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ループによって、積もり積もるもの。

「どうして……」

 また、だった。容疑者とされたシャーロットを殺したのは、またしても金糸雀隊だった。

 今回もまた女神像は壊されてしまった。警備がついていたにも関わらずだった。

 賊は人間の動きをしていなかった。どことなく現れ、一瞬で壊していったという。そのまま立ち去ると、都の方も破壊していったという。

 今回もだ。金糸雀隊を殲滅しようとしたアルトも。シャーロットを庇おうとしたモルゲンも。

 最期に聞こえてきたのは、リッカの遠吠えだ。

 鐘が鳴る。今回も失敗に終わった。


 それからも日々は繰り返される。

 アリバイが、というのなら。シャーロットは女子寮のフロア。門の近く。十字路にさしかかるところ。いずれも人通りがあるところだ。失敗の度、場所を変えていくも。隙をついて抜け出したとされ、失敗に終わった。

 手段は選んでいられなくなってきた。モルゲンと一緒にいたこともあった。不純な意味はない。一緒に一晩警備についていたのだ。シャーロットは完徹だろうとものともしない。これで疑いが晴れるのならと思っていた。

 そうなると、モルゲンとの共犯扱いとされてしまった。これも失敗に終わってしまった。

 アルトを張ったこともあった。これはモルゲンの提案によるものだ。一回目のループの時にも彼は自分がやったと言っていた。が、それはシャーロットを庇っているとみなされた。二回目のループの時も、結果論だがアルトが破壊したことになった。

 モルゲンは張り込むも、気を失う。意識を取り戻した時には、全てが終わっていた。兵達に協力を仰いでも、結果は同じだった。


「アルトと一晩、一緒にいれば。何か変わりますか」

 面談室で話していた時のことだ。変わらぬ現状に、シャーロットは疲弊していた。虚ろな目で彼女は口にしていた。

「馬鹿げている。それは許さないぞ……いや、認めないだな。却下だ」

「モルゲン先生……?」

「頼む。早まらないでくれよ……」

 ろくに解決策もないまま、今回も繰り返しの日々に挑むが。――結末は同じだった。

 

 試行錯誤の中、日々は繰り返される。どう試みようと。何を試そうと。

――春の女神像は壊されてしまっていた。


 繰り返しの日々を送る中、異変が起こりつつあった。


 すっかり起点となった面談室にて、モルゲンが顔を青くしながらやってきた。

「……まずいな。通用しなくなってきている」

「先生、それって」

「ああ、まともに取り合わなくなってきた」

 それはループの中で薄々感じていたことだ。記憶を引き継いでいるのはシャーロット達くらいなはずなのに。彼らが覚えているはずがないのに。

 金糸雀隊も警備兵達も女神像の警護に回らなくなってきたのだ。予告状もイタズラだと思われてきているようだ。

「なあ、リッカ。他の連中は記憶がないんだよな。おかしくないか? いきなりイタズラ扱いだぞ?」

「……僕もわからない」

 シャーロットの膝の上で、リッカは落ち込んだ。答えられない自分も責めているようだ。

「そうか。それじゃ、あれか。記憶がないなりに、どっかで覚えてたりするのか」

 そういうこともあるよな、とモルゲンは一つの考えに辿り着いていた。

「覚えているもの、ですか」

「ああ、そうだ。本人たちは覚えてないつもりでも、蓄積されてたりするんじゃないか」

 モルゲンの発言に、リッカは顔を上げた。

「――雪みたいだね。積もって、積もりつづけていく。でも、雪みたく溶けない。ずっと残ってるの」

「……なるほどな。でも、ずっとってことはないだろ」

「うん……」

 リッカはちらりとシャーロットを見た。シャーロットは察する。リッカが例えたのは、記憶に関するものだけでないとしたら。

 鳥籠の夢。扉にかけられた錠前達。変色していた毒々しいソレ。ソレは大きくなっていってる。ループを繰り返せば繰り返すほどだ。

「あの。繰り返せば繰り返すほど。不利になるんじゃ」

「シャーロット。まだそうと決まったわけじゃない」

「でも……!」

 シャーロットは大きな声を出した。リッカがびくっとなった。

「シャーロット」

「……すみません」

 頭に血が上っていたようだ。シャーロットは一呼吸した。

「……でも、先生。兵の人達が当てにならないなら。他にも協力を呼び掛けてみませんか?」

「うん、まあ、そうだな。爆破予告は厳しいだろうし、生徒指導だの。巡回強化だの。女神像鑑賞会だの。理由はいくらでもあるか。……ツテもいるんだがな。ガラがなぁ」

「ありがとうございます。私も、私も頑張りますから」

 人に慣れてない、人付き合いが苦手など言ってられない。シャーロットは意気込んだ。

「……ああ、頼むな」

 

 二人は各方面に頼み込むも、反応はまちまちだった。それでも巡回はしてくれたようだが、素人ということもある。――女神像は破壊されるままだ。

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