彼に愛される日々。―アルトメリバルート突入中⑤
シャーロットは懐かしい夢を見た。鳥かごに囚われる夢だ。アルトの恋人になってからは、見なくなっていた。
「……恋人?」
いつから?いつからアルトとそのような関係になったのか。シャーロットは頭を抱える。考えても考えてもわからない。いや。――思い出せない。その方が的確だった。
「ううん」
シャーロットは考えるのを止めた。自分はアルトに愛されている。それだけでいいと納得していた。
「鳥籠か。――囚われているのかな」
もし自分が囚われているというのなら。シャーロットは包囲している鳥籠を見渡した。柵は人の血管のような色をしていた。脈打っていて、生きているようだ。
巨大な赤黒い錠前も主張していた。鍵穴が唇の形をしており、舌ものぞかせる。今か今かと他の錠前達を飲み込もうとしていた。
「……アルトみたい」
自分を愛し、自分も愛している彼を彷彿させた。あんなグロテスクなものと重ねるなんてと、シャーロットは苦笑いした。そう、気色悪い見た目だ。それでもシャーロットにとっては、心惹かれるものだった。
「アルトに囚われるなら、いいかな」
血のような鳥籠に囚われた少女は、酔いしれていた。
「……?」
鳴き声がした。くーんと悲しそうな鳴き声だ。暗闇の中から現れたのは、薄汚れた小型犬だ。シャーロットの前に現れると、お座りをした。
「君は――」
シャーロットは犬の名前を呼ぼうとするも、思い出せない。犬の記憶すらない。
「シャーリー」
それなのに。犬が喋ったのに、シャーロットは驚くことはなかった。自然とさえ思えていた。
「……シャーリーは、幸せ?」
「え……」
「これが、シャーリーが幸せなこと? 望んだこと?」
「それは……」
犬は責めているわけではない。そう、犬は。
「私は、しあわせ。うん、しあわせだよ」
「そっか……シャーリーが幸せならいいや」
責めなどしなかった。犬は口元を緩めて笑った。ただ、シャーロットの幸せを純粋に願っているかのようだった。犬は後ろ姿を見せて、歩いていく。
「待って!」
シャーロットは何故だかわからない。それでも、去る犬を呼び止める。
「……」
何を言うこともなく、犬は暗闇に溶けていった。
「!」
シャーロットは目が覚めた。息が荒く、冷や汗も止まらない。
「……シャーロット。恐い夢でもみた?途中まで幸せそうだったのに、なんかうなされてたから」
「起こしてごめんね」
隣りで寝ていたアルトを起こしてしまったのあろうか。シャーロットは謝った。
「ううん、全然。ほら、おいで」
アルトは腕枕をやめると、シャーロットを包み込んだ。シャーロットも安心した。
「……」
夢の内容はもう覚えてはいない。それでも、シャーロットの胸の痛みは消えてなかった。
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モフモフ・・・。リッカたん・・・。




