのか。邪魔になったので生徒を殺したのか。それとも、生徒の方が、憎しみのあまり殺したのか。――心中とも思われていたかもしれない。

「……やっぱり、思い出せない」

 今の彼女は、――『皇冬花』ではない。あの鬱屈としていたけど、平和だった日々とはいえないけれど。

 シャーロットはここで生きていく。

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